第1話 うちゅうじんさんがいらっしゃいました!

 石をぶつけたくなるようないい家に、その家族は住んでいた。


 東京都朽木市にある黛家まゆずみけ、ムナクソ悪くなることうけあいなハイソサエティ一家である。


「ふえーっ、お星さまがキラキラしてるよー。みとぷーも見てー」


 オシャンティーな縁側で、ひとり息子の美王みおが、二けた万円するゴージャスな望遠鏡でもって、天体観測をしている。


 俺のような貧乏人には無理なたしなみだ。


(みおさまー)


 クソかわいいハムスターのみとぷーが、てってけてってけとご主人のほうへ近づいた。


 うん、かわいい。


「ほらほら、見て―」


(むむっ……)


 ハムスターの生物学的な眼球の構造でレンズ越しに星を目視できるかは俺にもわからんが、とにかくみとぷーはうなった。


(あのきらきらしたものが、おほしさまなのですか。きれいですー)


「おほしさまがいっぱいあって、おっこちてきそうだねー」


 うん、いっそ落っこちてきてくれ。


 そして爆発してくれ。


 リア充め。


「ふえー」


 あれれ……


「こっちにくるよー」


 こりゃまさかの勝ちゲーですか?


 メシウマっ!


「ふぇーっ!」


 ズドーン!


「おほしさまが、おっこちてきたよー」


(はわわ、みおさまはごぶじでしょうかー?)


 軒先が粉々だ。


 この様子だと修理費はだいぶ高くつく。


 工賃だけでもけっこういきそうだぞ、ぐへへ。


「ふえっ、何かいるよー」


(わわっ、いったいなんでしょうかー?)


 煙の中から登場したそれは……


「ひゃやっ!」


 赤ちゃんだった。


「ふえっ!? きみはいったい、だれなのー?」


「まひゅまひゅ!」


(こ、これはただごとではありませんが、かわいいあかちゃんさまですー)


 こんなふうに作者の気まぐれで開始され、なおかつええかげんに書いたこの小説が、長続きするわけなどない。


 またエタるに決まっているのだ。


 とにもかくにも、黛家に新たなメンバーが加わる青写真フラグはできあがったのである。

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