第106話 黒の国への旅たち 帰れぬ旅路

それからエリンシアの屋敷では・・

「あら、エイルはお眠?」

 ゆったりとしたソフアですやすやと寝息を立ててエイルは眠っている。

「ふふ、義兄さま 今日は泊まってゆかれては?」


「そうさな お言葉に甘えよう 有難うエリンシア姫」

「はい どういたしまして」エリンシア姫は微笑んだ。


それから瞬く間に日々は過ぎ・・


見送られて 羽琴の姫・・エリンシア姫は旅立った


「エリンシア姫 叔母様」

「エリンシア姫」「姫様」


優しく多くの人に慕われてた姫 見送る者の中には 涙ぐむ者もいた 


「どうか 皆様 お元気で・・」

「義兄さま・・リアン様

どうか エイル・・エルトニア姫をよろしくお願い致します」


「叔母さまああ」ほろり・・

そして 涙を流すまだ幼いエイル・・エルトニア


リアンは前に進みでて、金の髪飾りを差し出す

「エリンシア姫さま どうぞこれを」


「まあ!有難うございますリアン様

あ、そうだわ これをどうぞ」


そう言って 荷物の中から 

小さめの持ち運べる竪琴をリアンに差し出す


「私が 以前、姉さまから頂いた物ですが

最近は羽琴しか扱わず あまり使わないものですから


リアン様も楽器はお好きでしたから」


「そんな・・いいのですか?」リアン


「ええ どうぞ」微笑んで リアンの手渡す


リアンはその竪琴を受け取った


「有難うございます エリンシア姫様」


そうして 集まった皆を見渡して

「叔母様!」

「あっ、エイル エルトニア」


抱きついてきたエイルを抱きしめて、額にくちずけをして 

そっとエイルのその幼い身体から手を放してから


「元気で健やかに ずっと祈っております」そう言い残して 白の国を去っていった


今度は エイルをそっと後ろから抱きしめるリアン

「大丈夫 何年かたったら きっとお戻りになるよ」


「うん わかりましたリアン兄さま」

鼻を赤くして まだ少し瞳に涙を残したまま

エイルはリアンに答えた



だが、しかし

運命は 羽琴の姫君の故郷である白の国への帰還を許すことはなかったのだった。

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