第8話 世間は広いようで狭い
「ラアルサソリだと!?」
アナリスはデボを肩からおろしリオラに走り寄る。
「な!?おい、いきなり何すんだよ―」
リオラの腕を掴み、短剣がかすってできた傷口を見る。
「―ラアルサソリの毒は致死性だ。傷口に毒が入り込むとマンモスだろうが即死するほどの強力な毒のはず…。」
アナリスは恐る恐るリオラの顔を見る。
「―なぜおまえは生きているんだ?」
「なぜって言われてもなぁ…。別にこんな切り傷大したことないぞ?」
リオラは腕をグルグルと回し、大丈夫アピールをする。
それを見てクロンは「心配させないで!」とでも言うように髪の毛を引っ張る。
(こいつは一体何者なのだ…)
「おい、貴様の名を教えろ。」
「ん?あぁ、俺はリオラ!リオラ=イグリードだ!」
「っ!?イグリードだと…。お前もしかしてゲオルグ隊長の―」
「おっ!あんた父さんのこと知ってるのか!?」
父の名が出てリオラは嬉しそうに目を輝かせアナリスを見る。
「ふふ、そうかお前が隊長の…。なら無茶苦茶なのも納得だな。」
どこか懐かしそうにアナリスがつぶやく。
「私はゲオルグ隊長の元部下だ。隊長には大変お世話になった。」
「そっか、あんた父さんの部下だったんだな。…っていけねっ!さすがにそろそろ行かないと。じゃまた今度話聞かせてくれ。」
リオラは授与式のことを思い出し、別れを告げ路地裏を走り去る。
「ちょっ、まて…」
アナリスは呼び止めようとするがリオラの背中はもう遠くに見える。
「はぁ…最後まで自分勝手なやつだな。まぁあれだけ騒がしいのであれば嫌でもまた会う機会はくるだろう。―あの人の死の真相も伝えなければ…。」
アナリスはこぶしを強く握りしめ、遠のくリオラの背中を見つめる。
「な、なんなんだよアイツ…」
チャケスは今起こった出来事が理解できないという様子で呆然と座り込んだまま固まる。
――不思議なことにその顔には少し安堵している様子もあったが。
※ ※ ※ ※ ※
「だからー、ルークってやつが中にいるかどうが確認するだけだって言ってるだけだろ!」
「だめだ、だめだ!ここから先は関係者以外立ち入り禁止だ!」
「ちぇっなんだよケチっ!」
あっかんべぇっと舌を出しながらその場を離れる。
「やべぇ、ルークがいねぇと中に入れてくれねぇ。」
急いで聖堂まで来たリオラだったが入り口で門前払いをくらう。
「あーあ、授与式受けられなかったなぁ。帰って姉ちゃんになんて言えばいいんだよ…。」
肩をがっくりと落とし帰ろうとする。
「キュイッ」
そんなリオラの髪の毛をクロンが引っ張る。
「痛い痛い。引っ張んなよ、クロン。いったいどうしたって…」
クロンが見ている方向から駆け寄ってくる人物がいる。
「リオラっ!」
「ルークっ!?よかったぁ、まだ中に入ってなかったのか。」
走ってくる人物がルークだとわかりリオラは安心した。
「おまえどこ行ってたんだよ。こっちは大変だっ―」
「ふざけんなぁ!」
ルークは走ってきた勢いのまま思いっきりリオラを殴り飛ばした。
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