96話「vsSランクモンストール群」
「私の手を、借りたいと……言ったのですか?」
「ああそうだ。テメーの軍略とあの固有技能を俺たちの為に使えと言った」
カミラは予想外のことを言われてびっくりした反応をしている。
「…さっき色んな人たちが言った通り、私が軍略家としてどれだけ優れていようと、あなたやあの大規模な災害の群れのような“理不尽”には敵わないのです…。私などあなたたちの何の――」
「ごちゃごちゃうるせー!テメーの力が必要だから手を貸せって言ってんだ。いいからこっちに来い!」
「な…!?」
下らない言い合いをする気は無いと言わんばかりにカミラを俺たちのところへ来させる。王族と貴族どもは何故カミラなんかを…って言いたそうな目で見てくるが無視。
「相手は理屈が通じない化け物たちなのですよ!?私がいてもどうせあなたが兵士団を壊滅させたような結果になるだけです……!」
「馬鹿かテメー、頭が良いくせに何も見えてねーのな?ここにいるのがいったい誰なのかを。ここにどれだけ強い奴らが揃っているのか」
「え…?」
「俺一人いればあんな程度なんてことはない。俺はそれくらいの力が冗談抜きであるんだよ。まあ信じられないかもしれないけど」
俺は強気にそう言ってやる。カミラは戸惑った反応をする。
「コウガの言ってることは本当。コウガは凄く強い。前だってGランクモンストールの群れや魔人族を倒した」
「ええそうね。私たちにとっては絶望的な勢力でも、コウガがいるだけで負ける気がしないって思えるわ」
「だな」
アレンの言葉にセンやギルスも同意する。彼らの言葉に藤原が微笑む。
「カミラさん、信じてみませんか?私は甲斐田君の仲間になってまだ浅いですが、彼の可能性は信じられるって思うんです。さっきだって見たでしょ?あっという間に3体ものSランクモンストールを討伐してみせたじゃないですか」
「………」
カミラは少し黙って何かを考え、静かに口を開く。
「……あなたたちは今、何が知りたいですか?」
「どういう編成でいったら良いか。で、誰がどのモンストールと戦えば良いかってところかな。主にアレンたち鬼族がいちばん戦いやすい奴を当ててくれ」
カミラの質問に俺はそうリクエストする。それを聞いた彼女は落ち着いた様子で(まだ恐怖は残って見えるがマシになった)残っているSランクモンストールの群れ(十体はいるな)を観察する。そして一分程経ったところで分析結果を報告する。
「鬼族の方々だけだとどのモンストールに対する勝率は3~4割しかありません。しかし、あの頭部が大口をもつ魚のモンストールなら、可能性はあります」
カミラが指したのはザイートを運んだ山椒魚っぽい奴だ。あいつをアレンたちと戦わせたらいいんだな。
「アレン、みんな。あいつだけお前らに任せる。露払いは俺に任せろ」
「うん、分かった!」
「「「「了解!(任せろ)(分かったわ!)(残りは頼むね!)」」」」
アレンたちは元気良く返事をして戦闘態勢に入った。
「じゃあ藤原、俺の援護を頼むな。背中を狙う奴がいたら妨害頼む」
「分かったわ。でも無茶は止めてね」
藤原も杖に魔力を込めて戦う準備を完了させている。
「カイダさん、あの中で特に強い個体は、モグラのようなものと……首がいくつもある蛇のようなものです。あれらには注意してください」
「了解」
カミラの忠告を聞いたところでまずは俺が動く。モンストールどもも俺たちに目をつけて襲いにかかる。次いでアレンたちも山椒魚のところへ向かいにかかる。
俺は全身から魔力を発して、アレンたちのところへ向かおうとしていたモンストールどもを引き寄せる。
「来いよ!テメーら俺が異質で目障りなんだろ!?殺せるもんなら殺してみろぉ!!」
声を上げて挑発する。それに乗ったモンストール7体と一気に相手してやる。
脳のリミッター2500%解除
体中から力が漲ってくる。クラウチングスタートで飛び出して駆け出す。今の速度はどうやら真空中の光の速度の100分の1(秒速3000㎞くらい)の速さらしい。全部が遅く見える。遅すぎるくらいだ。誰一人として俺を目で追う奴はいない。
隙だらけのモンストール一体一体に渾身の「絶拳」を放ってやる。俺が通り過ぎた瞬間、7体ものモンストールの体がボン、バァンと弾けていく。
が、さすがはSランクだけあって全員まだ虫の息くらいで残っていた。
「俺はこの4体をやる。藤原はその3体に止めを」
「わ、分かったわ!(何が起こったのか全く分からなかった……)」
目の前にいる死にぞこない4体に向かって赤・青・黄色・黒の魔力光線をそれぞれ撃って消し飛ばす。
藤原は水魔法で巨大な水柱をいくつも発生させてそれをモンストール3体に打ち込む。柱が刺さった部分から肉が溶けていくの見るに、あれは全部「聖水」らしい。あんなのをくらったら俺マジで消されるんじゃね?ゾッとするね。
こうしてあっという間に7体ものSランクモンストールを片付けた。藤原がやや引きつった笑みを浮かべて話しかけてくる。
「私の手、要るのかな……?残りもその調子で行ったらあっという間に……」
「そうしたいのは山々だが、無理だな。今の力を発揮できる時間は一分も持たない。数が多かったから今みたいに一気に片付けたが、あとはそこそこの力でゆっくり相手することにする」
「なるほど、制限があるってことね」
第一陣を全滅させて一息ついたその時、離れたところで断末魔の叫びが聞こえる。見ると赤コートのおっさんが何か紫色の液体を浴びて悲鳴をあげている。
「くそ!くそぉ!!何故、何故我がこんな目に……!?何だこれは!?おい、誰か、何とかしろおおおおおあ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”痛い痛い”い”い”い”!!」
ジュウウウウと音を立てて奴の体が溶けていく。あれは毒だな。それにしてもなんでそんなところにいるのか。多分だがここから一人で安全なところへ逃げようとしたんだろうな。俺の近くが今はいちばん安全だというのに。勝手を犯した罰が下ったんだよ。ざまあ。
「甲斐田君!あの人を……」
「無駄だ。あそこへ着く頃にはもう死んでるよ。あんたでも治せない侵食速度の猛毒だあれは。諦めろ」
「う………そんな」
「勝手にどこかへ逃げようとしたから狙われたんだろ。自業自得だ。それよりも用心しろ。次はカミラが忠告してた奴が相手だ」
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