第42話『大尉とまりあのイラ立ち』
まりあ戦記・042
『大尉とまりあのイラ立ち』
疑似ペーパーチケットは、ゲート横のマシンにスマホをかざせば記録され、列で待っている家族や恋人の所に戻ってゲートを潜ると、自動改札に似たディスペンサーから疑似チケットが吐き出される。
これだと、ほんの数分列に並んで入場を待つという体験ができる。
たいていの客は、それで入場する。
金剛少佐は完全アナログで、チケットを買うところから並んで、アナログチケット専用のゲートを使う。
おかげで待ち時間は十五分ほどと、疑似ペーパーチケット組の五倍ほどの時間がかかる。
「だって、おかしいだろ。入場してからチケットを受け取るなんてさ。親とか恋人が列に並んで買ってきたチケットを手に取って『ああ、これから入場するんだ!』というワクワクを感じて入るのが仕来りだ。な、これから楽しむんだって気になってきたろ?」
少佐の言うことは分かったが、I lobe You! のネオンサインが背中で点滅するスタジャンを着せられているみなみ大尉は面白くない。
ウズメの発進を数分後に控え、数日前のサンオリデートのことを思い出していたのは、やっぱり腹立たしかったのか、意識の底で楽しかったと思っているのか区別がつかなくなってきているせいかもしれない。
――システムオールグリーン、インターフェースクリアー、リリースインジェクション完了――
ヨミの変異体が数週間ぶりに出現。バージョンアップしたCISからのオペレーションは快適でさえあったが、先日サンオリで並んだ時のようなイライラがある。
リリースチーフの自分がこんなことではいけないと思う大尉であったが――おや?――と思った。
マリアのコクピットコンソールも、マリアのイラ立ちを示すゲージが上がっていたではないか……。
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