第2話「夢幻の誓約」序章

古代の彼方に消え去った至宝の数々がかつて納められていた場所。改めての説明が不要な神話が今も眠る古代王の墓所…そして様々な英雄達の起源が刻まれた星の記憶を管理するポータルとしての機能をも擁する絶大な優先度で封じられた棺。


…様々な側面であらゆる根源を縛るその領域は、支配者たるかの王がこの世から旅立った後も稼動を続けてこの世界の意思決定機関のごとく振舞う事をやめずにいる。 様々な時代の皇帝、教皇、神祇庁の長たちが魅入られ掌握を試みた歴史は深く、未だに魔術界や陰陽界に苦い記憶を刷り込んでいた。


それでも「私ならば、俺ならば」と挑む”自殺志願者”は後を絶たない。そして「もしかしたら自分が」との微かな希望はまともな展望や客観視を焼き尽くして志願者達を際限なく飲み込むのだ。それを哀れと思うのぐらいは許されてしかるべきだろう…。その醜態が語り継がれるのはむしろ慈悲でさえある筈だ。


しかし日が沈み月が昇る事と同じ様に今日もその領域は勇者志望の犠牲者を飲み込む。 歴史を紡ぎ歴史を残すのが勤めである筈の当代の記録者もいつしか夢を見てしまうのだろう。不老不死程度では希望が見出せない事案である事を理解していながらも。

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