第16話 その十六 スプリンター  小山ゆう 小学館

 漫画家の大半は一発屋であるが、中には長年ヒット作を飛ばし続ける御大もいる。ヒット作とまでは言わないが、長年活動している多作の作家もいるのである。

 古くは手塚治、現代であれば浦澤直樹、細野不二彦などがぱっと浮かぶが、少年誌でヒット作を出し続ける作者はほとんどいないし、逆に少女マンガでは佳作を連発する作家が多い傾向にある。

 ただ少女マンガも長編化の傾向が強く、5~10巻程度の間延びしない傑作と言うのは減っているかもしれないと感じる。

 ちはやふる、わいは好きやけど、40巻は続きすぎちゃう?


 個人的には少年漫画から青年漫画に行く人が一番長生きのような気もする。

 さて、今回取り上げる漫画家は小山ゆうである。

 あずみの人か、と最近の人なら思うであろう。映画化もした長編である。

 しかしこの人も元は少年誌で描いていて、俺は直角やがんばれ元気などでアニメ化もしているのである。


 基本的に主人公は天才のマンガを描く人であるが、その中でも少し異色なのがこのスプリンターであるのだ。

 題材は、100メートル走。いまだに日本人が10秒の壁を突破していない競技である。

 天才であっても人種の壁というか、黒人が圧倒的な優位を誇る競技であり、そんな中で主人公を日本人の少年にしたというところで、普通なら無理がある。

 しかし小山ゆうはその問題を、脳内物質の分泌による肉体の限界突破という手法で乗り越える。


 あ~るを読んだ人なら分かるだろうが、100メートルの間に主人公は光に包まれ、神の領域に触れるのである。

「おお、素晴らしい。神よ」という台詞は見事にパクられている。

 根性や努力ではどうにもならない筋肉の質の差を、脳がかけているリミッターを解除するという手段で突破するのだ。


 この手段は主人公以外の競技者も何人か用いるのだが、あまりの負荷によって再起不能になる者まで出現する。

 人類の限界の突破と、その手法は当時としてはかなり新しいものであったろう。

 人間ドラマも大きな波があり、主題にアクセントをきかしてくれる。

 最後に主人公がどうなるのか、それは見て確認するしかない。


 もっとも今では、amazonぐらいでしか手に入らないだろうけどね!

 とか言ってたら電子化したよ。

 個人的には「愛がゆく」を最初に紹介したかったんだけど、これは子供時代に読んだきりの作品だったので。電子でそのうち手に入れようと思ってるんだけど、新刊の方を優先すると、どうしても定価になる電子は昔の作品でも手が伸ばしにくい。

「がんばれ元気」「俺は直角」原作あるけど「お~い竜馬」「あずみ」とメディア化作品多い、充分にレジェンドの作家ですな。

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