勇者と巫女の出会い
どうして
でも、だから余計に気になってしまった。
「ひょっとして神妖精族の巫女ってそういう形で<勇者>と出会うの?」
と、思わずリリナにも尋ねてしまう。
だけどそれには、彼女は首を横に振った。
「どんな風に出会うかは、それぞれだと思う。私とアリスリスはそうだっただけ…」
やっぱり話し方もそっくりだ。
「そうなんだ…」
とは応えつつも、正直、私は上の空だった。リリナのことが気になってしまって。
そうやって軽く話をして、
「ありがとう。話が聞けて良かった。じゃあ私は鍛錬に行くね」
と締めくくって席を立った。
するとアリスリスも立ち上がって言う。
「私も。体が鈍っちゃうから」
「じゃあ、一緒に」
私が応えると、リリナが「いってらっしゃい」と見送ってくれた。
「体がうずいて仕方ないんだ」
鍛錬場に向かう途中、アリスリスがそんなことも言いだす。でもそれは私も同じだった。私も、体の奥で何かがざわめく感じがしてじっとしていられない。
いやそれは私やアリスリスだけじゃないのか。
なにしろ、決められた鍛錬でもないのに、
正直みんな、焦ってるんだと思う。早くドゥケとポメリアを助けに向かいたくて。
もっとも、二人が今でも生きてるっていう確証はない。だけどみんな信じてる。二人はまだ無事だって。
「お、来たね」
ソーニャとテルニナとアリエータが、汗を拭きながら迎えてくれる。
「じゃあ軽くもんでやろう」
と言ったのはソーニャだった。私も、
「お願い」
って応えてた。
「アリスリスにはこっちが胸を借りることになるね」
テルニナとアリエータはアリスリスに向かって言った。
「望むところよ」
全員、木の剣を手にして、それぞれ構える。柔らかい木でできた剣だから大きな怪我はしないはずだけど、鉄の棒が芯として入ってるから、鍛錬用の革の鎧を着てても当たれば結構痛い。
「いくよ!」
ソーニャが声を発して、
「応!」
と私は応えた。一気に踏み込んでくる彼女の剣を受け流し、逆に打ち込む。でもソーニャは、肘で、剣を持った私の手を受け止めた。そしてがら空きになった私の胴に蹴りを叩きこむ。
咄嗟に体を引いて威力を相殺する。だけどずしんと腹に来た。
「くっ…!」
さすがは先輩。私もそれなりに強くなったと思ってたけど、一筋縄ではいかないか。
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