短編置場

@mia

短編集

気に入っている作品

第10話 たまの外出

 ひと月ぶりの予定の無い休日、何をしようか朝食を食べながら考える。

 でも、外出したのは、左腕だった。たまには仕方ないか。

 左腕がない状態で知り合いに会ったらマズイので、一日中家にいた。

 夜になって左腕が返ってきた。いくつものひっかき傷を作って。

 どこに行ったかは分からないが、猫をモフってきたらしい。

 大満足の休日を過ごしたようだ。


 ひと月後、次は左脚の番らしい。左腕だけでは不公平になるからな。

 どこに出かけるのかと思っていたら、ベッドに横になる。

 ゴロゴロしている。ただ、ゴロゴロしている。

 結局、一日中ゴロゴロしていただけだった。体についたままじゃなぜダメだったのか。


 ひと月後、右脚。いってらっしゃい。

 夜になると、土で汚れて帰ってきた。洗うといくつものアザが出てきた。サッカーをしてきたらしい。エグイいろのアザもあった。反則じゃないのか、これは。

 翌日から筋肉痛がつらかった。


 そのまたひと月後。右腕。四肢、公平に。

 帰ってきた右腕はベタベタしている。ほんのりと潮の香りもする。まさか、海で泳いできたのか。それとも、落ちたのか。よく分からないが、お土産に貝殻をもらった。

 

 月に一度の彼らの外出が、繰り返される。いや、外出しないのもいるが。

 自分の用事は仕事帰りや休日の予定を早めに終わらせ時間を作り、済ますようにした。

 こんな感じで、十数か月過ごしてきたが、最近困ったことが起きている。


 どうしよう、心臓が外出したがっている。


 


 


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る