第198話月山部長の決断
273日目
昨晩からゴブリン達用の武器や防具を増産してた為、昼近くまで寝てしまいましたが、食事を摂った後、二ホン砦に向かいます。
砦では既に出発準備を整えたゾルス達ゴブリン軍団が整列し、いつでも移動開始できる状態で待機していました。
「じゃあとりあえずキャールの付近にゲートを開くから、順次移動して、その後は簡易陣地を構築したら待機してて」
「かしこまりました、それでマサト様はいかがされるのですか?」
「そうだね、土田に現状確認もしに行きたいし、月山部長に報告もしたいから、夕方には一旦顔を出すよ」
「ではそれまでに簡易陣地を構築して置きます」
そう言ってゾルスは自分に頭を下げた後、ゴブリン達に指示を出すと、待機していたゴブリンが順次ゲートをくぐりキャールへ移動を開始します。
流石にゆっくりとした移動とは言え9千匹がゲートを通過し終えるのに大体1時間近くはかかったでしょうか。
横一列6匹づつに並び歩いての移動でしたが、移動にかかる時間が計れたのはある意味役に立つちそうです。
あらかじめ横6匹づつに並ばせておいて、走って移動をさせれば千匹程なら10分もかからず移動ができるでしょうから、奇襲に使えそうです。
移動が終わった所で、ハンゾウには、手下の諜報に特化したゴブリンを率いてソパニチア王国軍が集結してる地点に行き、アルチ達と連携して兵の参集状況に士気の高さ、可能なら指揮官の戦いに向けた意気込みなどを調べるように指示を出し、後はゾルス達に任せて土田の所に向かいます。
「土田、ゴブリン軍団9千はキャールの町の外に到着して陣地構築始めたぞ」
「ああ武内か、ホントお前のとこのゴブリンは優秀だよな…。 それに兵数も減るどころか毎回増えてるし」
「まあ勝手に増えてるだけだから、自分は関知していないんだが、確かに優秀だな、自分達で考えて行動もするし、忠誠心も厚いから何度も助けられてるよ」
「はぁ~、俺もビーストマスターとかの職業にしとけばよかったかな…」
「あれはビーストマスターのスキルじゃないから、そううまくはいかんぞ? 自分がゾルス達を従わせてるのは実際偶然と幸運の結果だし」
「そうか、俺には無理という事だな、まあ魔物を従えても、養う場所とか無いしな」
「気にすんな、土田には土田の良さがあるんだから…。 それで敵の動きとか何か情報はあったか?」
「いや、今の所は特に情報は入っていないな、現状はどうやって戦うかをシュミレートしていたところだ」
そう言って地図を指さしながら苦笑いをしています。
「とりあえず、バイルエ王国兵とドグレニム領兵の援軍が到着したら想定戦場へ移動しようか」
「敵が動き出す前に移動をするのか? 先手を打つのは良いかもしれんが下手に相手を刺激する事にならないか?」
「まあ刺激したとしてもソパニチア王国兵は参集をしてる最中だろ? なら全軍が集結完了するまで動かないだろ、まあ抜け駆けする奴は居るかもしれないけど、その辺は各個撃破するなり、多少戦果を挙げさせた気にさせて帰らせるなど、対処法はいくらでもあるし」
「そうだな、大軍で攻め込む準備してるのにわざわざ俺らが動いたからって兵が集結し終わる前に動き出すことも無いか」
「そういう事、だから自分達はその間に川辺に柵などを築いて防御陣形を整えつつ、釣り野伏せりの練習だな、失敗は敗北に直結するからしっかりと打ち合わせはしないといけないし」
「確かに、初めての作戦とは言え失敗は許されないからな、だが敵の偵察はどうするんだ? 間者とかの対策はどうするんだ?」
「その辺はサンダーウルフ達が居るから大丈夫だ、敵が持ち帰れる情報は川辺に柵を築いてそこで戦おうとしていると言う情報だけだ」
「その情報だけは隠さないんだな」
「隠さないな、むしろ敵には大軍で一気に渡河をすれば簡単に突破出来ると思ってもらわないと困るからな。 それと旗は量産出来てる?」
「ああ、今職人に増産を指示してるけど、そんなに多くの旗を何に使うんだ?」
「まあ川辺に布陣してる兵を多く見せる為の細工、川辺の兵士数が少なすぎると左右に伏せてる兵を見破られる可能性があるし」
「まあ、俺に戦術は分からんからお前の作戦を信じるさ」
そういって土田は作戦に関してはお手上げと言った感じで会議室のソファーに座りお茶を飲み始めました。
「じゃあ自分はまだやることあるからもう行くぞ、あと町の外に陣を作ってるゴブリン軍団を間違って攻撃するなよ」
そう言ってゲートでプレモーネに戻り月山部長の相談所に向かいます。
「武内君、本格的な戦争になるらしいが、回避は出来んか?」
「出来ませんね、向こうは大軍で一気に攻め込むつもり満々ですし、完全に激戦になると思います」
「そうか、それで勝算は?」
「まだ分かりませんが、とりあえず川辺に陣を敷いて渡河する敵に攻撃を仕掛けて、渡河された後は徐々に押されるふりをしながら後退して敵を引き込んだ後、左右から挟撃して殲滅予定です。 まあぶっつけ本番で釣り野伏せりを仕掛ける感じですね」
「釣り野伏せりか…。 確か島津家が得意だったと言われる戦術だな、だがそんなに都合よく相手が引っかかるのか?」
「その辺は分かりませんが、この世界では人間同士の大規模戦争ってここ数十年無かったみたいですから、それなりには有効かと…」
「う~ん、そうだな…。 戦争には反対だが、今回ばかりはそうも言ってられないからな、私も参加させてもらおうか」
「月山部長がですか? 参加って言っても部隊の指揮とか執るんですか?」
「いやいや、部隊の指揮は執らんが、高台とかから戦況を見て指示を出すぐらいは出来るだろ、これでも歴史好きで色んな戦国物の小説を読んでいるんだ、戦況の分析ぐらいは出来るだろ」
「まあ確かに、どうせ自分も土田も前線付近で戦うんで戦場全体を見ながら指示をくれる人が居ると助かりますけど、戦争に参加するって事は、場合によっては日本に戻った際に問題視される可能性もありますよ」
「その辺は今更だな、日本人を一人でも多く日本に帰す為には誰かが悪役にならんと行けないのだろ、武内君や土田君ばかりにそんな役目を押し付けてもおれんだろ」
「わかりました、ありがとうございます。 では一応、戦場予定地の地図に部隊配置を記したのを置いておきますんで目を通しておいてください。 明日バイルエ王国兵とドグレニム領兵をキャールの町に移動させて、明後日には戦場予定地に向かいますんで、その後に部長には移動してもらいますんで」
そう言って月山部長の参戦も決まった所でその後の打ち合わせなどをした後、自宅に戻ります。
さて、渡河途中の敵兵を少しでも削る方法を考えないとな…。
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