第10話
死んでないから、生きている。生きているから、死んでない。死んでないから、続いている。続いているから、覚えている。覚えているから、許さない。
「私」は何度も殺された。床が崩れた教室から落下して、硫酸を顔面に浴びせられて、水底に引きずり込まれて、首を切り落とされて、飢えと渇きの中放置されて、毒入りのお菓子を食べさせられて。
この廃校から脱出できた時だって、奴等は「私」を殺したんだ。首を絞めて、頭を殴って、彫刻刀で突き刺して。助けに戻った「私」を、戻ってきた「私」が悪いと殺した回もあった。
私は生き延びた、生き残った、生きてここにいる。死んだのは弱い「私」、狂ってしまった幼馴染みを信じてしまった「私」、同級生が壊れてしまっていることに気付けなかった「私」、でももうそれも終わり。
だって、私は生きている。私は全てを知っている。これまでに無念を抱いて死んだ、数多の「私」が私を生かす。だから、『私』は―― たちが期待する、「私」であることを辞める。
これから始めるのは復讐劇。何度も殺された可哀想な少女が、何度も殺した悪党たちを、何度だって殺し続ける残酷劇。だって、 たちだって、そういうのがおすきでしょう?
「ねぇ、だから、『私』はこう名乗るわ。だって、貴方たちが、『私』をそう呼んだもの!」
くるり、くるり。スカートを閃かせて舞えば、その縁取りにレースが踊る。白と黒の単調な制服は、青みがかったスミレ色のドレスに早変わり。目の色は、黄昏色のオレンジに、凄惨のクリムゾンレッドを一匙。
「『アリス』、『アリス』、『タソガレアリス』! だって貴方たちがそう呼んで、 たちがそう期待したのだから! 『私』は怪談の国の女王、黄昏時を支配する女王! あっははは、首をはねておしまい! みぃんなしんでおしまい!」
ひきつったのどのおくから、かんだかいわらいごえ。そう、『私』は『タソガレアリス』。『私』は女王、『私』は支配者、気の触れた男たちの首を落とす処刑人。「死神」だって、『私』にひれ伏すわ。
だって――そうとでも在らねば、もう、私たちは、「私」たちは……
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