第26話 ライドンキング  馬場康誌 講談社

 たまには単行本化前の、活きのいい作品を紹介してみる。(当時。現在は四巻まで発売中)

 転スラ目当てにシリウスを読んでいたら見つけた、どこかで見かけた絵。

 空手小公子の人だと気付いたのは、後で調べてからである。


 主人公は40代から50前ぐらいのロシア系おっさん。

 簡単に言うとこの超肉体派大統領が、異世界に転移することから話は始まる。

 このおっさん、独裁者ではあるが有能なため、国民の支持は高かったらしい。

 ありとあらゆる格闘技に精通し、その戦闘力は戦車にも匹敵するのではないかという描写がある。

 作品中で見る限り、欠点と言えるのはただ一つ。いや、二つか。

 悪魔に仕える神官のような強烈な面構えに、飽くなき騎乗欲である。


 騎乗というのは、乗り物に乗る欲望のこと。

 それは馬やゴリラなどの生物もあれば、車や戦闘機などの人工物もある。

 ちなみに普段使いの騎乗物は虎である。


 こんなおっさんが異世界に転移したからには、やることは一つ。

 ドラゴンやワイバーンなどの魔物に騎乗することである。

 偶然にも異世界転移時に出会った冒険者の少女二人と共に、おっさんは世界へと旅立った。


 いや、そんなアホな、と言わずに読んでほしい。

 一発ネタではなく、間違いなく最新話までは面白い。

 チョコボ風味の動物を、鞍もなく乗りこなすその威厳と勇姿。

 オークをパロ・スペシャルで乗った体勢となるその格闘技術。

 魔法の才能もかなりありそうなのにもかかわらず、彼が武器とするのは己の肉体と格闘技術。

 騎士が倍の人数は必要だというオークの集団相手にも、その白兵戦技能は冴え渡る。


 いや、そんなアホな、と笑いながら、この超真面目に描かれる異世界転移物を読んで欲しい。

 流麗なる格闘技術と肉体美、そして魔物に対する好奇心。

 けっこう可愛い女の子と一緒に旅をするのだが、このおっさんの欲望は本当に騎乗欲に向けられている。

 可愛い女の子に乗っかるよりも、猛々しい雄のケンタウロスに乗ることを優先するのだ。


 転スラから流れてきたと言っているように、当然ながら私はなろうの転移・転生系の作品をたくさん読んでいる。ここに書き込んでいることからそれは分かってもらえると思う。

 しかしこの方向にここまでぶっ飛んだ作品は、おそらくないであろう。

 なろう系のテンプレ転移に飽きた貴方に送る、爆笑必至の実験的実戦的異世界物語。

 もうどの方向に話が転がっても、このおっさんが主人公という段階で、面白くなるのは確実である。


 何気に女の子も可愛いんだけど、意地汚かったりボーション中毒だったり、ヒロイン属性に極めて乏しい。

 こんな作品を楽しめる人間と、私は友達になりたいものである。


 追記:サキちゃんが可愛い

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