第240話報告と報告

313日目


今日もクルセルの天気は快晴のようで朝日が首都を明るくしていきます。


う~ん、異世界に来てから早起きになって来たな。

寝る時間が早いからか、レベルが高くなって疲れにくいからかな…。


そんな事を思いつつ、朝食を済ませた後、王城の地下に閉じ込められていた人達の件で報告を受けた後、大まかに指示をだしておきます。


う~ん、やっぱりと言うべきか、10万人近く居た人は予想通りランダムで王城地下の結晶に閉じ込められていた感じだったけど、まさにその通りで家族が居ない子供だけだったり、反対に家族の中で生き残ったのが自分だけだったりと、家族全員が揃っているのはほんの一握りでほとんどは自分一人、または家族で2~3人だけが生き残ったと言った感じで孤児院的な物を早急に整備しないといけないとの事、とりあえず建物はいくらでもあるから人を雇って孤児院を運営させるか…。

まあ衣食住に事欠かないからあとは教育をしっかりすれば良いし。

うん、そう言う指示を出しておこう。


そしてその後、偵察に出ているゴブリンに連絡を取ろうと思いましたが、昨日と同様に足元の方から振動のような感じがし、直後突き上げるような揺れが襲います。


「また地震? 今度は震度2か3ぐらいかな…。」


昨日よりは揺れは少なかったけど、それにしても何故地震なんて起きるんだ?

この世界に来て地震って一回も無かったのに急に地震が起きるって事は絶対ネレース絡みだよな…。

これは融合が始まる前触れ…、いや下準備って感じか?

まあ何にせよ迷惑なもんだな。

この世界の住人は地震に慣れてないから多少の地震でも騒ぎ出すから面倒なのに、頻発でもされようもんなら手が付けられなくなるし、大きい揺れだと建物にも被害が出るし。

絶対耐震設計の家屋なんて無いだろうからこの王城も大きい揺れがあったらどうなる事やら…。


そんな事を思いながらも通信魔道具で偵察に手出ているゴブリンを呼び出し状況を確認すると、現状では特に変わった事は無く、昨日壊走する兵をオダ帝国軍が日が沈む時間帯まで追撃していたそうでノンザイル王国の兵は甚大な被害が出ているようです。


日が沈むとオダ帝国軍は追撃を止めて一旦集結した後、野営をし、ノンザイル王国軍は散り散りになってもはや軍としての形を保っていない状態で首都に逃げ込む兵も少ないだろうとの事でした。


決戦で敵を壊滅させて首都防衛の兵を削った後でゆっくり首都攻略、まあ確かに理想的ではあるけど実際に実行するのは難しいんだけど、ほぼ成し遂げてるのはやっぱり鉄砲に依るところが大きいかな。

ゴブリンは手に入れる事出来なかったみたいだけど、異世界人からしたら鉄砲は未知の武器だし、そもそもこの世界の人達は大きな戦争に慣れてないからな…。


魔物が多いから大きな戦争が起きない、ゆえに戦争に対する対策よりも魔物対策が優先されて戦術が衰退する。

そんな所に、本などを読んで知識を持った日本人が加わり指揮を執ると相手は圧倒的に不利になる。

ノンザイル王国にも日本人は居るはずだけど国家の中枢に入り込んだり、相談役のような立場で国に知識を吸収させたりはできなかったか。

敗因としては武器の違いが大きいけどノンザイル王国軍に日本人が居て指揮や助言をする人間が居なかったからだろうな。


これでほぼオダ帝国がノンザイル王国を滅ぼして領土拡張を成功させた感じだけど、とりあえず首都攻略がどうなるか偵察は継続させよう。

それにしても報告めんどくさいな…。

とは言え、小まめに報告をと言われてるから報告するか。


てか自分は本来報告する義務無いんだけど、まあこっちからクルセルの件で日本政府にやって貰う事沢山あるからとりあえず友好的に行こう。


そう思いながらも転移魔法のゲートを開きます。


「おはようございま~す。 誰かいますか~?」


そうゲート越しに声をかけると対策室の面々がこちらを向き、なにやらパソコンを操作していた鈴木さんが立ち上がりこちらに向かって来ます。


「武内さん、戦争の話ですよね? どんな状況なんですか?」


鈴木さんはもう諦めたかのような感じの顔をしていますが、うん、諦めてください。

自分にはどうこうできませんから。

そんな言葉を心の中で呟いて状況を報告します。


「まあ、そんな感じでオダ帝国軍が圧勝して戦闘は集結、その後追撃戦になってる感じです。 ノンザイル王国の首都がどの程度で陥落するか、地方をどの程度の期間で掌握できるかによりますが、恐らく組織的な反攻は無理でしょうね」

「そうですか、じゃあ相当数の人が亡くなったんですね、それも鉄砲のような物で…」


「ええ、一応現物を確保出来ないか試みさせたんですけどね、無理でした。 ただ話を聞く限り鉄砲かそれに準ずるものなのは間違いないですね」

「分かりました、その辺も上には報告しておきますが、武内さんは戦闘を観戦していなかったのですか?」


「ええ、クルセルの王城地下に10万人近くの人が結晶に閉じ込められていたのでその人達の解放と食料や生活用品の配布に忙殺されてましたから」

「10万人? 滅んだ王都だったのでは無いのですか?」


「う~ん、そうなんですけど恐らくネレースが大地に魔力を流し込む為の道具にされてた感じですね」

「では転移させられ結晶に閉じ込められていた日本人と同じ感じですね…。 これも地球との融合の為と考えた方が良いのでしょうが…」


「まあそうですね、恐らく地球との融合絡みでしょうね。 まあそんな訳で10万人の生活保障や職業斡旋、経済活動の再開などやること目白押しなので戦争の観戦どころじゃ無いんですよ」

「そうですか、まあ日本政府としても止められない戦争よりも10万人近い人の生活保障などの方が優先順位が高いのは分かるでしょうし」


「うん、そういう事、それで日本政府の見解としてクルセルを信託統治領とする事はどうなりました?」

「はい、それにつきましては出来ないとの回答です」


「出来ない? いや出来ないって理由は? ていうか日本人が管理する国なんだから可能じゃないの?」


出来ないと断言されたことに驚きつつも鈴木さんに詰め寄るような感じで出来ない理由を問い詰めますが、大きく息を吸い込み鈴木さんが信託統治領について話始めます。


ようは、国際連合の信託を受けた国が、国際連合総会および、信託統治理事会による監督により、一定の非独立地域を統治する制度であって、クルセルは非独立地域と言えるか怪しいうえ、国連の信託を受けた国が行う為、自国の利益を優先する為に日本が手を挙げても横やりが入るのが目に見えているとの事が理由だそうです。


「じゃあ自分が日本政府に協力する理由が無くなりますよね…。 何か代案とかはあるんですか?」

「それについては現在検討中ですので今後も日本政府には協力をお願いします。 信託統治の案は実行できませんが、外交の上で開発援助という形でインフラ整備、資源開発援助などは出来ますので、そちらで日本政府として協力をさせて頂く予定です」


「ふ~ん、まあそのお言葉を信じさせて頂きますが…」


若干不満はあるもののインフラ整備や資源開発援助をしてくれるなら問題ないんで一応了承しますが、委任統治領的な感じで日本人の移住もあれば人口も多少増えると思ったのに…。


そうそううまくはいかんもんだな…。

まあ港湾施設と空港は真っ先に作ってもらおう。


自分は転移魔法で簡単に移動できるけど資源輸送には船が一番だからな。


うん、岸壁でサビキ釣りしたら何が連れるだろう…。


あとがき--------------------------------------

2021年4月29日から新作の「戦国時代の初期にタイムスリップ? いえ、ここは異世界らしく天下統一の為に召喚されたみたいです」を投稿しています。

5月度は毎日更新しますのでお読み頂ければ幸いでございます。

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