第5話「朝の一幕」

 当たり前の話であるが、若い組織は若い人材が抜擢されやすい。

 何しろ守るべき伝統が存在しないので、人材を抜擢する基準のうちで「能力」の比重が大きいからだ。

 後の銃士長となる英雄バジルや外務卿ユーリも、そんな新進気鋭の人材として小隊長を命じられていた。


GM:さて、皆さんが談笑していると、詰所に設置されたオルゴールの旋律が流れます。夜勤と交代の合図ですね。


バジル:じゃ、行くかと腰を上げよう。


GM:皆さんと入れ違いに、夜勤番が奥からぞろぞろと出てきます。その中で、大柄なドゥアン剛なる人の銃士と、その肩に担がれてジタバタしながら金髪の銃士が出てきます。



「離せ! まだ報告書が残ってるんだ!」

「いい加減にしろこの仕事中毒ワーカーホリック! お前は急ぎでもない仕事のために何日徹夜する気なんだ!?」

「僕は人の何倍も頑張って、彼女を迎えに行かないといけないんだ! こんなところでサボる訳には!」


 周囲の銃士や市民たちは、やれやれまたかと気にも留めない。

 ユーリ・ブランシュは1か月前、入隊と同時に小隊長を拝命した出世頭であるが、仕事に対してストイックすぎるきらいがあり、右腕のポルトスにベッドに縛り付けられる(比喩ではなく、本当に縄で固定される)のが恒例行事になっている。


「取引だポルトス! 家に貰いもののダイワ酒がある。今見逃してくれたら、それを進呈しようじゃないか!」

「俺をみくびるなよ? ……その話、詳しく聞こうか」


一同:(笑)


バジル:なんか、色々大丈夫なのか銃士隊(笑)?


GM:能力自体は優秀なので、年明けに起こった毒を使ったテロ事件を見事解決しています。


レイ:なんでそこまで仕事をしたいんですか? あと、私もダイワ酒に興味が……。


GM:その辺は色々事情がありまして。ダイワ酒は、東方のダイワ群島国で作られているお酒です。最近王都の庶民でもちょっと頑張れば飲めるようになりました。


レオン:それは良いのですが、目の前で行われている買収行為を放置して良いんですか?


GM:騒ぎを聞きつけて銃士長、銃士隊の隊長ですね、が2人を注意しますよ。


レイ:銃士長はどんな人ですか?


GM:頬のこけた40代のおっさんです。口癖は「みんなで幸せになろうよ」です。


レオン:ああ、モデルは"あの人"ですね。そりゃ有能だ。周囲はたまったもんじゃないでしょうが(笑)




「君たち。今日はもう店じまいだよ。ユーリ君、体調管理をちゃんとできないなら、見習いからやり直しもらうから」


 痛いところを突かれた金髪の隊長は、「すみません、気を付けます」と首を垂れた。

 詰所を出てゆく2人を見て、銃士長オーバンは、感慨深げにつぶやいた。


「……若いっていいねぇ」



バジル:なんか、あののんびりぶりは親近感がわくな(笑)


GM:そんなことを言っていると、「ほら、君たちも警らの時間じゃないかな?」と追い立てられますよ。


レオン:まあ、給料分の仕事はきっちりしましょう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る