第12話 ほんの少しだけ、違う世界

 半開きのまま固定するために挟んでいた木切れをつま先で蹴飛ばして、レヴィは、後ろ手に部屋の扉を閉ざした。

 シルヴェスタの森の風景が扉の向こうに消え、かわりに、目の前には、見慣れた"風の塔"の内部の風景が広がる。

 「…よし。イングヴィもマウロもいねーな。お前、さっさとこっち来い」

 「あ、ああ…。」

声も姿も違うのに、雰囲気や喋り方、それに、動作の癖が全く同じ。なんとも不思議な感覚だ。

 きょろきょろと辺りを見回しながら、レヴィは小走りにハシゴのほうへ駆けていく。

 扉は塔の中心を貫く柱の部分にあり、そこから長いハシゴが下の通路にむかって架けられているのだ。こんなものは、ロードの知っている世界のほうの塔には無かった。


 ハシゴを降りてレヴィについていくと、彼は、台所の脇の狭い部屋に滑り込んで大急ぎでロードを奥に押し込んだ。それから、扉を閉める前にもう一度、用心深く外を見回す。

 「何を、そんなに気にしてるんだ?」

 「余所者を連れ込むなって煩いんだよ、あいつら。」

あいつら、というのが、レヴィ以外の塔の住人だということは何となく分かった。それに、さっき口にしていたイングヴィというのは、ちょうど、向こうの世界でレヴィ本人から素性を調べて欲しいと依頼されていた、兄弟子の一人の名前だ。こちらの世界では、その人物は今も存命中らしい。


 連れ込まれた場所は、物置を兼ねた誰かの部屋のようだった。最低限の整理しかされていない足の踏み場もない部屋の中にハンモックが吊るされ、寝具と衣類が乱雑に積み上げられている。お世辞にも、住み心地が良さそうには見えない。

 「――で? ロードっていったっけ、シエラの話がいまひとつ分からないんだが…お前が別の世界から来たぼくの知り合いって話、本当なのか」

 「こっちの世界じゃ違う、ってことか」

 「ああ。ぼくはお前みたいな知り合いはいないし、会ったこともないはずだ」

腕組みをしながら、レヴィはじろじろとロードを頭のてっぺんからつま先まで眺め回す。年相応に成長したレヴィはロードよりわずかに背が高く、見下ろされる感覚が新鮮だ。

 「こっちの世界がどこまで同じで、どこから違うのか、おれも確証がないんだ。…一応、確認させてもらえないか? お前、リスティっていう一つ年上の姉さん居る?」

 「ああ」

 「お前たちは、十歳くらいでランドルフさんに雇われてこの塔にやって来た。出身地は風車村。で、あってるか?」

見る見る間にレヴィの表情が変わっていく。

 「…なんで、そんなことまで知ってる」

 「なんでって、お前自身にそう聞いたんだよ。」そう答えるほかに無い。「ってことは、おれの知ってる世界と基本的なところは同じみたいだな」

 「どうなってんだ…」

レヴィは頭に手をやって、髪をくしゃくしゃとかき回す。渋い表情だ。

 「…違う世界? 別の世界がある? そんな話、聞いたことも無い。で、そっちの世界にも、ぼくと同じ奴がいるってことか…?」

 「何が起きてるのかは、おれも聞きたいよ。そもそも、こんなことになる直前は、お前と一緒だったんだぞ。てっきり、お前が何かしたんだと思ってたんだけど…」

ロードは、じっとレヴィの胸のあたりを見つめた。


 ”創世の呪文”の欠片の輝きは、そこにはない。


 持っているのは、ごく普通の出力しか持たない、ありふれた魔石一つだけだ。外見が実年齢と同じになっていることからしても、彼がこの世界の"風の賢者"ではないことはたしかだった。だとしたら、――今の"賢者"は一体、誰なのか。

 「…さっき、イングヴィとかマウロとか言ってたよな。ジュリオって人も、ここにいるのか」

 「ジュリオ? あいつは、ジイさんが死んだあと塔を出ちまった。なんか女が出来たんだとか。森の外の町に住んでるぞ。たまーに飛んでくることはある」

 「ジイさんって、ランドルフさんのことだよな」

 「そう…」

初対面のはずの相手が事情に詳しすぎる違和感がまだ抜けないらしく、レヴィは、渋い顔で腕組みしたままだ。

 「ジイさんは八年前に死んだ。テセラと戦って」

 「それが、シルヴェスタの森の惨状か」

少しずつ見えてきた。


 この世界では、十三年前にレヴィが呪文自身に管理者として選ばれるという事件が起きていないのだ。

 ランドルフは"賢者"の力を失わず、その結果として、テセラが"海の賢者"を攻めることも、レヴィの兄弟子たちの命を奪うこともなかった。代わりに、八年前にヤズミンが死に、ランドルフ自身がテセラに攻撃を仕掛け、そして、相打ちとなって死んだ。

 (だとしたら、もしかしたらこの世界では、母さんはテセラに殺されていないのか…?)

もし母が生きていたとしたら、この世界の自分はどうなっているのだろう。ハルのことも聞きたかった。


 だが、目の前のレヴィの不審そうな顔を見ていると、急ぎすぎるのはためらわれた。

 「ランドルフさんが亡くなってるんなら、今の”賢者”は誰なんだ?」

 「誰って。…イングヴィだよ、一応」

 「ノルデン貴族出身の?」

 「そ。っつっても、ジイさんが死んだあと強引に管理者に納まったような奴でさ、いまだに正式な"賢者"にはなれていない。シエラも同じ。引継ぎの手続きに問題があったのか、何か隠れた条件を満たしてないのか分からないが、だから<旅人の扉>で繋がれた扉は、前の代のジイさんの時のまんまだ」

 「……ハルに、"海の賢者"には、聞いてみたのか」

 「あー、あいつはダメだ。」

 「どうして」

 「話聞いてくれねーんだよ。こっちからの扉は封されて使えなくなっちまってるし、"賢者"の役目を果たすことは五十年も昔から放棄してる。ジイさんがテセラと戦う時でさえ、手も貸さずに無視してたような奴だ」


 驚きは、しなかった。

 元いた世界のほうでも、初めて会った時のハルは役目を放棄しているも同然の状態だった。現実から目を逸らして、自分の殻に閉じ篭ったまま十年以上も深い海の中を彷徨っていた。

 もしかしたらこちらの世界でも、似たような状態なのかもしれない。

 「…おれが、説得してみようか?」

 「は?」

 「だって、このままじゃマズいだろ」

彼は、壁越しに塔の上のほうをちらりと見やる。

 塔の最上部にある"創世の呪文"の強い、そして不安定な輝きは、眼を凝らせば、ここからでもはっきりと判る。

 「三つのうち一つが放置状態で、残りの二つが今、管理者がいない状態で放置されてるんだよな? 世界が、相当不安定になってるはずだろ。世界のスキマから<影憑き>が湧いてきたら、どうやって対処するんだよ」

 「…お前、気持ち悪いくらい良く知ってんな。本当、お前を知らないこっちの記憶が間違えてるのかって妙な気分になってくる」

 「そっくりなんだよ。おれの知ってる世界とここは。」

それとも、別の世界に来たという推測は間違いで、ここは元いた世界が何らかの原因で変化してしまった姿なのかもしれない。


 と、その時、どんどんどん、と誰かが扉を激しく叩いた。

 「おい! レヴィ! いるのか?」

 「っやべ、イングヴィだ。おい、隠れろ」

ロードを無理やりベッドの下に押し込むと、レヴィは、胸のあたりに触れた。首から提げている魔石に触れたのだ。

 とたんに、扉がばちんと音をたてて勢い良く内側に向かって開いた。どうやら魔法で開かないようにしていたらしい。


 隠れた場所から、ロードは、入って来る金髪の男を見ていた。

 不遜な表情に、確かに貴族然とした雰囲気。年のころは三十過ぎくらいか。まだ中年と言う雰囲気はなく、着ているのはノルデン風のやけに高級そうな洒落た衣装だ。

 (これがイングヴィ…、あのリドワンの息子か)

確かに面影がある。特に、不遜そうな雰囲気がそっくりだ。

 男は、じろりと部屋の中を見回し、それから、レヴィのほうに不審げなまなざしを向けた。

 「何をしていた?」

 「着替えてたから鍵をかけてただけだよ」

レヴィは、さりげなく視線を逸らしながらぶっきらぼうに答える。

 「何か用事ですか?」

 「買出しだ。」

言いながら、ぽんとメモを投げて寄越す。

 「さっさとしろよ。夕方までには戻って来い。マウロの奴はグズで薪取りから帰ってきやしないし、どいつもこいつも…」

 ぶつぶつ言いながら、服の裾を翻して去って行く。


 扉が閉まると、レヴィは小さく溜息をつき、ちらりとベッドのほうを見やった。

 「ま、あれが塔の今の”主人”ってワケ。ジイさん亡きあとの、ぼくの雇い主ってわけだ。」

 「扱いにくそうだな…」

ベッドの下から這い出してほこりを払うと、ロードは、レヴィの手元のメモを覗きこんだ。

 「買出し行くんなら手伝おうか? そのほうが話しやすそうだし」

 「んじゃ、そうしてもらおうかな。」

 「行き先は?」

 「シュルテン。ジイさんが死ぬ前、最後に繋いでた場所がそこだから」

台所の奥にある扉を開くと、目の前にごく普通の民家の廊下が現われた。

 驚いているロードの横で、レヴィは、扉が閉じないよう木切れを挟み、馴れた様子で廊下の先にある階段に向かった。

 その下から話し声が聞こえてくる。


 降りてゆくと、階段を降りたところに立って誰かと話していた黒髪の女性が振り返り、二階を見上げた。

 「あら、レヴィ! いつの間に?」

リスティだ。ロードの良く知っている姿のまま。

 だが、この世界のリスティの方は彼を知らない。しばし目をしばたかせ、彼女はロードをじっと見つめた。

 「ちょっと買い物行ってくる。こいつのことは、あとで説明するから。…行くぞ、ロード」

 「ああ、うん…」

通り過ぎながら、彼はリスティの側に立って話をしていた相手を見やった。そちらも彼にとっては良く知っている相手だった。

 (ユルヴィ…)

彼も、ロードとは初対面の顔をしている。


 ――この世界には、自分を最初から知っている人間がいない。

 (この世界のおれは、シルヴェスタへも、"風の塔"へも行ったことがないのか…)否応無く突きつけられる事実。それとともに、ますます、不安が大きくなっていく。


 この世界の自分は、―― 一体、どこで何をしているのだろう?




 家の外に出ると、見慣れたシュルテンの町並みが広がった。

 「さっきリスティさんと居たの、ユルヴィだよな?」

 「知ってんのか。この町に住んでる<王室付き>の魔法使いでさ、こっちにリスティが住むようになってから、なんだかんだ訪ねてくるんだよなぁ。あれ、気があるんじゃないかな」

 「まさか」

思わず声を出してしまった。

 「あ、…っていうか、リスティさんって、塔じゃなくて、この町に住んでるのか」

 「そうだよ。イングヴィは正式な"風の賢者"じゃないし、誰も<旅人の扉>の力を使えないもんだから、外に通じる扉を繋ぎかえることも出来なくてさ。かといって、外に通じる扉が無きゃ塔から買出しに行くのに不便だろ。それで、扉をつなげてた先の空き家を買ったんだ。」

通りから広場に出る。

 広場の真ん中に、井戸ではなく噴水があることに気づいて、ロードは思わず足を止めた。

 「…噴水?」

 「ん、どうした」

 「あそこにある噴水って…」

立派な噴水の真ん中には、石で作られた男が剣を振りかざしている。

 「あー、ノルデンの昔の王様の像だか何かのやつだな。作られてから四百年くらい経ってて町のシンボルだとか聞いた」

 「……。」

元の世界でレヴィが言っていた、「シュルテンに突然現われた噴水」。こちらの世界のレヴィは、それが、当たり前のように存在する。

 ということは、…こちらでは、噴水が「ある」のが本来の姿なのだ。

 (つまり…、…エベリアの古城も)

本来は、こちらの世界にあるもの…だったということなのか。


 だが、だとしたらカールム・カレレムの禿山は、どうしてこちらの世界では木に覆われた緑の普通の山だったのだろう。

 ロードが考えている間にも、レヴィはどんどん先へ歩いていく。

 「えーと、まずはーインクの買出しか…」

メモを見ながら先を歩いていたレヴィの歩調が緩む。どこからともなく良い香りが漂ってくることに気づいたロードは、その理由を察した。見覚えのある、可愛らしい赤と白のひさしの小さなパン屋がそこに建っている。

 「…先に買ったら? マフィン」

 「は?!」

レヴィは大げさなくらいの反応で、慌てて振り返る。「な、何で」

 「ここのマフィン好きだろ。プレーンマフィンが最高だ、って言ってたじゃないか」

 「いつ?!」

 「前に、フィオと三人でここに来た時」

言いながら、ロードはおかしくなって思わず噴出した。

 「そんな顔するなよ。こっちの世界でも、好みはちっとも変わってないんだな」

 「…ううっ」

見た目は全く違うのに、反応も嗜好も同じで、よく知っているレヴィそのままだ。それがやけに面白く感じられた。


 結局、レヴィは我慢しきれずにその店でプレーンマフィンを十個、買い込んだ。そして、食べながら歩き出した。

 「食べ残しをポケットに突っ込むなよー、またリスティさんに叱られるぞ」

 「うっさい! "また"とか言うなっ。今日会ったばっかだってのに」

否定しないということは、こちらのレヴィも同じ理由で叱られているということだ。

 (似てるっていうより、ほぼ同一人物なんだな…)

自分より背の高い後姿を眺めながら、ロードは考え込んでしまう。

 (だとしたら、"賢者"にはなってなくても、たぶん、こっちのレヴィも同じ魔法が使える)

メモにある買い物を次々こなしながら町を歩き回るレヴィは、食料のような重たいものや大きなものはロードに任せている反面、筆記用具のような小さなものや、魔法の道具など高価なものは次々と上着のポケットに放り込んでいく。そのポケットに、空間拡張の魔法が使われていることは間違いない。

 (――才能は…同じなんだ。だったらどうして、こっちのレヴィは"賢者"にならなかったんだ?)

以前レヴィは、自分は本当は”賢者”を継ぐはずではなかった、と言っていた。けれど結果として、呪文は彼を正式な管理者として認めた。

 イングヴィが何年もかけて認められていないのと裏腹に、レヴィは最初から、呪文自身によって選ばれる資格を持っていた。

 (こっちの世界でも、本当は、お前が継がなくちゃいけなかったんじゃないのか…?)

だが、それは言い出すことが出来なかった。


 "なぜ"この世界はロードの知る世界とは違う状態になっているのか。

 "なぜ"同一人物が全く別の結果に生きているのか。


 その理由を知ることが、怖い気もしたからだ。




 いつしか時は過ぎていた。雑踏を避けるように、胸のあたりの白い鴉たちが飛び立っていく。そろそろ夕方だ。

 「やべ、そろそろ戻らないと」

レヴィは空を見上げて、あわてて踵を返した。

 「えーと、買出しはこれで終わりだよな…よし。あ、お前はこっちに泊まれよ。リスティに言っとくから」

 戻ってみるとユルヴィの姿はなく、リスティは台所で料理をしていた。

 「お帰りなさいレヴィ。丁度出来てるわよ、はい、今日の分」

籠に入ったパンと一緒に、煮込み料理が入っているらしい鍋を差し出す。出来立ての良い香りが漂っている。

 「助かるよ。ロード、それ受け取って持ってきてくれ」

ばたばたと階段を駆け上がり、部屋の中に買い込んだ荷物を放り込む。ロードが籠と鍋を持ってあとから登って行くと、レヴィはそれも受け取って足で扉をひっかけなから中へ入っていく。

 「リスティ!」

二階から、階段ごしに怒鳴る。

 「あとでまた来るけど、とりあえず、今夜こいつを泊めてやって!」

それだけ言うと、ロードのほうを一瞥した。

 「じゃな。面倒な連中にメシ食わせて、用事済ませてくるから」

 「……。」

つっかえにしていた木切れを蹴飛ばして、レヴィは、扉を閉ざしてしまった。もう一度その扉を開けば、そこはごく普通の部屋に変わっているはずだ。

 こちらからは"風の塔"に行くことはできない。扉を繋ぐには、向こう側から開いてもらうしかない。


 階段を降りていくと、別の小さな鍋をかき回していたリスティが顔を上げた。

 「ロードさん…でしたっけ。夕食、まだですよね」

 「ああ、はい。」

このリスティは、自分と会うのは初対面なのだ。そして、自分が何者であるのか、どこから来たのかを全く知らない。

 「あの子と一緒に扉から出てきたってことは、塔のお客様なのかしら」

 「まあ…そんなとこです。その前は、シエラとフィオのところにお邪魔してました。」

 「あら! あの二人のことも知ってるの? 元気にしてた?」

リスティの口調からして、シエラたちとは面識があるようだった。

 「あの…、"海の賢者"のことも知ってます?」

 「お会いしたことは無いわね。話を聞いたことはあるんだけれど…塔から通じる扉も、向こう側からふさがれてしまってるそうだから。」

スープをかき回し、一口味見をする。

 「うん、もうちょっとね。」

 料理しているリスティの後姿は、ロードの知っている姿そのものだ。

 「座って待ってて。こちらの分も、もうすぐ支度できますから。」

 「さっきレヴィが持っていったのは、向こうで食べるための?」

 「ええ、塔の人たちの分ね。」

つまり、イングヴィとマウロの分、ということだ。

 「リスティさんは塔には住んでないんですよね。いつから?」

 「ランドルフ様が亡くなった頃からよ。向こうに行くのは掃除とか、洗濯物の受け取りとか。向こうでしか出来ない仕事はあまり無いし。」

振り返って、彼女は複雑な表情で微笑んだ。

 「レヴィがそうしろって言うの。ランドルフ様が居なくなってからは、その…あまり、雇用環境も良くないですから。」

 (今の雇い主は、イングヴィか。…成程)

あの貴族然とした男の下で働くというのは、貴族の家に仕えるメイドのようなものだ。大変だろう。

 「お金は十分溜まってますし、長年の夢だった家も今なら買えます。辞めても良かったんですけれどね。」

スープをよそいながら、彼女は小さく呟いた。

 (夢…。)

そういえば、元いた世界ではじめて塔を訪れた時、レヴィは言っていた。「ようこそ、ぼくらの家へ」と。あれは、――そういう意味だったのか。

 (でも、レヴィのもう一つの夢は…。)

 「出来ましたよ。」

リスティが、湯気の立つ料理の皿を勧める。

 「今夜は二階の客間で泊まって下さいね。支度してきますから食べててくださいな。」

 「いただきます」

料理の味は、確かにリスティの作る味だった。


 二つの世界で、違うもの、同じもの。

 けれど、その差の小ささが、重なり合うようで重ならない微妙な距離が、ロードには逆に、違和感となって感じられるのだった。

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