アルヴィス大戦~ある時レベルを極限まで落とされたのでせっかくだからいろんなスキルを覚えなおして敵に後悔させてやると決意する~
tai-bo
第1話 かつての聖戦と結末
今から数百年前、邪神とその配下たちとの死闘があった。人類は迫り来る恐怖からいつかは我が身かと震えていた。
そんなある日、立ち上がる者達が現れた。
その一人は、アルヴィス・フィン・グレイス(通称フィン)後のアルヴィス王国、国王アルヴィス一世である。
そして、アルヴィスの隣にたたずむのは幼馴染で聖騎士のダリアン・アル・バッハ―(通称アル)レベル八十を超える聖騎士で在りとあらゆる剣技と光魔法が得意。
「さっさと雑魚を片付けて邪神のもとに行くぞ、フィン」
「ああ、俺とお前がいれば百人力だ、アル」
颯爽と現れる魔物を片付けながら進んでいくと闇に覆われた城が見えてきた。
「あそこに邪神がいる。あとちょっとだ、フィン」
争ってる魔物の一匹が目標をアルに定めて急速旋回していった。
「危ない!アル!!!」
フィンの声に振り向くと空からガーゴイルが爪を振り下ろしてきていた。
俺は目の前の魔物に剣を振り下ろした直後で一瞬のスキをつかれた感じだ。
(防御が間に合わない。やられる)
俺が覚悟を決めた時だった。
≪フレイムアロー!!!≫
炎の矢が三本飛んできてガーゴイルに命中した。ガーゴイルは全身が燃え上がって灰になって消えていった。
「大丈夫? アル」
俺にそう聞いて助けてくれたのは、フィンの妹で幼馴染で婚約者のアルヴィス・ルイーゼ・グレイスである。(通称ルイーゼ)長い金髪に緑色の瞳、青いマントを身につけ赤いブーツを履いた少女である。
「ああ、助かったよ。今のは流石に死ぬと思ったよ」
「そう、良かったわ・・・・・・って、ケガしてるじゃない!」
そう言われて腕を見ると血が流れていた。
「大丈夫だよ。これぐらいかすり傷だ」
「駄目よ。これから最後の戦いなんだから体は万全にしておかないと」
ルイーゼは俺に回復魔法をかけ始めた。なんだか全身が温かく、体力どころか筋力も回復してる感じだ。これなら何とかなりそうだ。
「ねぇ、ルイーゼ。僕にも回復魔法をかけてよ」
その声に振りぬくとフィンが自分を指さして頼んでいた。よく見ると髪の一部が燃えていた。どうやらルイーゼの放ったフレイムアローの一部が当たっていたようだ。
「・・・・・・フンだ。アルの背中を任されていたにもかかわらずこんな危ない目にあわす兄様なんて馬にも蹴られて死んでしまえばいいんです」
「そんな、これでも君の兄だよ。もうちょっと労ってくれても罰は当たらないよ。アルもそう思うだろ?」
アルは苦笑いするしかなかった。
その時、大爆発が起きてゴブリンの群れが吹き飛んだ。
「相変わらず仲がいいな。見てて飽きないわ」
ゴブリンの群れを吹き飛ばして現れたのはパーティーメンバーのアルベルト・ハワード。近接戦闘が得意な拳闘士で、自分に特化した補助系魔法が得意。
「あなたの目は節穴です。アルベルト」
フィンがアルの耳元で
「今からでも遅くないから婚約破棄したほうがいいんじゃないかな? 兄である僕が許すよ。なんなら何人か紹介しても・・・・・・ひっ!」
強力なプレッシャーを感じて二人して振り向くといつの間にかエリーゼがいて
「お兄様!!」
エリーゼの手のひらに炎系究極魔法の塊ができていた。
「じょ・・・・・・・冗談だよ。アルとエリーゼはお似合いだよ。兄の僕が保証する」
そう言って、フィンはアルの背中に隠れた。
それを見てエリーゼは魔法を消して
「もういいです。今はそれどころでなないですし」
それを聞いてホッとしたフィンはエリーゼに耳元で(無事に帰れたら覚えておいてくださいね?)と釘を刺されていた。
「よし、いい感じに緊張がほぐれたところで、後は邪神を倒すだけだ。行くぞ!」
「そうだね。これ以上妹に飽きられたくないしね」
「はぁ~、全く兄様は」
「お前らとパーティー組んでよかったよ」
アルとフィンは頷き合い
エリーゼはフィンに飽きれながら二人の後を追い
アルべルトは、拳をパンッ!!とならし気合を入れて歩を進めた。
城に入ると、中は薄暗く、後ろの扉は、固く閉ざされた。
「これじゃ何も見えないな。エリーゼ」
「はい。アル」
≪ライトニング≫
エリーゼの手のひらから光の玉が生まれ、頭上に舞い上がった。すると辺りが光に包まれ、見えるようになった。
周りを見渡してみると、騎士の甲冑や豪華な装飾品がところせましに並べられていた。
アルたちは何かの罠で甲冑などが突然襲ってくると思って、警戒しながら進んだが何もなくバカでかい扉の前まで来た。何もなくて肩透かしを食らった気分だ。精神的なダメージでこれなら魔物が襲ってきたほうが楽だと各々思うのだった。
「・・・・・・何はともあれこの向こうにいるな。ここまで来たら後戻りはできない。みんな、覚悟はいいか?」
アルの質問に対し、フィンは
「愚問だね。ここでやめるようなら途中で逃げかえてたさ」
エリーゼは
「アルの行くところなら最後までお供します。それに兄様にアルを任せるわけにはいきませんから」
「ちょっとそれはないよ~ ここまで来たら兄様にアルの背中を託します。ってぐらい言ってよ」
アルベルトは
「オイオイ、こんなところで兄弟喧嘩はしてくれるなよ。フィンはシスコンでエリーゼはブラコンでツンデレなのはよくわかったからさ」
「だ・れ・が・ブラコンでツンデレですか? もう一度言ってもらえます」
アルベルトは「さっさと邪神を倒してしまおうぜ!」と扉があるほうに逃げてった。
アルはエリーゼの方を見ると体全体から炎系の魔力が噴出していて今にも弾けそうだ。そんなエリーゼを見て、フィンも後ずさりしている。
「まぁ、いいです。今は邪神を倒すことだけに専念しましょ」
そう言ってエリーゼは魔力を抑えると扉の方に歩いていった。それを見てアルベルトどころかアルとフィンもホッと胸をなでおろすのだった。
アルたちが扉の前に立つと
ゴオォォォォォォォッ!!っと甲高い音を立てて扉が左右に割れた。中から冷気が流れ出してきた。
これが邪神が放つプレッシャーだろうか
「お前ら、いくぞ!」
「最後だからって気を抜かないでね」
「兄様に言われるまでもありません――それにアルとの幸せの日々が始まるんです。こんな所で死ぬわけにはいきません」
「安心しろエリーゼ。どんなことがあってもお前らだけは守ってやるぜ!」
アルは、エリーゼに親指を立てて二カッとしてるアルベルトを見て大丈夫そうだなと中に入っていた。他の三人も続いて入ると扉が勝手にしまった。辺りが闇に覆われたと思ったら壁にある蝋燭に火が灯り、手前から奥にどんどん点いていった。何だか招き入れられてるようだ。アルたちは用心しながら奥に進むと玉座があった。誰もいないようだ。玉座の隣には漆黒に染まった禍々しいオーラをまとった杖があった。その時だった。
『よくここまで来たな。逃げなかっただけは誉めてやろう・・・・・・だが、お前たち四人だけとは我もなめられたものだな』
腹のそこに響くような声が響いたと思うと先ほどまでいなかった玉座に黒い影が立っていた。その影が隣にある杖を持つと、影が消え長い黒髪に頭から二本の角、全身漆黒の鎧にマントを羽織った男とも女ともつかない人物が現れた。さすが邪な神というだけあって身につけてる気配が邪悪そのものだった。邪神が杖をカツン、カツンと鳴らしながら玉座から降りてきた。
アルたちは武器を構えると聞いた。
「お前が邪神か?」
「・・・・・・ここまで来た褒美だ。質問に答えよう。我はこの暗黒大陸で魔族を統べる魔王だ。お前たち人間には邪神と呼ばれてるようだがな」
「魔王!? それが本来の呼ばれ方なのかい?」
アルに続いてフィンの質問に対し、邪神、いや魔王は顎に指を当て、少し考えてから
「我にそんなこだわりはない。好きに呼べ」
「なら、ここのルールに倣って魔王と呼ばせてもらうわ」
今度はエリーゼが質問した。
「何故あなたたちは人間を襲うの?」
「知れたこと。人間たちの恐怖が我らのエネルギーの源だからだ」
「――そんな、そんなことで私たちの世界をぶち壊したっていうの!!」
(そんなのってあんまりじゃない)
エリーゼは握りこぶしを作って唇をかみ怒りで震えていた。それを見た魔王は意も返さないように続けた。
「そこの女よ。お前たちだって食べるために動物たちを殺すであろう。それと何が違うと言うのだ」
「そ、そんなのただの屁理屈よ」
「まあ待て。あいつの口車にいちいち乗るな」
「アルベルト」
アルベルトはエリーゼの肩に手を置いて話はここまでと言わんばかりに前に出た。
「魔王さんよ。俺たちの癒しをあまりいじめないでくれないか」
それを聞いたエリーゼが「ごめんなさい。私はアルだけのものなの。あなたの癒しにはなれないわ」と頭を下げていたがアルベルトはあえて見なかったことにして魔王との話をつづけた。
「では、次はお前が質問するのか?」
「冗談。俺はこの拳で語るのみ」
そう言ってアルベルトは両手の拳をぶつけた。それを見ていた魔王は、
「ククク・・・・・・クァハハハハハハ。そうだ、かかってこい。所詮お前たちはここで滅ぶ運命なのだ。それに我に盾突く者がこれ以上現れないように見せしめにしよう」
「ついに本性を現したな。いくぞ、≪エクス≫」
アルが背中に差した剣を抜いた。その剣の名は『聖剣エクス』この世には七つとない聖なる武具。それぞれに意思があり、真名を知ることで力を発揮できる。武具によっては人の形をとることもあるという。聖剣エクスもその一つである。
「ほう、まさか聖剣を持っているとわな。ここまでこれたこともまぐれではないようだな。認識を改めよう」
魔王は杖を前にかざし何やら呪文を唱えると障壁を何重にも展開した。
「この障壁を破壊せん限りお前たちの攻撃は我に届かん」
「おもしれえ!俺の拳を受けてみやがれ!≪ナックルブレイカー≫!!!」
アルベルトは身体強化の魔法を自分にかけると先手必勝と拳に魔力を集め拳闘士の上級魔法ナックルブレイカーを繰り出した。ナックルブレイカーはインパクトの瞬間に大爆発をおこすため身体強化の魔法をかけたうえ魔力を上手く制御できないと自分もダメージを受ける諸刃の剣である。ちなみに熟練度は推奨レベル七十五以上が求められる。
ナックルブレイカーが障壁の一枚目に当たった瞬間、
ドッカ~ン!!!!!!!!!!
「ど、どうだ。俺の必殺技は?」
煙が晴れると障壁にひびが入り二枚目までが割れ三枚目にもひびが入った。
「――我の障壁をここまで破るとは、ここまで来ただけはある。だが、これぐらいの攻撃ではなんてことはない」
魔王がそう言うと障壁が元に戻ってしまった。
「!? ま、マジかよ」
「今度は私がやるわ」
エリーゼが前に出ると
≪ファイヤーボール≫
エリーゼの周りに火の玉がいくつも現れ一斉に飛んで行った。ファイヤーボールは初級魔法だが熟練度を上げれば上げるほど何個の同時に出せるようになる。
無数の火の玉が飛んで障壁に次々当たっていった。
「無駄だ。ファイヤーボールぐらいではいくら打とうが我が障壁にひび一つつかん」
「――それはどうかしら」
エリーゼは目をつむり、無数の火の玉を一点に集めて巨大な火の玉を作り出していた。それを両手の手のひらを前に出して巨大な火の玉の周りを魔力で包んで圧縮していった。
「よ、よせ。エリーゼ! そんなに魔力を使ったら魔力欠乏症になるぞ」
アルがエリーゼの心配してるとフィンに肩をたたかれた。
「心配いらないよ。我が妹様はこれぐらいではくたばらないよ」
「しかし・・・・・・」
「それに奥の手があるからね」
「奥の手?」
「それはもうすぐわかるよ。それよりエリーゼは必ず障壁をぶち抜いてくれるはずだ。その時に魔王に一瞬でもスキができるはずだ。その瞬間を狙って同時に仕掛けるよ」
「分かった」
アルはフィンの言葉にうなずくと体内の魔力を循環させながらその時に備えた。
一方、エリーゼは、
恐らくこれでも障壁を全部突破するのはたぶん無理。でもやるしかない。場合によってはあの力を使うことになっても・・・・・・てか使うだろうな――ま、いっか。この力は兄様しか知らないけどみんなにばれても死ぬよりはいい。アルはどんな顔をするかな。婚約者が若さを保って寿命も普通の人間より長いのを喜ぶかもしれないわね。アルベルトと一緒にはしゃいでるかも――クスッ。想像したら笑えてきた。
目を開けると
「やっぱ、ポジティブに考える方がいいものね! いくわよ。炎系最大魔法≪メガフレイムブレイカー≫ ファイヤー!!!!!!」
圧縮された巨大な火の玉はエリーゼの手のひらから押し出されて猛スピードで障壁に衝突して障壁を三枚ぶち抜いて最後の四枚目のところで拮抗していた」
「惜しかったな。三枚も障壁を破ったことは褒めてやるがここまでだ。もう魔力も残っていまい」
「それはどうかしら」
「なんだと」
今にも消滅しそうだった≪メガフレイムブレイカー≫が勢いをぶり返してきた。
「――これはどういうことだ。奴の魔力が元に、いやそれ以上になっている。目が奴の目の色がそれに魔力の質が違う」
≪ウインドストーム≫
「何、魔法を二つ同時に放つだと⁉ これでは破られるか。やむを得ん」
「いけー!!!あとちょっとで・・・・・・」
エリーゼの炎に風がプラスされて炎が渦を巻いて威力が何倍にも上がり、障壁も最後の一枚が割れそうな瞬間、魔王が目を見開いて杖を前にかざすと、
「カウンタースキル≪リフレクション≫」
魔王が呪文を唱えると障壁が歪んだと思った瞬間、威力を吸収して跳ね返し、エリーゼを襲った。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
エリーゼは吹っ飛ばされて部屋の壁に衝突するところをアルベルトがキャッチしたが勢いを殺せず二人とも壁に激突し崩れ落ちた。
「我にここまでの力を使わせるとな」
「気を抜くのは早いんじゃないかな」
フィンが二刀流で一瞬のスキを突き魔王の背後から仕掛けたのをたまらず上に飛んで躱したところに上空からアルが魔法剣サンダースラッシュを繰り出した。雷のような素早い光を魔王は躱せないと思ったのかテレポートでかわしった。
「くそっ! 完全なタイミングなのに、テレポートも使えるなんて――やっぱ魔王を名乗ることはあるか」
「いや、そうでもないよ、ほら」
フィンが指さす方を見ると魔王の頬に切り傷があり指でなぞり、指についた血を見ていた。
「フハハハハハハッ! 我に傷をつけるものが現れるとは。ここからは本気でいこう」
ついに本気になった魔王と対峙すると後ろからガラララッと音がし振り向くと「イタタタタ・・・・・・」とエリーゼが立ち上がるところだった。
「大丈夫か、エリーゼ?」
「ええ。アルベルトが壁になってくれたから」
「エリーゼ、その姿は?」
アルがエリーゼの姿を見ると目の色が金色になり、耳の先もとんがりエルフの特徴がでていた。
「エリーゼ。お前、エルフだったのか?」
「・・・・・・ごめんなさい。あなたの見る目が変わるかと思うと言い出せなかったの」
「いや、フィンとは異母兄弟なのは知ってたけどまさかエルフとの混血だったとは・・・・・・実は生でエルフ見たかったんだ!」
握りこぶしをつくって力説するアルを見て、エリーゼは思わずポカーンとしてから笑いが漏れてしまった。
「フフフフフフッ。そういえばアルはそんな奴だったわね。悩んでた自分がバカみたいだわ」
「これで思い残すことはないな。さっさと魔王を倒してこの戦いを終わらすぞ!」
「ええ!」
「我を倒すだと・・・・・・調子に乗るなよ、小童ども!!!」
魔王の全身から黒いオーラが噴出して魔力が何倍にも膨れ上がった。
(空気が重い。一瞬でも気を抜いたらあの世行きだな)
「アルベルトをたのむ、エリーゼ」
「任せて。アルも無理しないでね。直ぐに加勢するから」
「ああ。いくぞ! フィン」
「これは気が抜けないね」
アルとフィンは同時にかけだすと魔王を挟んで攻撃を仕掛けた。
アルは聖剣に火の魔法をエンチャントして魔法剣にして聖剣を横に振りぬいた。すると火の刃が飛んでいった。魔王はそれを「避けるまでもない」と言って、杖を一振りしただけで火の刃が消えてしまった。それを見てすかさずフィンが斬りこんだ。
「二刀流スキル≪クロスインパクト≫」
刀を十字にクロスして放った攻撃を魔王が上空に逃れた。暫くすると先ほどまで魔王がいた背後の壁が十字に切り裂かれて衝撃が後から追いかけてきた。それを見た魔王は、
「・・・・・・なるほど、衝撃波か。まともに防御していたら攻撃は止めれてもダメージは受けていたかもしれんな――だが、当たらなければ・・・・・・むっ」
アルが不意を突いて聖剣を魔王目掛けて投擲した。それを紙一重で交わした魔王の背中に魔法でできた矢が直撃していた。
攻撃が飛んできたほうを見ると魔王の後ろに一人の少女が浮いていた。彼女の名はエリス。先ほどまでアルが使っていた聖剣が人の姿になったのである。容姿は、長い銀髪に淡い赤いドレス、足元にはヒールを履いていた。見た目だけではどこかのお姫様かと思うぐらいだ。
そんなエリスとアルが示し合ったのが先ほどの攻撃なのである。
「攻撃が当たらなければ・・・・・・」
「なんだって?」
「き、貴様らぁぁっぁぁぁぁっぁ!!!!!」
アルとエリスの言葉に魔王は怒りをあらわにした。
一方、エリーゼはアルベルトに治癒魔法をかける準備をしていた。今、エルフの力を使ってるエリーゼは回復魔法を通常の何倍もの威力で使うことができる。エリーゼは両手を組むと、
「癒しの水よ≪ホーリーシャワー≫」
アルベルトの上から全身に癒しの水が降り注いでいた。そして瞬く間に傷がいえ体つきも一回り大きく見える。
「うっ!?」
「気が付いた。アルベルト」
「ああ、助かったよ・・・・・・て、誰!」
意識を取り戻したアルベルトはエルフの姿に変異したエリーゼをみて誰かわからなかったみたいだ。
「私よ」
「・・・・・・エリーゼか。よーく見てみたら耳と目の色が違うくらいで、かわいいな」
「ありがとう! あなたに言われてもうれしくないけど」
「それもそうか――よし、二人の加勢に行くとするか」
「ええ!!」
エクスがアルの元に戻ると
「ここからは生半可な攻撃はできないわよ」
「ああ、わかってる」
エクスが聖剣に戻りアルの手に収まると刀身の窪みに水の欠片をはめた。すると刀身が火の形態から水属性に変わり聖剣が青く輝け出した。エクスの特徴は聖剣モードの時、刀身に属性の欠片をはめるとその属性に特化した聖剣に変化することにある。しかも使い方は幾通りもありまだ未知数。
「いくぞ! はっぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!! ≪ドラゴニックスプラッシュ≫」
聖剣の周りに水の渦ができ段々とドラゴンの形になった。ドラゴンになると勢いよく魔王に向かっていき魔王は空中に躱した。
「無駄だ! それはどこまでも追いかけていく」
「く、小癪な」
≪エアカッター≫
魔王は杖から強力な風の刃を飛ばし、ドラゴンの水を正面から切り裂いた。すると辺り一面に水が降り注ぎ水びだしになった。バシャッと魔王が地上に降り立った。
「聖剣といってもこの程度だったか。もう終わりにしようか。我はあきた」
魔王はアルに一歩ずつ近づいていきフィンのことも警戒していたため全く付け入るスキがなかった。魔王がアルを射程圏内に収めようとしたとき、二人はアイコンタクトで頷き合い後ろに跳躍した。
「無駄なことを」
魔王が二人にとどめを刺そうと杖を掲げたその時、
≪サンダーボルト≫
天から雷が降り注ぎ先ほど降り注いて出来た水たまりを伝い、魔王に直撃した。
「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁっ!!!」
「ナイスタイミングだ、エリーゼ」
俺の声掛けにエリーゼが右手の親指を突き立てて答えてくれた。その隣にはアルベルトも立ってるてことは無事に回復したようだ。さすがエルフの力といったところか。
パシャッ!
音の方を見ると魔王が片膝をついていた。
「・・・・・・何故だ。如何にエルフの魔法といえど我がここまでのダメージを受けるとは」
その魔王の言葉を聞いてよーく見るといたるところに雷が走り腕や足が焦げて焼かれていた。
魔王の疑問については聖剣エクスが答えた。
「あなた、先ほど私が放った魔法の矢をくらったでしょう」
「・・・・・・あんなもの、ダメージをくらったうちに入らん」
「それはそうでしょ。攻撃魔法じゃなくて弱体魔法なんだから」
「なんだと!?」
「その効果は攻撃力と防御力、スピード、ありとあらゆるものが時間とともに何倍どころか何乗も弱体化させること。今のあなたではもう勝ち目はないわね。ご愁傷様」
「・・・・・・ふ、ふざけるなぁー!!!」
魔王が立ち上がると同時にエクスに攻撃魔法を放とうとしてるがスピードが極端に遅くなっている隙をついて駆け出したアルベルトがさっきの仕返しとばかりに肉体強化した拳で魔王の顔面を殴りつけた。殴られた魔王は地面を四、五回、回転して壁に叩きつけられた。
「ぐはぁ! バ、バカな――この我がただの一発殴られただけで。我は認めんぞ、認めんぞぉ―!!!」
「これで終わりだ、魔王!」
とどめとばかりに跳躍したアルベルトは地面に倒れてる魔王にナックルブレイカーを放とうとした瞬間、魔王が呪怨魔法の一つを飛ばしてきた。とっさにアルベルトは頭を右に動かしたが左頬をかすめて血が出た。
「まだ、そんな力が残ってるなんて、魔王ってだけあるか」
「すぐに調子に乗って反撃されてたら世話ないよ」
「フィンの言う通りだ」
「全く。頬ケガしてるじゃない。何ともない?」
「ああ、エリーゼに直してもらってから調子がいいんだ」
「いくら私でも直せないのもあるんだから油断しちゃだめよ」
「魔王も虫の息だ。一気にとどめを刺すぞ」
アルたちは魔王を囲むように散ると、手を前にかざすと魔王を囲むように赤い魔法陣が描かれた。これは、最上級の職業が四人集まって出来る合体奥義の一つ滅龍魔法である。この魔法は、冥界の炎を対象に召還してありとあらゆるものが散り一つ消滅させるまで消えることはない。なお、この奥義は体力と魔力の消費が激しいので最後の手段にしか使えない。万が一ミスったら絶望的。
「なんだ、これは・・・・・・?」
魔王が最後の悪あがきと魔法陣を破壊しようとしているが力も普通の人間程度まで落ちているのでどうしようもない。
「これで終わりだ、魔王! みんなやるぞ」
「や、やめっ!!!」
みんなで魔力を流し込むと魔法陣がより輝きだすと冥界から召還された炎が龍を形どり魔王に絡みついていた。炎が全身に行き渡り、魔王の腕が炭かし、やがて足もなくなり残るは上半身だけとなった。
「クハハハハハッ!!! まさか、我がやられるとわな・・・・・・だが、覚えておけ! 我は数百年のうちに必ず復活をし、人類に混沌と災いをもたらしてやる。そのための楔も打ったしな」
「な、どういうことだ?」
「いちいち真に受けるんじゃないわよ、アル。死ぬ前の悪あがきよ」
「我の忠告を聞かなかったことをいずれ公開することになるぞ・・・・・・では、数百年の平和を噛み締めておくのだな。フフフハ―ハッハー!!!!!!!」
最後に魔王が笑うと全身が炭かし炎が消えると床には黒い人型の跡だけが残った。
4人は魔力を使い切って大の字に倒れた。みんなやっと終わったと気が抜けて笑い合ったりしていたが、アルだけは魔王の最後の言葉が気になって素直に喜ぶことができなかった。
この戦いから数か月後、
人類たちは町を直していき、アルたちの故郷がある大陸に一つの都市が誕生した。都市の名はアルヴィス王国。初代国王はアルヴィス・フィン・グレイス。そしてこの戴冠式に合わせてアルとルイーゼの結婚式が盛大に行われ、都市の人々から祝福された。二人は都市に建てられた場内の一角に屋敷を持ち、たびたびフィンの業務を手伝ったりしている。アルバルトは拳闘士の道を究めたいと二人の結婚式を見届けるとすぐに、全国放浪の旅に出た。
この年を新聖歴元年となった。それを記念して中央広場の噴水広場に人類を救った英雄として四人の銅像が建てられた。
この時代から数百年後、魔王の言ったことが現実になることを四人は知るすべもない。
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