ネットカフェの浦島太郎 (717文字)

____浦島太郎という漁師が年老いたおっかさんと二人で暮らしていた。

____ある日、浜辺で子ども達が一匹の子ガメをつつきまわしているのを見たので、助けて海へ逃がしてやった。

____数年後太郎が海で釣りをしていると、大きな亀がやって来て、昔助けてくれたお礼にと海の中の竜宮へと連れて行かれた。

____竜宮では美しい乙姫さまに歓迎され、魚たちの踊りや、素敵なご馳走でもてなされ、楽しい毎日を過ごした。

____しかし何日か経つと太郎は村に残してきたおっかさんのことが気になって、だんだん元気がなくなってきた。

____それを察した乙姫さまは「村に帰って、もし困ったことがあったら、この玉手箱を開けなさい。」と言って、太郎を送り出した。

____太郎が亀の背に乗って村に帰ると、、、



「火事だぁーーーーー!!!!」

けたたましいサイレンの音と共に怒号が飛び交い、私はに戻された。


私の名前は嶋 浦太郎(67歳・独身)。


時間を潰すため、ネットカフェで今話題のVR浦島太郎をプレイしていたのだが、どうやら店のビルで火事が起こっているらしい。

はちょうど玉手箱を開けるシーンなのであるが、VRゴーグルを取ると、辺り一面が煙で包まれていた。

確かにさっきから息苦しいと感じてはいたのだが、「水の中だから仕方がない」と何となく納得していた自分に腹が立つ。


火元は見えないが、煙の量はますますひどくなっている。

店の中は私しか残っていないようだ。

出口を目指して進むが、煙に視界が遮られ、自分がどこにいるかも分からない。


しばらく進むと、ようやくビルのベランダに出る事ができた。

しかし、ここはビルの6階。




____おじいさんになった浦太郎は鶴になり、飛んでいきましたとさ。

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