第15話 提案

 藍とりんは午後六時を少し過ぎた辺りに戻って来た。


 僕は再びお茶と葉っぱパイを出す。二人とも少し目の辺りが腫れて赤くなっていた。それを見て僕も少し目頭が熱くなってしまった。


 そして僕は藍に提案の内容をした。


 「そんな事……いいんですか?」藍は驚いている。


 「ええ。そちらが良かったらの話ですが」


 「私はとしてはその提案はとても嬉しいですけれど……りんはどう?」


「へーき! おじさん、とても優しいし」にこり、と笑いながらりんは答える。


 「いえ、そんなすぐに決めなくてもいいんです。じっくり家で話し合ってもらって……そもそも、保護者の同意が必要ですから」


 「ああ、そうなんですね。でも本当にいいんですか?すごくご迷惑を掛けますよ」心配そうに藍は言う。


「全然大丈夫です。妻もいますし、娘も独り立ちして寂しくなってたところなんです。それに……」ここで二人を黙って見送りたくはなかった。お節介かもしれないけれど、手を差し伸べたかった。


「それに?」藍は言葉に詰まった僕を不思議そうに見つめる。


「……いえ、なんでもないです。」


「……そうですか。家に帰って母と相談してみます」藍はそう言った。

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