第84話 羽琴の姫君エリンシア姫

二人の屋敷 こじんまりとした屋敷 

そこに到着 ドアを叩く

「反応がない・・」何気に押したドアには 鍵がかかってない


「エリンシア姫 アーサー」呼びかける 

すると二人の幼い子供が泣きながらアムネジアに抱きつく


「?」きょとんとするアムネジア  赤い子竜は 何か異様な気配を感じ 

アムネジアの腕から 離れ 自分の翼で空中にとまっている


大人しくしているのは白鳥も同様


「あ・・アムネジア様ああ」抱きついたままアムネジアの名を呼ぶ


「ウイル・・テイナ・・どうしたの?」

「お母さまが お母様が・・」


「いったい・・?」アムネジア


「アムネジア様・・もう知らせを聞いたのですか? 

いや遊びに来られたのですね 早すぎる」まっ青のアーサーが言う


「ええ、この魔法画の絵の子達を連れてきて 皆で遊ぼうと・・」


「・・その大きな袋は 白と黒の国の食材と果実?」

「ええ・・?」アムネジア


「・・いつも有難うございます・・ですが 

エリンシアは・・エリンシアは・・」

アーサーの瞳から 涙が零れ落ちる


「ど、どうしたの?一体何が?」


「先程 エリンシアが突然倒れ・・そのまま息を引き取りました」


「エリンシアは あまり苦しまずに 逝きました

・・まるで眠っているようです」


「なんですって!!」


羽琴の姫君・・

エリンシア姫の遺体は まるで眠んているようだった


もう、あの優し気な美しいオッドアイの瞳は もう開く事がないのだ

「シア・・エリンシアああ・・」

アムネジアは 冷たくなったエリンシアに抱きつき 泣き叫ぶ


羽琴の姫君・・エリンシア姫の死


アムネジアは屋敷に泊まって 明日の葬式に参加する事になった


「喪服と寝間着を取ってくるわね この魔法画の子達も 返さないと・・」

泣きはらした顔のアムネジア


広間に置かれた 羽琴をそっと見る

羽琴 幾つもの複数の琴が重なり合った琴 


中心の大きな琴に扇のように斜めになった琴が幾つか重なってる 

扱いの難しいが とても美しい音を響かせる


エリンシアが微笑みながら琴を弾いていた事を思い出し

また涙が浮かぶ


「私は葬式の準備がありますから・・それから 頂いた食材は

今晩の食事にしますね」まだ目が赤いアーサー


「何か手伝える事は?」アムネジア


「召使達がいますから 大丈夫です 

有難うございます アムネジア様」アーサー


「これを・・アムネジア様」

以前エリンシア姫に上げた絵のうちの1枚


大人のアーシュとアルテシア姫とエルトニア姫が描かれた小さな絵


「・・これ?」

「‥貴方のお兄様が描かれてるから

生前 エリンシアに頼まれてました・・多分 その頃から 自分が長くないと

悟っていたのでしょう・・」


「・・有難うアーサー」

再び 空に翼を広げて 飛び立つ


胸に抱いた赤い子竜は アムネジアの心を知っているのか

心中を察したか


ただ‥黙って 大人しくして 抱かれている


そして 心配そうにアムネジアを見上げている


白鳥も同様だ


赤い子竜と一緒に抱いた小さな絵


「うっ・・うう・・」焔色の瞳には涙 嗚咽がもれる


赤い子竜と小さな絵を抱きしめ

アムネジアの瞳からまた涙が零れる


翌朝 ささやかながら葬式が執り行われた

参列者は アーサーと二人の子供

それにアーサーの叔父夫婦に友人達


家に仕える 数人の召使・・そしてアムネジア


「今日は有難うございましたアムネジア様」

「元気を出してね・・あの二人の子供達の為にも・・」アムネジア


「はい・・」アーサー


「・・下のテイナちゃんは 赤毛以外はお母様に似てるわね・・」アムネジア


「面立ちだけでなく・・テイナは両生体で 白い羽もありますよ」アーサー

「!」驚くアムネジア


「生まれた当初は 女の子とばかり思っていたのですが・・」アーサー


「・・白い羽は 他の者達に知られたら エリンシアのように切り落とされるかも

知れないので 秘密にしてます」


「アーサー殿 お願いがあります」アムネジア

「何でしょう?」


「ある人に 子供達の小さな肖像画を贈りたいの


出来ればテイナちゃんの白い羽も描き添えて

絵心のあるランデイに頼むわ

彼ならテイナちゃんの秘密も守ってくれるだろうし」


「それは構いませんが ある人とは・・?」アーサー


「テイナちゃん達の異父姉妹 彼女の子供である白のエルトニア姫」アムネジア


「わかりました では・・他にも私からお願い出来ますか?」アーサー


エリンシア姫の髪をひと房切り取り リボンで括ってアムネジアに渡す

「これを・・白のエルトニア姫に・・」

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