第86話 リュース公とセルトと・・

ある日

リュース公がセルト将軍の元に訪ねて来た


「これを・・セルト将軍」テーブルに小さな絵と切られた髪のひとふさを置く


「・・これは?」小さな絵には赤毛の二人の幼い子供と

金色の髪がリボンに結ばれ ひとふさ程


赤毛の女の子の方は 小さな白い羽が生えている


「男の方はウイル 女の子に見える子はテイナだそうです」

「女の子に見える・・とは・・?」


「両生体だそうです 白の国の人間の特質をエリンシア姫から

受けついだのです」


「白のエリンシア姫様のお子! 一体どうゆう事なのですか?」セルト将軍


「テインタル王女が夜遅く 私の部屋のバルコニーから訪ねてきました


ご自身の翼を使い 湖を渡って来られました

これを エルトニア姫に届けてほしいそうです


何でも・・アーシュラン様に以前 捕虜交換の時に会われて

頼まれたとか」リュース公


「・・一つ 告白する事があります エリンシア姫の流産した子は私の子でなく

先の黒の王竜の王(ドラゴン・ロード)アージェント様の子です


彼に頼まれました

エリンシア姫と結婚するか 子供と姫とテインタル王女を預かると・・」


「私はあの御方が好きでした」


「・・・・」セルトは驚き ただ黙っている


「まあ、貴方は 

以前 先の黒の王 黄金の王アージェント様に婚約者を奪われて

追放されて あまり よくは思ってはおられないと思いますが・・」


「私の婚約者  人族の娘リジャは アーシュラン様を産み 

 しばらく後に病で死にました いえ・・本当は病でなく毒殺だったと」


「リジャもまた可哀そうな娘でした 一時 奴隷商人に攫われて・・それから」

「その事は ご存じでしょう‥リュース公」セルト


「はい・・それともう一つ

この金色の髪は エリンシア姫の物です」リュース公


「まさか!」


「突然 逝かれたそうです あの御方は・・

苦しむ事なく その死に顔は 眠るようだったと


遺体は 彼女の夫アーサーという者の家の墓に埋葬されたそうです・・」


「・・可哀そうな御方です

最初の恋人は恋人の兄である前の白の宗主に殺され

先の黒の王アージェント様には 身体と心を奪われ


黒の王宮陥落の時には 兵士達に暴行され ヴァン伯爵にも


あげく・・巨人族の王の側室にされた


せめてもの救いは

あのエルトニア姫と 巨人族のアーサーという夫と子供達ですね」


「ところで、この小さい絵と髪の事ですが・・」と話かけたリュース公


その時 ガチャリとドアが開く


そこに立っていたのは アーシュランと白の国の武官リアン

リアンは蒼白になり 茫然として立ち尽くしている


ドアを開けたアーシュの方は 無表情で 感情が読み取れない

ただ 赤い焔の瞳だけが輝いている


「お二人とも・・」慌てて座っていた椅子から立ち上げるリュース公

目を見開き どうしてよいかわからないセルト

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