オリジナルマスター
ルド
特別版 年末年始イベント サンタ狩り
*本編とは一切関わりのないIF物語です。
*色々本編と色々違う点がありますが、ご理解ください。
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「あー、幸せだー」
年末の冬休み。学生という呪縛とから解き放たれたジーク・スカルスにとって数少ない癒しの日々がやって来た。
「やっと気付いた。此処が俺の楽園なんだなー」
そんな彼は何をしているかといえば―――ただ自分の部屋のベットでゴロゴロ。
時折行きつけの質屋で買ったレトロなゲームや魔法の本を読んでたりしているが、休みに入ってからずっとこれだ。
「いや、ゴロゴロし過ぎだ。もう昼だぞ」
「ダラダラ過ごして何が悪い〜。トオルもゴロゴロしてようぜー」
「怠け者の仲間入りは御免だ」
だらしない。同室のトオル・ミヤモトは呆れたようにしながら日課の筋トレを続ける。
「お前も一緒にやらないか? 適度な運動は大事だぞ?」
「適度?」
具体的に現在やっているのは、天井に取り付けた棒に片手の指二本でぶら下がって、そこから何度も体を起こす作業。汗かくので上半身は裸。
……ただし、その彼の足首には鉄球の重り数個が鎖で取り付けられており、チラッと見ていたジークはイヤそうに首を振った。
「冗談は脳筋だけにしてくれ。たく、ルームメイトがいろんな魔法が使える俺じゃなかったら、とっくに床や天井が抜けてるぞ」
「そこに関しては感謝しているぞ。【
「その名で呼ぶな【
「お前も変な呼び方するな! オレは普通に【剣導】なんだ! マジシャンってなんだよ!」
「大戦で活躍した結果じゃない?」
二人はかつて同じチームで長く続いた大戦争に参加していた。
実は集結に導いた伝説のパーティーチームだったりするが、そんな黒歴史を二人して掘り起こしたいとは少しも思っていない。……あの頃の自分たちは若かったのだ。
「やめよう。不毛な争いだ」
「だな。オレも筋トレ続けるわ」
幸いな事にその事実を知っている者は、王都から離れたこの街では限られた人間のみ。
余程の事が無い限り、彼らの正体が露見するような面倒ごとは――――
●
「ではサンタ狩りをするぞ友たちよ!」
「オレを巻き込むんじゃねぇよジークてめぇ!」
「俺だって巻き込まれたくなかったんだ!」
唐突に彼らを呼び出したのはちっちゃな金髪幼女。
しかし、その正体は冒険者ギルドのマスターであるシャリア・インホード。
彼らの正体を知っている数少ない人物で、いつも面倒ごとを持ってくる厄介な妖精族である。
毎回拒否したいが、正体を知られているのでヘタに断ると後が怖い。
「サンタ……あのサンタ? 返り血を誤魔化す格好とした?」
「ああ、クリスマスとかっていうイベントに出てくる? 不法侵入者? いや、ロリコンか?」
「お前さんたちは……まぁ、今回のサンタはある意味間違ってないか?」
常識が欠如している魔法オタクと脳筋剣士にシャリアは呆れながら今回の仕事の話をする。
「クリスマスが近いせいか、最近サンタに扮した盗人集団がおるとの被害報告を受けていてな。狙われているのは子供のいる家だ」
「血塗れの上等なサンタのクセに、子供の家を狙っているのか?」
「やっぱりロリコンかよ。いや、この場合ショタコンでもあるのか?」
「幸いバレたらすぐ逃げるタイプの盗人のようだから今のところ怪我人はいないが、時期が時期だ。子供の安全の為にお前さんたちにも手伝って欲しい。―――クリスマスだからな
「「……」」
最後の一言に、男たちは無言で杖と刀を取り出した。
「「サンタ狩りの始まりだ!!」」
「お前さんたち、大戦時代にチョロい奴らとか言われたりしなかったか?」
覚えはあるが、無視する二人。
悪質なサンタ共に天誅を下すため、最強の魔法使いと最強クラスの剣士が立ち上がった。
●
結論から言うと速攻で見つけた。
「な、なぜバレた!?」
「このサンタとトナカイ超強ええええ!?」
「笑いながら突っ込んで来やがる!逃げろぉぉ!」
クリスマスのイベントの真っ最中な街で、
「アハハハハハハ!魔法でサーチしてんだ逃すかよ! その服以上に真っ赤に染めてやるぜこのクソサンタ共!」
「ジャンケンでトナカイコスににされた恨み! お前らの斬りまくってはらしてやる!」
「「「ギャァアアアアアア!?」」」
逃げ惑うサンタたちを追うジーク・サンタとトオル・トナカイ。
「ジークサンタさんからプレゼントだ! 有り難く受け取りな!『
サンタな地獄が出来上がっていた。
「な、なんだこれ? 箱?」
逃げていた
勝手に紐が解けて中が開くと、顔文字が書かれた火が付いた『ニヤけたボム』があった。
「へ、ギャァアアアアア!?」
「「「ど、同志ィィィィィ!?」」」
目が点になっている間に爆発する。
「ま、まさかこの箱にも!?」
慌てた一人の
「サンタのプレゼントを拒・ん・だ・な?」
「え、ぎょええぇえええええええ!?」
放り捨てた途端、神速で追い付いたトナカイの一閃がサンタを斬り裂く。……血飛沫は上がっているが、不思議なことに死んでません。ええ、全く死んでません。
「サンタのプレゼントを拒む悪いヤツはさっさとクタバレ」
「「「このトナカイもこぇええええ!?」」」
トナカイのトオルから放たれる殺気に、他のサンタたちも縮こまって立ち尽くしてしまった。
「『
ジークサンタの魔法が再び発動される。
今度は巨大な魔法陣まで生成されて、彼の頭上に巨大な白いプレゼントボックスが出現した。
「やれトナカイ」
「ミヤモト流・三式―――『断斬』!」
トオルトナカイが放つ風の斬撃が箱を斬り裂くと、中に入っていた巨大サンタが出現。
真下にいる盗人サンタ共を見下ろすと背中に背負っているプレゼント袋をゆっくり持ち上げて。
「ジークサンタからの奢りだ。たっぷり受け取りな!」
「「「―――ッッ!?!?」」」
恐怖で動けなくなった不届なサンタ共に向かって、ビックサンタの容赦ない鉄槌が振り下ろされたのであった。
●
「やり過ぎです! いったい何を考えてるんですか!?」
そして苦労するのはギルドの受付嬢ことキリアである。
彼女の前にサンタコスを着ているジークとシャリア。ついでにトナカイコスのトオルが正座させられていた。
「ジークくんたちもそうですが、ギルドマスター! あなたまで一緒に仕事をサボって何してるんですか!」
「だって楽しそうだったんもん」
「あなたは子供ですか!」
先程まで登場してなかったが、実はシャリアもサンタコスで好き放題暴れていた。
同じ場所にいなかった理由? 一ヶ所にいたら街の被害が尋常ではなかったからだが、精霊魔法フルに使って大暴れしていたのであんまり意味なかった。
「誰が主犯ですか!? 正直に言いなさい!」
「「シャリア(ギルド長)」」
「友たちにあっさり裏切られた!?」
だってキリアが怖いから。
こんな時に限って、二人の気持ちは一つになった。
「ギルドマスターぁあぁあ?」
「す、すみませぇーん!」
涙目のシャリア(ギルドマスター)に睨み付けるキリア(受付嬢)。
普通この上下関係は逆なのであるが、すっかり見慣れた光景なのでジークもトオルも黙って正座を続けた。説教の巻き添えゴメンなので。
「言っておきますが、二人にもちゃんとお仕置きですからね! パーティーメンバーの人たちが引き取りに来て貰いますから!」
「「逃げるっ!」」
またまた気持ちは一緒。
同時に正座を解いて逃げ出す為に部屋のドアまで駆け出そうとするが、駆け出した彼らの足に張り付くようにシャリアがしがみ付いた。
「「ちっ!? 離せシャリア(ギルド長)!」」
「逃すかァアアアア! お前たちも道連れにしてやるぅぅぅ!」
「「貴様ァアアアアアア!?」」
信じられない話であるが、こんな三人でも二人は英雄的なパーティーに所属。片や幼女な金髪は伝説的な【魔女】と呼ばれた魔法使いだったりする。
「私が逃すわけないでしょう。はぁ、本当にこの人たちは……」
疲れたようにため息を吐くキリア。
「「グフっ!?」」
「いったい何やらかしたのよこのおバカども!」
「サ、サナちゃん!事情聞く前に殴っちゃダメだよ!」
「聞いた後なら良いんだねぇー」
結局改めて呼び出されたジークのパーティーメンバーの女子たちによって、やらかしたバカ二人はその場で折檻、グルグル巻きにされて連れてかれる。
「さぁギルドマスターは壊した建造物の修理申請や今回の始末書をさっさと書いてください。あの二人の分もあるので、今から始めないと朝になっても終わりませんよ?」
「ひぃなあああああ!? 勘弁してくれぇえええええ!?」
ギルドマスターはギルドマスターで二人と違い思いっ切り顔を晒していたので、騒ぎの原因として夜通しで後始末の仕事を涙目でやることになった。
◯作者コメント
急にこっちの更新になりました!
昨日は頭痛が酷かったんですが、今日はだいぶ落ち着いたので書こうと思って忘れてたクリスマス回をこちらで出してみました!
まぁ、クリスマスというよりサンタ回ですが、サンタ狩りかサンタ撲滅回で迷った程度で。
年末最後の更新になるかもなので一応ご挨拶。
今年は後半(ほぼ年末近く)からの新作(幼馴染に振られ(略))を出していますが、まぁ相変わらずの穴ありな作品になってそろそろ完結の予定です。
来年からまた新しいの出す予定なのでその時はまたよろしくお願いします。
今年は本当に色々と精神的にも肉体的にも疲労が重む年でしたが、なんとか乗り切れたので来年も頑張りたいと思います。
来年オリマスのリトライ……やれたらやりたい。
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