魔王を倒してしまえば
「名誉なことじゃないか、シェリスタ!」
ソーニャがそう言って励ましてくれる。私は単純にそれが嬉しかった。細かいことは気にならなかった。
と言うか、考えられなくなってたのかもしれない。
戦支度を整え、いよいよ皆で魔王の城砦へと再び攻め入る。
斥候からの報告では、魔王らはいつもと変わらない様子だって。ドゥケとポメリアの姿は確認できなかったけど、それは逆に二人がどこかに逃げ延びて隠れている可能性があるって。だから敢えていきなり城砦の正面へと躍り出て、私とアリスリスとで正面突破を図り、他のみんなはその援護っていう形になった。私たちがそうやって総攻撃を仕掛ければ、ドゥケとポメリアが無事ならそれを見て合流するかもしれない。
でも、前回はみんな無事に帰ってこれたけど、今度こそはもう無理だろう。ドゥケがやったのと同じように私もキスでみんなに<バーディナムの加護>を与えても、今回の目的は魔王討伐だ。女の子たちを助けたら一目散に逃げだすっていうのとはわけが違う。
……あれ? そう言えば、魔王って、神妖精族の女の子たちをあの塔に閉じ込めて何してたんだっけ? 何のためにあんなことしてたんだっけ?
……まあ、いいか……とにかく魔王を倒してしまえば全部終わるんだ。
魔王を倒して、平和を。王国に安寧を。そのために私は騎士を目指し、そしてこうして勇者になったんだ。
行くぞ! 見ていろ魔王! 人間の力を! 今こそ正義の鉄槌を下してやる!!
そうして私達は、王宮付きの魔法使いの転移魔法により、魔王の城砦へと転移した。リデムの魔力を節約するためだ。
「行くぞ!! 総員死力を尽くせ!! 王国の未来はこの一戦にかかっている!!」
ライアーネ様の号令により、
「うおおおおおーっっ!!」
と鬨の声を上げて突撃する。前回は退路を確保するために支援に徹してたリデムも今回は攻撃魔法に全力を注ぐ。
他の部隊も合流し、同じように突撃する。
私とアリスリスはその先頭に立ち、真っ先に守りを固めていた魔族の群れに突っ込んだ。
体は羽のように軽く、私の思うままに動く。一匹一匹を倒すのが精一杯だった以前が嘘のように、一薙ぎするだけでスケルトン兵もゾンビ兵も、面白いように蹴散らせる。
「があああーっっ!!」
獣みたいな雄叫びを上げながらアリスリスも魔族を薙ぎ払っていく。その動きがまた獣のようだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます