始まりの日 2

ヘックション!!!


桜色の風が吹く、4月―。


今日が光明高校、入学式だ。新しい制服に身を包んだ俺は、新たなる生活に心を踊らせたのだが……4月と言えば、スギ花粉だ。


最悪すぎる。くしゃみが止まらない。


この季節は必ず装備する箱ティッシュを片手に電車に乗りこむ。


光明高校は地元からかなり遠いため、しばらく電車に揺られることになるだろう。やはり朝の車内は人が多かった。


きっと、大きな駅に行けばさらに人が増えるだろう。



「これが毎日か…」



軽くため息を吐くと、俺はイヤフォンを付け、流行りの曲でいっぱいになったプレイリストを開いた。


流行の曲などを勉強し、クラスのメンバーに話を合わせなければならない。そのためにはこれも必要かことだ。


だが、どれも好きにはなれない。


いつだって俺はアニソンやボカロしか受け入れられない。


流行りのラブソングだの、ネットで流行りすぐ消えてしまうような曲は好みじゃない。


だが、仕方ないのだ。俺はこれからきっとこんな日々を続けるようになるのだろう。



俺は電車の窓の外を見た。



こんなことに意味があるのだろうか…いや、考えるな。青春のためだ。俺はアニソンのプレイリストを削除するのだった。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



電車に揺られること数十分。乗り換えをし、俺は光明高校駅に到着した。駅を出て、数分歩けば光明高校だ。


光明高校は、全校生徒600人の進学校で偏差値も割と高い。


受験勉強が無事終わったことを再認識すると、自然と安堵のため息が出てしまった。


まぁ、めちゃくちゃ勉強したからな。(勉強だけでなく。)



周りを見渡すと、同じ光明高校の制服を着た生徒が多く見えた。


だが、やはり見知った顔はない。どれもこれも知らない顔だ。当たり前の話なのだが、やはり気になってしまう。


これでいい。誰も俺を知らないこの環境こそが俺のリスタートにふさわしい。


だが、ただのヲタクだった俺が、誰も知らないこの社会でいきなりやって行けるのだろうか。それはかなり不安である。



それでも俺は意を決して、校門に足を踏み入れた。


校舎はとても大きく、外装はとても綺麗だ。校庭も広く、緑も多い。パンフレットや学校見学で何度か見たが、何度見てもその凄さに圧倒される。



「ここが光明高校か……やっぱ、すげぇな…」



「そうね…ここの校舎は確かにすごい。まるでライトノベルね」



俺の独り言に、突然の返事がきて声の主に顔を向ける。


右後ろから現れたのは、1人の少女だった。



茶色がかった髪をサイドにまとめた綺麗な髪。桜色の小さな唇に、吸い込まれそうな大きな瞳。鼻はツンと高い。微かに染ったピンク色の白い肌。かなり整った顔立ちだ。誰がなんと言おうと美少女だ。


こんな美少女が突然話しかけてくるなんて…



「そ、そうだな…って、え?ラノベ!?」



俺の反応には目もくれず、少女は何も言わず昇降口の人混みの中へと消えていってしまった。



「なんだったんだよ…」



ため息を吐きつつ、少女が向かっていった昇降口へと歩いていくのだった。


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