第5話 「美少女グランプリ優勝の瞬間」
俺は周りの女性たちを見た。
皆んな若い! 少女だ!
しかも皆んな、めっちゃカワイイんじゃないですか!
特に目に付くのが甲冑を着た少女だ。
日差しが大きい兜で顔の上半分は見えないが、雪のような白い肌に美しい顎のライン、紅いクチビルがとにかくカワイイ。
鼻すじもすっと通っていて、素晴らしい。
長く艶やかな金髪が、美し過ぎる。
美少女確定だ! 美少女グランプリ優勝だ!
まあ、一番目立つのがその甲冑、鎧なんだけどね。
鎧のデザインは、ファンタジー色の強いギリシャ神話の本で見たアテナの挿絵やラノベでよくある女戦士のスカート使用の鎧だ。
女性用スカート付き甲冑なんて基本おしゃれ好きなコスプレ用で、実戦物は初めて見た。
白が基本で、赤と金色のラインがアクセントのメチャクチャ豪勢なデザインだ。
兜[ヘルメット]や手甲[ガントレット]そして脛当て[グリーブ]もお揃いで、しかもマントまで同じデザインで、一式セットでのお買い上げのようだ。
装甲の厚みが薄くてあまり実用的に見えないし、身体にピッタリなのでオートクチュールかも知れない。
まさにお嬢様が着るような鎧だ。
なにより汚れや傷がまったく見当たらず、輝いているかのような白さで手入れがしっかり施されているのは、彼女は綺麗好きなオシャレさんだからかもしれない。
彼女の横に長い剣が置いてある。
ロングソード……いや、細いのでレイピアという剣かも?
レイピアは十六世紀辺りの剣だから、この異世界の年代はソレくらいなのかな?
鎧の出来栄えを見てもソノのくらいの時代以降の文化だと思われる。
彼女は戦士、いや、この出で立ちは騎士だろう。
ずっと手を男にかざして蘇生魔法をかけている。
……彼女が一番必死なのを感じられる。
……
もう一人は、少し露出が多い美少女だ。
胸元が見える! 大きい‼︎
何カップなのかは分からないが、学校のクラスにも見当たらないくらいのサイズだぞ!
彼女も必死で魔法をかけているので、ガン見しても気付かれないだろう。
いけない! 真剣な人を汚すのはダメだ。
この娘も白が基調で、布で出来ているようだ。
袖が、振り袖みたいにフリフリしてカワイイ。
下半身はゆったりとしたユルホワなズボンだ。
全体的にアラビアンナイトに出て来そうな出立ちに見える。
所々に金色の刺繍がしてあり、こちらも豪華でオシャレで可愛い。
首や手首に高そうなアクセサリーが付いている、こちらも甲冑の少女と同じくお金持ちのお嬢様なのかもしれない。
太ってはいないのに全体的に肉感を感じるのは、おっきい胸のせい?
茶色の髪は少し癖っ毛みたいでカールしている。
大きめのカチューシャで前髪を上げている。
おでこを出しているので大人っぽく見えるけど、逆に子供っぽくもある髪型だ。
大抵のキャラ編成の場合ならばホアンホアンのユルイ位置の娘なので、このパーティーでもそうあって欲しい。
背中に……琴か! 小さな琴がある!
古代ヨーロッパ史の本の挿絵とソックリな形だ。
この娘は吟遊詩人、バードなのか! 楽器を使って唄を歌って術とか出すのか?
どんな戦い方なのか、見てみたい。
……
最後のひとりは見るからに魔法使いだ。
ダーク系のフード付きのマントを羽織っている。
ちっこいな……小学生の高学年辺りの冒険者なのか? まさかね。
髪は日本人に近い暗い栗色だが、顔立ちは幼い白人の女の子のような、天使顔だ。
顎のラインに幼さを感じる……かわゆいなぁ~デヘヘ……
ち、違うぞ!
俺はロリコンじゃない! ふ、普通に子供は可愛いなっと!
マントの中の服もダーク系でビジュアル系だ。
手に持っている杖は、木や枝のままではなく加工された格好イイ杖だ。
やっぱり後方支援なのかな? 詠唱が長い魔法を唱えそうな雰囲気がある。
魔法使い……まさにファンタジーの定番、醍醐味だ!
天使のような顔で、黒魔法の使い手だったら……萌えるぜ!
ツンデレやドジっ子なら更に倍、萌えるぜ‼︎
……
あっ、小さい! 背中に羽根が!
妖精だ! 妖精が皆んなの周りをクルクル飛んでいる!
小さかったので最初、存在に気付かなかった。
羽根の形はトンボに近いか。
羽根以外は人間の女の子のままで、大きさは日本のお人形ではなく、アメリカンサイズのお人形とほぼ一緒だ。
凄い、感動した! この世界には本物の妖精がいるんだ!
今は甲冑少女の肩に止まって心配そうに男を見ている。
俺も身体を手に入れたら肩の上に……いや、プニョプニョ触ってみたい!
羽根以外の最大の特長は、セミロングのピンクの髪の色だ。
服のワンピースもピンク系で、しっかり仕立てられている。
ミニで太ももが出ているのが高得点だ。
歳も皆んなと同じくらいに見える……カワイイ……
皆んなカワイイ! 皆んなハイレベルだ!
なんて羨ましい男なんだ……を引き継ぐ俺も羨ましい男だ‼︎
俺は妄想を止める事が出来ず、ドンドン肥大化して、もうお腹いっぱいだ!
ありがとう神様!
「うむうむ」
しまった、考えている事が丸分かりだった。
俺は神に簡単に心を許してしまった事を恥じいた。
気を許したら、また酷い目に遭うからな。
なにしろ俺を殺した殺人鬼なのだから……
未だに少女たちは蘇生魔法を唱え続けている。
あれ? そういえば彼女たちの声が初めから聴こえていないのだが?
「今のオヌシは魂じゃからの、見えぬと困るから視覚だけ開放したのじゃ」
確かに困る。
それじゃあ、神の声は……神ゆえに聞こえるって事?
まあ、愚問だよな。
俺は自己完結に納得して、彼女たちの様子を見続ける事にした。
まだ続けている。
懸命に魔法を唱えている。
この男、こんなに愛されていたのか。
……
なぜ、この男は蘇らないんだ。
蘇生させる魔法だから難しいのか?
「彼は蘇らないぞ」
どうして?
「彼は新しい人生を過ごす事に決めたのじゃ」
なぜだ⁉︎
「人、それぞれということじゃ」
納得いかない。
こんな美少女たちに囲まれて、しかもこんなに一生懸命、蘇生魔法を唱えてもらっているのに……こんなに必要とされているのに、なぜなんだ?
「コヤツにそのまま飛び込んで行けば、転生する事が出来るぞや」
この男に転生する事が出来る……
俺はこの男、青年の顔をマジマジと見た。
結構イケメンじゃないか……俺に似てるかも……自分の顔はもう覚えていないんだった。
……俺、コイツになるのか……
どわっ!
その時、なにかがぶつかって来て脇に押し出された。
周りを見渡したが、なにもない。
確かになにかにぶつかった気がしたが、なにも見えないので気のせい、神の悪戯だと思い無視した。
なにより目の前の事の方が重要だからだ。
俺は再び彼の真上に来て全身を見た。
いざとなると緊張感バクバクであるが覚悟を決めなくては。
……いったい、これからどんな冒険が待っているのだろう……
その時、目の前の男が目を開けた!
わおぉ‼︎
俺は驚きの余り、バクバクがドッキンドッキンに変わった。
男は周りをキョロキョロと見回して立ち上がろうとしたが、身体が上手く動かせず僅かに上半身が上がっただけだ。
目覚めたのを知った少女たちは、いっせいに男を抱きついた。
いったいどういうことだ?
蘇生魔法が成功したのか?
それとも、まだ死んでいなかったのか?
……それより俺の転生はどうなった?
焦っている俺の真上から女性の声が聞こえた。
「上手く転生出来たみたいだな」
見上げると、薄い衣を着た女性が上空から降りて来た。
女性は神と向かい合う形で止まった。
少し勝気そうな姉ちゃんだ。
ア、アンタ、誰だ⁉︎
「アタシは、神だ」きらりん!
"ぎゃん‼︎"
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