__不運__ (801文字)
私はつくづく運がついていない。
思い返してみれば、私の人生で運が良かった瞬間が一度でもあっただろうか?
ある日、私がぼーっとしながら会社から帰る途中、
よそ見をしてしまい、おばあさんとぶつかってしまった。
幸いな事に、私もおばあさんも怪我は無かったものの、私は仕事カバンを道路の水たまりに落としてしまったのである。
カバンは泥まみれになってしまった。
運がついていない。
おばあさんはお詫びとして、「一つだけ願いを叶えてあげる」と申し出てきた。
話を聞くに、そのおばあさんは魔法使いだというのだ。
私は「ヤバイおばあさんに絡まれてしまった。運がついていない。」と思い、適当に断ってその場を立ち去ろうとしたが、そのおばあさんはしつこく願いを聞いてきたので、
「では、僕を大金持ちにしてください。」と適当に答えた。
するとおばあさんは、何やら唱えて「あなたを大金持ちにしました。」と言って去ってしまった。
「あの不思議なおばあさんは一体なんだったんだろう」と思いながら家に着くと、
そこには驚きの光景が広がっていた。
リビングに見た事がない量の札束が並べられていたのである。
福沢諭吉100枚の札束が10×10コ。その塊が5セット並べられていたのである。
私はその光景に大興奮を覚えたが、ある事に気がついてしまった。
「これは、、、使えない。」
その札束は紛れもなく本物ではあったが、時代がそれを許さなかった。
現代の日本経済圏では、通貨はデジタルに完全移行しており、紙幣で取引しているのは辺ぴな田舎民かヤクザくらいであった。
おばあさんの若い頃は、これだけ大量の札束は大金持ちの象徴だったのだろう。
それにしても、おばあさんは通貨がデジタルに移行したことを知らなかったのだろうか?
もしかしたら、魔法を使える者は魔法でなんでも出来てしまうので、お金に無頓着なのかもしれない。
この紙の山をどうすればいいのか、私は頭を抱えた。
つくづく運がついていない。
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