第11話 リアルJK 赤坂ひなた


 俺はわざわざ、文句だけ言いに一ツ橋高校へと出向いた。

 電車代はもち自腹、返してくれますかねぇ。


 今日は平日なので全日制コースの三ツ橋高校は授業中だ。

 俺が私服なもんで、校舎を歩いていると制服姿のリア充どもが「なんだ、コイツ?」みたいな一瞥しやがる。

 一ツ橋高校の生徒だ! という顔で歩く。

 廊下を何食わぬ顔で歩いていると明らかに校則違反のミニ丈JK。三ツ橋生徒とすれ違う。

 いい生足、痩せすぎず筋肉質なところが健康的で素晴らしい。


「ちょっと、そこのきみ!」


 振り返るとそこにはボーイッシュなショートカットの女子がいた。

 いかにも部活やってますってかんじの活発そうな子だな。

 日に焼けていて、スクール水着とか着せたらエロそう。


「え、俺?」

「そうよ、きみよ!」

 きみとかいってけどさ……お前年下だろ? 敬語使え。


「なんか用か?」

 俺は「そのケンカ買ってやる」と彼女と真っ向から向き合う。

 ちょっと照れちゃう。褐色で目も大きいし、筋肉質なせいか胸もあまりない。

 まあまあ好みかも~ 貧乳スク水、大好物!


「あのね、言いたいことはたっぷりあるわ! あなた、なんで私服で登校しているの?」

 そう来たか。

「俺は三ツ橋の生徒ではない。通信制の一ツ橋の生徒だ」

 すると彼女は顔を真っ赤にして、うろたえる。

「ウ、ウソよ! そう言ってたまに私服で来る生徒とかいるのよ! あなたは風紀を乱しているわ! それに不法侵入とも限らないわ」

 いや、お前のミニ丈スカートの方がよっぽど男子の風紀を乱しているがな。


「あのな、俺は暇じゃないんだ……」

 そう言うと、彼女に背を向けた。

「待ちなさい! 証拠を見せなさい!」

 は? 俺は高校生ですけど、男ですけど、股間でも見たいのか?

「なんだ、俺を小学生と疑っているのか? そんなに俺の股間を確認したいのか?」

 JKは耳まで真っ赤になる。

「バ、バカ! 生徒手帳よ!」

「なんだ、そっちか……」

「普通そうでしょ!」

 俺はからっていたリュックから生徒手帳を出す。


 まあなんだ、この生徒手帳とやらに俺は長年苦しめられていたのだが、1つだけ有効利用できるぞ。

 映画館だ。今まで大人料金だったからな。学生として割引されるのが最高だ。


「ほれ」

「ん~」

 彼女はじっと俺の生徒手帳を見る。

 そんなに人の証明写真見つめないで、惚れちゃいそう。

「あ!」

 思い出したかのように、彼女は姿勢を正す。まるで軍隊のようだな。

「あ、あの! 年上の方とは思いませんでした! 失礼しました!」

 そう言って気まずそうに、彼女はその場から立ち去ろうとしたが、そうはいかん。

 フェアじゃない。


「待てよ……お前、俺にだけ個人情報を晒させる気か」

「な、なんのことでしょう……」

 その振り返り方は錆びたロボットだな。油をさしてやるから服を脱げ!

 色々と確認してやる。


「お前も見せろ、生徒手帳。俺に“不法侵入”とかいう疑惑を立てたんだ。お前が不法侵入者だったらどうする?」

「はぁ! 私は見ての通り、正真正銘のリアルJKで、三ツ橋高校の生徒ですよ」

「わからんだろ、ただの通りすがりのJKのコスプレをしたおばさんかもしらん」

「そんなやつどこにいるんですか!」

「俺の知り合いでいるんだよ。アラサーのくせして、子供服を平気で着用しているバカ女が」

 バカ女とは度々、劇中に現る『ロリババア』の担当編集のことだ。

「ええ……」



「まあとにかく見せろ」

「知ってどうするんですか! ま、まさか私のことを狙って……」

 そうやって、胸を隠すぐらいならミニ丈になぞすんな! 男は勘違いしやすい生き物だということ再確認しろ。

 自意識過剰な子だ。こういう子、ダメネェ~ ワタシ、キライネ~


「それは違う。不平等だと言いたいのだ。俺だけ見せて、お前が見せないというのがだ」

「は?」

「俺は物事を白黒ハッキリさせないと気が済まない性分なのでな」

「白黒って……ま、まさか! 私の……見たんですか!?」

 そう言って、ミニのくせしてスカートの裾を少し下ろす。

 白黒のパンツってなんだろ? シマパン?


「お前の脳内はお花畑か? 勘違いだ。立場が平等であるべきだろう。俺とお前はコースさえ違えど、同じ五ツ橋いつつばし学園の生徒だ。そこはちゃんとしっかりさせろ」

「わ、わかりました……」

 そう言うと、JKはブレザーの胸ポケットから生徒手帳を取り出した。

「ふむ……」

 証明写真の頃はまだロングヘアーか。今のショートカットの方が俺好みだな。

「な、なんですか? もう良くないですか? 長くないですか?」

「まだ見終わってない」

 名前は1年A組、赤坂あかさか ひなた……スリーサイズは書いてないよな……。


「赤坂 ひなたか、認識した。今度からは気をつけろよ」

 俺がそう名前を呼ぶと、赤坂はなぜかビクッとした。

「は、はい……」

「お前の性格も中々におもしろいな。いいセンスだ」

 一度でいいから言ってみたかった。

「いい……センス?」

 お前も言いたかったのか。


「若いのに大した根性だと褒めている。お前も曲がったことが大嫌いなタイプだろ?」

 赤坂は目を丸くして俺を見つめている。

「なんで……わかったんです?」

「この天才、新宮 琢人がそうだからな……」

「そう、ですか……」

 なぜか彼女は言葉を失っている。

 しおらしいところもあるのね……あ、女の子だから聖水か!?

 これは撤収してやらねば! 俺ってばジェントルマン♪


「赤坂、お前は女だ。俺のように衝突ばかりしていたら、いつか身を危険に晒すぞ? もうこういうことはやめとけ」

「な、なんで新宮先輩にそんなこと言われなきゃ……」

 年上って分かったからって、先輩呼ばわりすな! 仮にも身分的には同級生だろが!

「忠告はしたからな、じゃあな!」

 そう言って、俺は振り返らずに手を振った。

 やべっ、今の俺って超カッコよくない? 惚れさせてしまったかも?

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