第2話 頭が良くなりモテるカクテル【ゴールデンアップル】

「頭が良い人になりたいんですよね」

 男子高校生が神酒に相談する。


「どうしてですか?」

「女性にモテるし、将来有望ならばお金に困ることもないでしょ」

「たしかにそうですね。では、頭が良くなるカクテルをお作りしましょうか?」

「まさか、そんなカクテルあるわけないですよね」

「ここは、ちょっと特別なお店なので本当に作ることは可能です」

「それならば、頭が良くなるカクテルおねがいします」


「かしこまりました。ゴールデンアップルをお作りしますよ。ベースは金色です。ゴールドはお金の金であり、金メダルの金は1番を意味します。つまり、1番になることが可能なカクテルですよ」


 出されたカクテルはゴールドに光るまさに黄金色のカクテルだった。そして、ふちにはりんごが添えられていた。まるで黄金にとりつかれたかのようなカクテルは見た目も珍しく、美しい色合いだった。


「いただきます」


 彼に変化が訪れたのは翌日からだった。嘘のように問題がすらすら解けて、なぜか高得点を取ってしまうのだった。要領が悪いはずだったのが嘘のような出来事だった。


 学校でも愛想がある方でもコミュニケーション力があるほうでもない彼が、人に信頼され、仕事を任されていくという不思議な現象が起きていた。そして、できる男は女子にモテる。実際、以前から気になっていたクラスメイトに告白される。


 ♢♢♢


 彼が来店してから3カ月後にふと話題が出る。

「今頃、ゴールデンアップルの彼は頭が良くなり、恋もうまくいっているのでしょうね」

 

「でも、ゴールデンアップルという名前から、神話を連想すると彼はそんなにうまくいかないんじゃないですか?」

 二葉は神酒のカクテルのことだから何かありそうだと勘繰る。


「神話では色々な罠が潜んでいたりしますが、ここは人間の社会ですよ。人間らしい罠が潜んでいるかもしれません。例えば、嫉妬を持つものが彼を陥れようとするかもしれません。一生安泰だとかどこまで出世できるかは本人次第で、カクテルの力だけでは保証できませんがね」


「本当に不思議なノンアルコールカクテルを創作されますよね。勉強のために世界でたった一人の創作バーテン資格を持つあなたに弟子入りしたわけですけどね」

 

「カクテル一杯の力で人生を変えてしまう仕事は恐ろしくもありますが、幸せにするお手伝いをするつもりで創作しています。人間は愚かです。出世や称賛される人がいる一方で嫉妬心に火が付くこともあります。その火に気づかないと思わぬ油断で足元をすくわれたりするんですよね」


 どこまでも無責任で薄情にも見えるが、実は幸せにする手伝いをしているという神酒の心意気はなかなかのものだと二葉は感心した。

 

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