第16話 そもそも合弁企業とはどのようなものかについて解説
前回は「中国で現地法人を設立するなら、考える組織形態」と題して、どのような形態で進出していくのかイメージしていただけたでしょうか?外国企業も諸条件があるものの中国は手続きさえ踏めば進出にウエルカムな国です。
今回は引き続きお問い合わせに多かった合弁企業を接するときに生まれる疑問についてお答えさせていただきます。
そもそも合弁企業とは、外国側の合弁当事者(外国の会社、企業その他経済組織または個人)と中国側の合弁当事者(中国の会社、企業その他経済組織(※1))が資本金を共同出資して設立した中国企業で、「中外合資経営企業法」と「中外合資経営企業法実施条例」に基づいて設立されます。
(※1) すなわち、一部地域、自由貿易試験区を除き、原則として、中国国籍個人を出資者とした合弁企業の設立はできないことになります。合作企業も同様です。
合弁企業は、出資者に対して利益享受と危険負担を出資比率に応じて求めるシステムのことを指し、利益享受に関しては、出資比率を参照しつつ、協議によって董事会構成比率を決定し(※2)、合弁各当事者の出資比率に応じて配当を行うことが求められています(※3)。 また、合弁企業は有限責任会社ですので、出資者は自己が引き受けた出資額を限度として会社に 対し責任を負います(※4)。
(※2) 「中外合弁企業法実施条例」第 31 条 1 項後段
(※3) 「中外合弁企業法実施条例」第 76 条第 3 項
(※4) 「会社法」第 3 条
なお、外国投資者の出資比率は通常25%を下回ることができないと従来は規定されていましたが、 「外商投資企業の審査認可・登記・外貨および税収管理に関する問題についての通知」(外経貿法発 [2002]575号、2002年12月30日公布、2003年1月1日施行)により、外国投資者の出資比率が25%未満 でも企業の設立が認可されることになりました。
ただし25%未満の場合には、外商投資企業としての 優遇の多くを享受できなくなりますので、注意が必要です(※5)。
(※5) 営業許可証に「外資比率 25%未満」という文言が注記されます。
メリット
投資負担を軽減できる(また、中国側パートナーが生産施設・設備等を提供する場合、直ちにビジ ネスを開始することが可能となる)
中国側パートナーの労務・人事ノウハウや仕入
販売ネットワークを活用できる
合弁企業にしか認められていない特定業種への進出が可能である(詳しくは「外商投資企業産業 指導目録」の項を参照してください)
デメリット
意思決定の際に、パートナー間の意見調整に時間がかかり、迅速な対応ができない恐れがある (特に撤退の際に意見が分かれた場合、合弁契約に自社に有利な撤退に関するルールを定めて おかなければ、撤退が困難となる場合もある)
対策
パートナーの選定の労力を厭わない(※6)
合弁契約書や合弁企業定款の作成を疎かにしない(※7)
(※6) 中国人律師に依頼することで工商資料を入手できます。
(※7) 近時は合弁契約、定款のいずれにおいても定型的なひな型を用いて安価に済ませる例がありますが、企業ごとに個性・特質が異なるため、安易にひな型を用いることは適切ではありません。
ちなみに律師とは弁護士のことになります。
雛形をそのまま使うことの危険性
たとえば、撤退時の条項を中心として本来定めておかなければならない条項が抜け落ちてしまっているなど、後になって問題が発生するパターンが散見されます。
定款や合弁契約は企業の根幹に関わる重要なもので、軽視することはできません。会社の骨組みを作る作業です ので、契約書・定款作成は、経験豊富な専門家のサポートを受けるなどして、慎重に検討することが重要です。
以上で合弁企業がどのようなものかについて解説させていただきました。
次回は合作企業についての共有させていただきます。
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