第6話 駆り立てられる想い
ㅤㅤㅤㅤㅤ―― Side
――わたしの呼びかけで、自分の部屋から出てきた
会いたかった。
思わず口について出てしまいそうになった。
リビングに着た
今迄はすぐ隣に座ったはずなのに、
意図的にでないと離れて座ったりはしないだろう。
心の距離。
自分が思った以上にショックを受けた事に気付いた。
少し涙が残る赤い目が何を物語っているのか。
ほんの少し朱が走る頬と汗ばんだ首筋は非情に
思わず生唾を飲む。
感傷している気持ちとは裏腹に、本能は素直だな。
久しぶりに
避けられてはいたけど、案外普通に話してくれる。
実はそれ程わたしのことを想ってなかったんじゃないかと思わなくもないけど、さっきのドアの向こうで泣いていたのは気のせいじゃないと思う。
ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ≫≫≫≫≫≫
「彼氏とキスした」
わたしは
「え」
それからしばらく話し込んだ。
「――相手の気持ちも大切だとは思うけど、何より自分の気持ちが一番大事だと思う」
「自分の気持ち・・・・・・か」
わたしの気持ち・・・・・・。
でも
わたしの場合、彼氏に対してそうはならない。
それは性欲がないか極端に少ないということか。
では『好きでもそうならない』という場合に当てはまるのか?
それは “NO” だ。
なぜなら、わたしはその感情を既に抱いている、
今目の前にいる
“そうなる” 相手がいる以上『好きでもそうならない』には当てはまらないと思う。
じゃあ、 “そうなる” のはなぜか?
ならばわたしは――
「・・・・・・その、こんな時にあれだけど、今更だけど、ごめんなさい」
重大な結論を出しかけたわたしに、突然
何を謝られてるのか解らない。
わたしは困惑の色を浮かべて
まさか例の男子のことだろうか。
付き合う事にしたとか。
わたしは、今までだって
何かする時は
今思えばすごく激甘だなわたしって。
だけど、こればかりは許容出来ない。
生半可な気持ちの奴に
わたし以上
いや、そんな奴はいない。
わたし以上の奴なんているはずがない。
ここに来て他の奴に
何より自分の気持ちが一番大事だと
なのに
それならわたしは、
わたしは
異論は認めません。
・・・・・・しばらく待ったけど、
わたしの出方を待ってるみたいだ。
何についての謝罪か聞こう。
「あー、何の事?」
まずい、怒ってるみたいに言っちゃった。
そりゃ例の男子のこと考えたらイラつきもするけど、なるべく棘がないように話さないと。
「いや、あの・・・・・・、無理矢理付き合わせた事。恋人にって」
「?? それってわたしは承諾したよね?」
「そうだけど、・・・・・・
「キスだって
「う、うん。そうだけど、
今更だけど、と
先に訪ねて考えさせてくれるだけずっといいのに。
わたしがもし拒めば
「一応、ちゃんと考えたんだけど? キスしていいか、いやあの場合、されていいか、だけど。それで
「それも含めて、結局私はそういう
つけ込んだようには思えない。
こういうと恥ずかしいけど、ただ純粋に求められてただけだと思う。
そしてわたしも嫌だと思わなかったからそれを受け入れた訳で。
ただ、何が嫌か聞かないと自信が無かったから事前に確認をとってたんだと思う。
わたしは
結局わたしの、件の悩みの行きつく先はそこなのだろう。
わたしは
彼氏にされたキスは不快でしかなかったのに。
「一方的に気持ちを押し付けて、そのくせ
わたし自身、自分の事が解ってなかった、自分の事見てなかった。
「散々振り回して、勝手に終わらせて、一杯我儘に付き合わせて、ごめんなさい」
「それは全部わたしも了承したから良いんだよ。それに
「でも私と付き合う前から彼氏さんの事好きだったんでしょ? もっと
え?
わたしが彼氏の事好きだった?
どうして?
ちょっと気になってただけだし、そんな話しした事もないのに。
いや仮に私が他に好きな男子がいる事知ってたら
「だからごめんなさい」
そんな事して欲しい訳じゃないのに。
っていうか話しが見えない。
何処からわたしが前から彼氏を好きだった事になったんだ。
「わたし、彼氏を好きだって言ったっけ?」
「ううん。聞いてない」
「ならなんで?」
「・・・・・・
顔を下げたまま答える
――わたしはそんなに彼を見てただろうか?
ん?
待てよ?
確か、自分の気持ちが解らなくて、彼が未だに気になるだろうかとチラチラと見た事がある。
それの事を言っているのだろうか。
いやきっとそうだろう。
それなら勘違いをさせたのはわたしだ。
付き合っているのに、彼女の目の前で他の人を何度も見る方が不誠実だ。
謝るのはわたしの方――
「――わたしが他に好きな人がいるから身を引いたの?」
「あ、う、いや・・・・・・。やっぱりそういうのは良くないと思って」
「
「違うよ、私のはただのエゴ。自己満足でしかないよ」
「それ言い出したら
「でも他に好きな人が」
「違うよ」
わたしが誰を想っているかを伝えないと。
「ねえ
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