現実と異世界が交差するバトルロイヤルに巻き込まれましたが、どうやら俺は最強の力《攻撃範囲特化》を引き当てたらしい~

サケ/坂石遊作

第1話 プロローグ


【"空"を司る天使ルゥから、Wonderful Jokerへの招待が届いています】



 ビルの屋上から落下した節也せつやの瞳に、不思議な文言が浮かんでいた。

 あともう少し、ほんの一瞬経てば、地面と激突して死んでしまう筈だった。


 だが、何故か節也は――宙に浮いたまま静止していた。


「なんだよ、これ……?」


 意味が分からない。

 死んでいない? それは助かるが……一体何が起きている?


「時間が、止まっている……?」


 辺りを見回せば、そう表現するしかない光景が広がっていた。

 ビルから落下していた自分の身体は静止しており、周囲の景色も止まっている。空の雲は動いておらず、地面を歩く人々の姿も停止していた。



【招待を受けますか?】


 【YES】  【NO】



 瞳に映る文言が切り替わる。

 まるでゲームのテキストみたいだな、と一瞬思ったが、すぐにそんな暢気な考えは消え失せた。――目の前に、真っ白な少女が現れたからだ。


「ふわぁ……ギリギリ、セーフ」 


 その少女は眠たそうに欠伸をしていた。

 真っ白な肌。真っ白な髪。真っ白な服。そして――真っ白な羽。

 宙に座っているように見えるその少女は、この世界で唯一、静止していない存在だった。


「お、お前が、これ・・をしているのか?」


「ん。……お空は、私のテリトリーだから」


 何を言っているのか全く分からない。


「招待……受けて」


 少女がのんびりとした口調で言う。


「招待って、言われても……」


「受けなきゃ……死ぬけど」


 少女が眼下に広がる光景を一瞥した。

 再び時が動き出せば、節也は頭から地面に落下するだろう。この現象を目の前の少女が引き起こしているのだとすれば、少女は節也の命を握っていることになる。


「……貴方には、まだ、やるべきことがある筈」


 困惑のあまり沈黙する節也に、少女は言った。


 ――そうだ。


 少女の言葉に、節也は使命を思い出す。

 確かに、節也にはやらなくてはならないことがあった。


 ――俺は、妹を探さなくちゃいけない。


 一年前。行方不明になった家族のことを想起する。

 たった一人の家族だった。彼女が消えた謎を、節也はどうしても追わねばならなかった。


 眼前に浮かぶ文言を改めて見る。

 招待を受けるか否か。節也は覚悟を決めて、答えた。


「――【YES】」


 瞬間、ぶわりと視界が広がる。

 正面にあったビルの側面や、直上にある空、直下にある地面、全てが新しい何かに生まれ変わる。まるで自分を中心に、世界が再構築されていくような不思議な光景だった。


【ようこそ! Wonderful Jokerへ!】


【あなたは307人目のプレイヤーです!】


 瞳に新しい文字が浮かぶ。


「ふわぁ……これから、よろしく」


 世界が再構築される中、少女だけは依然としてその姿を保っていた。

 少女が眠たそうに瞼を擦る。その間にも、節也の瞳には新しい文言が記されていた。 



【Wonderful Jokerは、人間と天使がタッグを組んで戦う、異世界バトルロイヤル・ゲームです!】


【これから貴方を異世界へ転移します!】


【優勝者は、どんな願いでも叶えられます!】





※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ 

より多くの読者に、より長く本作をお楽しみいただくためにも、

本作を少しでも気に入っていただけた方は、

☆☆☆を★★★にするなどで応援していただけると、ありがたいです!


作者のモチベーション向上のためにも、ご協力お願いします!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る