俺達の友情、やり直しです。
何者七日 様作
───失ってはじめて気づかされるもの、その葛藤
【友情と愛情の狭間で葛藤する主人公】
物語は、印象深い主人公の後悔の念から始まる。タイトルの通りと受け取れば、恐らくこんなに葛藤をすることはなかっただろう。その葛藤となるきっかけは、同じバンドのメンバーの一人を物理的に失うことであった。人は失ってはじめて、失ったものの大切さに気付かされるとは言うが、彼が正にそう。ただ、悲しいかな自分の想いに、気付かされてはいけない状況にあったのだ。
【徐々に明かされていく真実】
大切なバンドのメンバーの一人が失踪。死、という最悪の事態は免れたものの、再会を果たした彼は以前とは違ってしまっていた。原因すら知ることが出来ないまま、悶々としていく主人公。この物語は、一視点ということもあるためか、感情移入がしやすく、主人公と共に事件そのものが知りたいという好奇心と、真実の追求という欲求と戦うこととなる。
【葛藤の在り方にリアリティを感じる作品】
事件の全容については、主人公が知り得た情報しか提示されることはない。読み手は、主人公が得た情報からどんなものだったかを想像するしかない。裏を返せば、主人公ととシンクロすることが出来る。つまり、まるで自分が主人公になった気持ちで読み進めていくことが出来るのだ。
今まで自分よりも強い(精神的に等を含む)と思っていた相手が、弱っており、自分だけを特別扱いしてくれたら?守ってあげたいと思っても、不思議はない。好きになってはいけない相手ではなかったとしても、状況がそれを許さなかったら?立ちはだかるのがトラウマだったなら?
この作品は、主人公と共に考え、葛藤し、何が正しかったのか、どうすれば良かったのだろうかなど、色んなことを考えながら読むことの出来る作品である。時に真実から目を背けたくなることもあるが、主人公の人生を疑似体験している錯覚を起こし、続きが気になってしまう物語である。
是非お手に取られてみてはいかがでしょうか?おススメです。
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