穴の空いたコインを拾ってコンビニで使ってみたら

 なんて僕は目早いんだと、路地の端っこに落ちているコインを見て思った。

 そのコインは、れっきとしかお金で、穴が空いている。銀色だ。

 100円ほどではないが、それなりに価値はある。同じ種類のコインと一緒に使えば、駄菓子台にはなるかな。


 僕は周りに誰もいないのを確認し、ポケットから取り出した財布に穴の空いたコインをしまった。学校の帰り道に見つけたほんの小さな幸せである。


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 翌日、学校が休みだった僕は、コンビニでランチを買うことにした。

 インスタントラーメンひとつに、ミネラルウォーターである。


「205円になります」


 店員にそう言われて、僕は小銭入れから100円玉を二つ、トレーに出した。お釣りで小銭入れがパンパンになるのは嫌いだったから、僕は5円を出そうとする。5円玉はなかったけど、幸いにも狭い小銭入れの一箇所に1円玉が5枚固まっていた。


「これでいいですか?」


 僕は5枚の1円玉をまとめてトレーに添える。しかし店員は受け取ろうとしない。なぜかトレーを凝視している。彼は1円玉の一枚を手に取った。


「これ、穴空いてますよ?」

「えっ?」

「もしかして、1円玉壊しました?」

「えっ??」


 僕は何を聞かれているのかさっぱり分からなかった。店員は突然、僕の左腕をがっつりとつかみ、逃げられなくした。


「貨幣損傷等取締法違反、つまりコインを傷つけた疑いがあります。裏で話を聞きましょう」

「いや、僕がやったんじゃないですって。道端で拾った時点でなぜかあんな感じだったんですよ!? ていうか1円玉に穴が空いてたら犯罪なんですか!?」


「だから話は裏で聞きますから」

 店員は問答無用とばかりに僕をコンビニの裏口へ連れ込んでしまった。僕は混乱のあまり、言葉がまとまらないまま、ただただ戸惑いの声を上げるばかりだった。

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