第28話 電気泥棒
「お〜ここだここだ 電気の匂いがプンプンするぜ」
「なっ何者だ!?」
「あん? なんだ姉ちゃん 強えのか? 強えなら相手してやんぞ」
突然ドアを蹴破って来たのは金髪で長身の男、おそらく190はある。
「お前だな 電気泥棒の正体は」
「なんだその呼び名はダッセーな! オレにはちゃんとした名前があるってのによぉ」
「それはお聞かせ願いたいものだね」
「オレの名前を聞くからには……オレと戦うって事でいいのかい?」
「答えろ」
シオンは腰に携えた剣を抜く。言葉にする必要はないという態度の表れだった。
「よ〜し! じゃあ聞くがいいさ! 俺は魔王三銃士の一人! 『ドライ』様直属『
「魔王軍!?」
「やはりか……」
あまり不思議な話ではない。ここの警備団を病院送りにした事、そして今城の警備をすり抜けてやって来た事は普通は出来ない。
それ以上に気になったのは魔王三銃士という聞きなれない言葉だった。少なくとも敵だということはっきりしているが、おそらく『幹部』か。
「気をつけろシオン そいつ只者じゃない」
「なんだ牢屋の兄ちゃん! なかなかわかってるじゃねえの!」
「当たり前だ! アニキはあの聖剣使いなんだからな!」
「バッ!? バカレイ! 魔王軍になに正体バラしてんだよ!?」
「フン! そんなもんアイツを倒しゃ結果オーライだろ? やっちゃえアニキ!」
「出られたらな」
「あ」
「聖剣使い……?」
そう言うと雷迅は懐からなにやら写真らしき物を取り出すと、ジロジロと顔を照らし合せている。
「あー本当だな! この写真の顔で間違いねえや」
「ほら! 言わなきゃあのバカ気づかなかったて!」
「言ってくれるね小悪魔風情が まずお前から相手してやろうか」
「だそうだぜ! やっちゃえリン!」
「どいつもこいつも口だけ達者なことで……」
チビルはリンを盾にしながらそう叫ぶ。
怒りを通り越して呆れてしまう。だがこの牢の中にいる限り、奴はこの中に入られないはずだ。
「相手したいのは山々なんだがあいにく囚人の身でね 出してくれたら相手しやるよ」
「言ったな聖剣使い その言葉忘れるなよ」
そう言うと牢にに近づいてくる。だがシオンに背を向けるのは油断しすぎだろう。
「私がいることを忘れるなよ 雷迅とやら」
シオンは素早く剣で斬りかかる。その動きは素人でもわかるほどに洗礼され、修羅場をくぐり抜けてきた者の動きだった。
完全に間合いに入られた、だが迅雷と名乗る男は焦るそぶりなど見せない。
「いい動きだ姉ちゃん……だが物足りねえな」
「何!?」
剣を掴まれた。あろうことか、雷迅はたったの指二本で剣を掴んでいる。
「さっきまでのやつらの中じゃあ一番骨がありそうだがその程度じゃ無理だね」
「くっ!」
シオンはすぐに後退し距離を取る。一旦態勢を整えて次の攻撃に繋げようとしたのだろうが、その隙を与えられることはなかった。
「遅い」
「ガハッ!?」
さっきまでとは逆にシオンが間合いを詰められ、雷迅の蹴りは腹部に直撃した。
そのままシオンは壁に激突する。その一撃は壁にヒビを入れるほど強烈なものだ。
「シオン!?」
「安心しな聖剣使い 気を失ってるだけだぜ たぶん」
「お前……!」
「さあて待ってなすぐに出してやるからよ」
そう言って再び牢に近づく。どうやって開けるかは知らないが、この牢の鉄格子には電流が流れている。
これを想定していたのかどうかは定かではないが、奴が触れればひとたまりもないはずだ。
「そんじゃまず最初にっと」
ついに鉄格子に雷迅が触れた。そしてすぐに電流の餌食になっている。
だがまるで効いていない。それどころか、むしろ喜んでいるように見える。
「いいぜぇ……! "美味い"電気だぁ!」
「こいつまさか……
「わかったぜ! たぶんこいつ鬼族の
「偏食鬼?」
「ああ! 前にお前が戦った
「その通りだ小悪魔 他の奴らは土や石なんか食って自分の魔力に変える……そしてオレは!」
「──"電気"!」
「ご名答! 派手に暴れようや聖剣使い!」
電気を食べ終わったのだろうかさっきまで流れていた電流が無い。
それは、今雷迅が触れている鉄格子は何の意味もないことを表していた。
勢いよく鉄格子を曲げ、雷迅は穴を広げる。
「先手必勝ってな! すぐに出てくださいアニキ!」
銃を取り出したレイはすぐに銃を連射する。雷迅は先程広げた穴から離れ、距離を取る。
「ナイスだレイ」
「えへへ〜褒められたら伸びるタイプなんでもっと褒めて欲しいですね〜 あっ! ご褒美とかも考えていいですよ!」
「褒める気力がなくなった」
「無駄話は後にしようぜ! バッチリ戦闘態勢だアイツ!」
立っているだけでわかる。奴からの闘気とでも言うのだろうか、ビリビリと身体で感じている。
そんな鋭い雰囲気に反し、雷迅の顔は不気味にニヤリと笑っていた。
「いい判断だったなそこの赤髪 あのまま狭い牢屋の中で追い込まれた状況を利用してむしろ狙いを定めてくるとはな それに……たとえ外しても外には出られて戦いやすくした」
「よかったな 褒められて伸びるタイプなんだろ」
「そうじゃないんすよ」
「今度こそ派手に行こうや聖剣使いィ!」
そう言った瞬間、雷迅から閃光が放たれた。
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