第11話 冒険者ライルの誕生
俺が冒険者カードを受け取ると、
「それは、身分証明書にもなるから、肌身離さず持ってなさいよ。失くしたら再発行が高くつくからね」
「ああ、分かった」
「じゃぁ、簡単な説明をするわね」
姉ちゃんが何やら操作すると部屋に映像が映し出された。
「どう。驚いたでしょう。まだまだ最新設備がこのギルドにはあるからいずれ教えるわね」
姉ちゃんは俺が驚く顔が好きなのか、昔からよく、キサラと一緒に俺に悪戯をしてきたがその性格は今も変わってないようだ。
「まず、レオスの冒険者ランクは・・・・・・Dランクよ。本来ならEランクからなんだけどレオスにはすぐに強くなってもらわなくては困るからね。Dランクなら魔物討伐や、護衛任務も数人でパーティーを組めば受けられるわ。なんだかんだ強くなる一番の近道は戦うことよ。それにレベルが一に落ちたところで騎士団で培った経験までなくなってないわ。とりあえず今日はもう休んで明日の早朝から依頼をどんどんこなしなさい。部屋は二階の角部屋に用意したから」
「そうさせてもらうよ」
レオスは冒険者カードを見ながら階段の方に歩いているときにあることに気付いた。
「なぁ、姉ちゃん。冒険者カードの名前の欄に『ライル』って書いてあるんだけど・・・・・・?」
「ああ、それは、あなたの冒険者用の名前よ。レオスはって名前は世界中に知れ渡ってしまったからね。悪い意味で。だからあなたは今度からその名前を名乗りなさい。名前は私が決めたから」
「もうちょっといい名前なかったの?」
「・・・・・・何、文句あるの?」
姉ちゃんから鬼気迫る迫力を感じ体全体が震え始めると
「い、いえ、何でもありません!!!!!」
俺は、勢いよく階段を駆け上っていった。
次の日の早朝、一階に降りると依頼書が張られてる掲示板の前でグリムが待っていた。
「来たなライル。とりあえずすぐ近くにゴブリンの群れがあるらしいから退治に行くぞ」
「・・・・・・ライルって俺か。すっかり忘れてた」
「おいおい、しっかりしてくれよ。まあ、この町じゃ大丈夫だと思うが、お前がレオスだと知っているのは、このギルドの少数だけだからな」
「ああ、気をつけるよ」
俺とグリムがギルドを出ようとすると、
「ちょっと待ちなさい。ライルに渡すもんがあるのよ」
「俺に何くくれるのか姉ちゃん?」
「ちょっとせっかく名前を変えたのに私のことを姉ちゃんと呼んだら台無しじゃない」
「あ、それもそうだ・・・・・・じゃあ何て呼べばいい?」
クリスはしばらく考えて
「普通にギルドマスターか前に私が冒険者の時に名乗ってた『フレイヤ』と呼んでくれると助かるわ」
「分かった・・・・・・それにしてもフレイヤって炎の魔法が得意だからつけたのか。安易だな」
(なんか周りの温度が急激に上がったような)
グリムは汗をだらだら流して震えている。
フレイヤの方を見ると手のひらにファイヤボールを出し、
「なに、文句あるの」
俺が「何でもありません」というとフレイヤは「全くもう・・・・・・」といってファイヤボールを解除すると
「それはそうと、これよ」
フレイヤは机の上に宝箱を出した。
レオスが開けると中にはブロンズアーマー、ブロンズアーム、ブロンズソード、ブロンズヘレイム(兜)が入っていた。
「とりあえず今のあなたならこれぐらいの装備で雑魚モンスターなら問題ないわ」
「ありがとう姉ちゃ・・・・・・いや、フレイヤ。大事に使わせてもらうよ」
「あとはあなた次第よ。また聖騎士を目指したっていいし、他の職業を身につけるのもいいわ」
「そうだな。自分にあった物を身につけてアーサーに余計なことをしたと後悔させてやる」
「そのいきよ。とりあえず、三日間でできるだけ強くなりなさい」
そして、レオスは装備し終わると今はまだ使えない聖剣をフレイヤに託してグリムとゴブリンの討伐に向かった。
一方ギルド内でフレイヤしかいないはずのところで声が響いた。
『あれが、アルの生まれ変わり。確かに面影はあるけど』
声のした方を見ると聖剣に填まっている赤い宝玉が光っていた。
「そうよ。レオスは必ずどの先代よりも強くなってあなたを使いこなすわ」
『そう、今は私の声も聞こえてないようだけど、早く私を使いこなせるように導いてあげてねクリス』
「ええ、分かってるわ。それと今の私はフレイヤよ――って聞いてないし」
聖剣は言うこと言うと眠るように光も消えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます