第19話 外商投資産業指導目録とはどのようなものかについて解説

前回は「外商投資組合企業とはどのようなものかについて解説」と題して、説明しましたがいかがだったでしょうか。


今回は引き続き、外商投資産業指導目録について深掘りして解説させていただきたいと思います。


「外商投資産業指導目録」とは、外資プロジェクト(※1)を、以下の3種に分類できます。


(※1)「プロジェクト」とは中国語の「項目」の日本語訳ですが、日本企業が現地法人を新規に設立して事業を行う場合、 「会社」「法人」などとほぼ同義語と解釈しても問題ありません。


1.奨励類


2.制限類


3.禁止類


それぞれの認可基準を明確に規定したガイドラインで、目録に定めのないプロジェクトは許可類に該当します。


「外商投資産業指導目録」(以下「目録」と称す)は、1994年に初めて発表されてから、その時々の中国の産業政策を反映させるために1997年から修正が重ねられ、現在有効なものは2017年6 月28日改正・2017年7月28日施行の第七次修正版です。


2015年の第六次修正版と比較すると、2017年の第七次修正版は、外商投資制限性措置がより一層減少しまし、保留されたのは63項目(制限類35項目、禁止類28項目)で、2015年版の「目録」における制限性措置93項目(即ち、奨励類で持分比率について要求があり、または高級管理者について要求のある項目合計19項目、制限類38項目、禁止類36項目)に比べ30項目減少しており、全体的に外資規制の緩和傾向を見てとることができます。


なお、関係政府機関によれば、第七次修正版の改 正に係る基本方針は以下のとおりとされています。


また今回の改正周期はより短く、開放する分野はより広範にわたっており、サービス業、製造業および 採鉱業の開放水準をより一層引き上げることが可能となっています。




今回の「目録」改正の主たる特徴と変化は、下記の通り


(1)積極的、主動的に開放を拡大するサービス業については道路旅客運送、外国船の検数、資金信用調査および格付けサービス、会計 および監査、大型農産品卸売市場、総合水利中枢拠点等の分野の外資参入許可制限を重点的に取り消し、製造業については軌道交通設備、自動車電子、新エネルギー自動車の電池、オートバイ、食用油脂、とうもろこしの深加工、燃料アルコール等の分野の外資参入許可制限を重点的に取り消し、採鉱業については非在来型オイル・ガス、貴金属、リチウム鉱等の分野の外資参入許可制限を重点的に取り消しました。


(2)外商投資参入許可ネガティブ・リストを打ち出した 「目録」の構造を調整・最適化し、従前の「目録」において持分比率にかかる要求があった一部の奨励類の項目、制限類及び禁止類を整理再編し、全国の範囲内において実施する外商投資参入許可 ネガティブ・リストを打ち出し、外商投資に対し参入許可前国民待遇にネガティブ・リストを加えた管理 モデルを実行する基本的根拠としました。


ネガティブ・リスト以外の分野については、原則として、外資参 入許可についての制限性措置を実行してはならないこととなりました。


外商投資企業の設立および変更 にかかる審査認可の範囲がより一層縮小され、ネガティブ・リスト以外の項目については、いずれも備案管理に組み入れられました。


(3)内資と外資について一致する制限性措置を削除した 外商投資参入許可ネガティブ・リストモデルの特徴にしたがい、内資と外資について一致する制限 性措置を列記しないこととしました。


例えば、大型テーマパークの建設および経営について、内資と外資はいずれも必ずプロジェクト審査承認手続を履行しなければならず、ゴルフ場および別荘について、内資と外資はいずれも新規建設することが禁止され、賭博業および風俗業について、内資と外資はいずれも投資することが禁止されています。


「目録」から削除された後は、いずれも内資・外資一致の原 則にしたがい管理されます。


(4)奨励類政策の全体的な安定を保つ先進的製造、高度新規技術、省エネルギー・環境保護、現代的サービス業等の分野への外資の投 入を継続して奨励し、資本導入・技術導入・知力導入の結合を促進し、産業構造調整の最適化・アッ プグレードを推進します。


次に具体的な分類は「目録」に譲ることにして、ここでは各分類の特徴についてご説明します。

① 奨励類とは、中国が外資導入を奨励するプロジェクトで、国の関連法規・行政法規により優遇が 享受できます。


日系企業にとって最も影響の大きい優遇は、「免税できない輸入商品目録」に該当しない自家用設備の輸入時に関税が免税になる点です(※2)。


(※2) 「輸入設備の租税政策を調整することに関する通知」(国発[1997]37 号、1997 年 12 月 29 日公布、1998 年 1 月 1 日 施行)第 1 条


2008年末までは、プロジェクトが奨励類に認定されると、(ア)自己使用設備の輸入関税および輸入環節増値税の徴収免除、(イ)国産設備の調達税(増値税)の還付(※3)という優遇措置を受けることが可能でしたが、2009年1月1日に「増値税暫定施行条例」と同「実施細則」が施行されたことにより(※4)(増 値税改革)、(ア)(イ)の増値税の優遇措置は廃止されました((ア)の関税の徴収免除は残っていま す)。


(※3) 「外国投資家投資プロジェクト国産設備調達税還付管理試行弁法」(国家税務総局、国家発展改革委員会 国税 発[2006]111 号、2006 年 7 月 24 日発布、同年 7 月 1 日施行。この弁法は、2009 年 1 月 1 日に財税[2008]176 号によ り廃止されています)第 4 条第 1 項。


(※4) 「増値税暫定施行条例実施細則」は、さらに、2011 年 10 月 28 日財政部令第 65 号により改正・発布、同年 11 月 1 日施行。


もっとも、新規に購入する設備にかかる増値税を、売上増値税から控除でき、控除しきれない仕入税額は翌期以降に繰り越して仕入税額控除ができることとされました。


また奨励類の中には、外資比率に上限が課されている業種もあります。


許可類とは、以下の通りとなっております。

1.奨励類に分類されず、かつ後述の②制限類にも③禁止類にも分類されていないすべてのプロジェクトが該当します(許可類のリストは、実際には存在しません)。


2.制限類とは、中国が外資導入を直接管理する業種で、中国市場においてすでに陳腐化したプロジェクトで国内需要も満たされているため政府として積極的に外資導入する必要がないもの、または、中央政府が計画統制している重点技術・実験的に導入する技術で、希少・貴重な資源にかかわる技 術などが含まれます。


3.禁止類とは、中国が外資導入を禁止しているプロジェクトです。


外商投資産業指導目録について深掘りして解説させていただきましたが、いかがだったでしょうか。


次回は日中合弁で中国に現地法人を設立する場合、どのよう点に注意して合弁交渉を進めなければならないのか解説させていただきたいと思います。

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