Cross Destiny ~滅びる世界と届かぬ想い~
toya
第1話 『神が創りし生命(いのち)は運命を奏でる』
―荒れ果てた地に男女がいる。
「な、なぜ…。なぜお前が、、、、」
―男が問う。
「お前は、いったいなにをしたのかわかっているのかっ!!わたしは、、」
「ちょっとまて!これはちがっ」
女はうつむく。
「――もういい……お前などはじめから愛さなければよかった、、」
そして何かを決意したように女は男を見つめる。
その目には様々な感情が映し出されている。
「っ!?や、やめろ、そんなことをしたらお前もっ!」
グサッ
女は自分の心臓を貫いた
「…これで終わりだ、、、裏切者…」
女は地面に崩れ、そこには赤い血が広がる。
「…な、なぜこんなことに、、俺はただお前と……、レシアァ!」
………
…オラ…、リオラ!いつまで寝てんの!早く食事して出ないと授与式に遅れちゃうわよ!
「うぅー、あと5時間だけ…」
「それを言うなら『あと5分』でしょっ。もうバカなこと言ってないで早く支度しなさい!」
声の主であるリオラの姉サテラは近づいてきてリオラが被っていた布団を奪い取る
「ねぇちゃんの鬼―、あくまー、だからいつまで経っても結婚でき…」
ポキボキッ
「うん?なにか言った?」
「い、いえ!なにも言ってないっす。」
(危ねぇ、あやうく永遠の眠りにつくところだった。)
リオラは冷や汗をぬぐい、着替えをすますと食事が並ぶテーブルにつく。
「ゲッ!またテライモのスープかよー」
「こーら、文句言わないでちゃんと食べなさい。好き嫌いしてたらお父さんみたいな立派な騎士になれないわよ?」
サテラは先に食事を済ましたらしく、リオラの向かいで何かを縫っていた、
「大丈夫だって!今日の授与式ですげー天賦(ゲイン)もらって父さんなんてすぐ追い抜いて騎士団長になるからさ!」
「はぁ~あんたお父さんのすごさがぜんっぜんわかってないわよね…」
サテラは言うのを諦めたように手元に集中する。
リオラの父が死んだのはリオラがまだ母のお腹の中にいるときだった。
突如現れ国を襲った魔物と闘い、死んだ。最終的にその魔物を滅ぼしたのは父の死後、駆け付けた騎士であった。
「だって父さん無駄死にじゃん…」
「もう、なにぶつくさ言ってんのよ。そういえばあんたまたうなされてたわよ。」
「あーそういえばまたあの夢見たんだった…」
嫌なことを思い出し、顔が少しこわばる。
「あの夢?あぁこの間からあんたが言ってる女神レシア様のやつ?」
「そーそー。なんかむかし本で見た女神みたいな格好した人がこうやって自分の心臓刺して血がドバァーって」
リオラはフォークを自分の胸に刺し、夢で見た光景を演じてみる。
「もー、あんた食事中にやめなさいよ。でもあのレシア様でそんな夢見るなんてあんた変わってるわね。普通女神様っていったらもっと幸せな存在よ?よくあるレシア様のおとぎ話なんてどれもハッピーエンドなのに。」
サテラは乙女の顔でそう話す。
「あー、そういえばむかし母さんに読んでもらったっけ?なんかつまんなくて覚えてないなぁ」
「うそでしょ!?レシア様のおとぎ話なんて5歳児でも知ってるのに。もう仕方ないわね。簡単に話してあげるわ。」
「誰も頼んでないんだけど…」
「黙って聞きなさい。」
どうやらリオラの意思は関係ないようだ。
そしてサテラは裁縫道具をテーブルに置き、語り始めた。
『むかしむかしまだ人間がいなかったこの星に、三人の神様が舞い降りました。神様たちは毎日の生活に退屈してしまいなにかすることはないかと考えました。そこで一人の神様が
「生き物に知能を与えて僕たちの話し相手にするのはどうだろうか?」
と提案しました。
この提案にほかの神様も賛成し、さっそく様々な生き物に知能を与えはじめました。
知能を与えられた生き物たちははじめこそ一緒に暮らしていましたが時が経つにつれ、いくつかのグループにわかれて暮らすようになりました。
それが、エルフ・ドワーフ・オーク・ヒトです。どの種族も三人の神様を崇拝し、神様も大変満足していました。
そんなとき神様の一人、全知全能のネクロスはヒト族の少女に恋心を抱くようになりました。
しかしそれをよく思わない生死の神ソロモンは…』
「熱く語ってるところ悪いんだけど…」
「もー、なによー、これからがいいところなのにー」
話を止められたサテラはほっぺを膨らます。
「授与式って何時からだっけ?」
「へ?」
リオラの問いかけに、サテラの顔が青白くなる。
「ば、ばかっ!もうとっくに出なきゃいけない時間過ぎてるわよっ!早く行きなさいっ!」
フォークを取り上げられ、背中を押される。
「だってねぇちゃんがずっとしゃべってんだもん。んじゃ、いってきまぁーす。」
玄関のロングソードを背負い扉に手をかける。
「あ!ちょっと待って!」
「ん?」
呼び止められ振り向く
「これをこうして。うん!よしっ!」
リオラの手首に布で織られた紐が結ばれる。
「なんだこれ?」
「おまもりよ。前にお母さんから作り方教わったから作ってみたのよ。あんたむかしから外で遊んでは無茶してケガしてたから。」
サテラは照れくさそうに眼をそらす。
なんかこっちまで恥ずかしくなってきた。
「あんがと」
「――ほら!頑張ってきなさい!」
バチンッと背中を叩かれる。
「うんっ!行ってきまーす!!」
キィー バタンッ
………
扉が閉まると部屋には静寂が訪れる。
「お父さん、お母さん、どうかあの子を見守ってあげて…。」
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