第54話 エイルの嘆願 セルト参戦

「ダメ・・そうしたら 今度は僕が許さない アーシュ」

エイルが声を絞り出しながら言う


「アルテイア姫・・アル

テインタル王女の身体には 呪いの文様の入れ墨が

彫られてるんだ・・巨人族の王に従う事と・・アーシュを殺すようにと」


呻くように床に臥したまま 再び絞り出すような声で エイルは言う


「!」呪いの入れ墨の文様?驚いて テインタル王女の方に振り向く

彼女の破れた服から見える 呪いの入れ墨の文様 


「アーシュラン様」

テイ、テインタル王女 アムネジアを背に庇うアルテイシア

アルテイシアの瞳には 涙が浮かんでいる


「情けは無用よ・・アル、会えて嬉しかった 例えこんな形でも

殺しなさい! アーシュ兄様!」テインタル王女・・アムネジアの瞳が焔色に輝く


「炎の大蛇!」アムネジアが魔法を唱える


アーシュの身体が炎の竜に巻き付かれ 燃え上がろうとしている

「・・」身動きも 呪文も唱えず 

考えてるように 目を閉じるアーシュ


「だめええ!」エイルが叫ぶ

「み・・水の精霊! 水竜の女王 この水の女王が命じる! 炎の大蛇を消せ!」

アルテイシアは 慌てて 水の魔法で 炎の大蛇を消す



そこに 今度はドアを開けて 竜人セルトが飛び込んできた


「ご無事ですか! 火竜王(サラマンデイア)様 

 アルテイア姫様 エルトニア姫は?」大声で叫ぶ


アルテイシアの背に庇われたままのテインタル王女ことアムネジアと

傍には 無言で睨みながら立つアーシュの姿


扉があいたままの牢屋の中には 

床に倒れて どうにか上半身だけ起こすエルトニア 


エルトニア姫の方は大怪我を負っているようだ

彼女の血が流れている


「これは一体?何事ですか? 火竜王(サラマンデイア)

アルテイア姫様?」 


アルテイシアも 茫然としたまま 背中で テインタル王女アムネジアを庇ってる

アルテイシア姫が背で庇っている娘は 魔法の剣を手にしている


その顔は 亡き先の黒の王妃アリアンのもの・・だが まだ年若い

アルテイシア姫やエルトニア姫と同じくらい


瞳は・・瞳の色は 火竜王(サラマンデイア)の証 アーシュランと同じ

赤い宝石のような不思議な輝きを現す 深紅の焔色!


黒の王宮にある 先の黒の王 黒の王達

家族の肖像画を思い出すセルト


家族の肖像画・・そこに描かれていた 

黒の王妃に似た まだ幼い美貌の少女 王女 テインタル王女


「まさか、アルテイシア姫の背に庇われている娘は・・」とセルト



「セルト・・セルト将軍 貴方の事は覚えているわ」テイ


「あの時 あの時の昔話よ 」


「敵である巨人族の王達 魔法使いに心を封じられて 幼い私の目の前で

父王アージェントの首を斬り落とした」

「私の弟 まだ赤ん坊だった あの子も・・」


「ああ、竜人の守護者アレルドもだった 彼も殺した」テイ、テインタル王女


「貴方はアーシュ兄さまの御蔭で 解放された よかったこと」

テイの綺麗な赤い瞳から涙が零れる


「・・・・・・・」「・・・・・・」アルもセルトも言葉を失いただ、黙っていた


エイルは声をかけた後 気を失い 

当時の記憶は無く、その時は人質として敵国にいたアーシュは静かに聞いていた

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