第12話 この世でもっとも幸せな者

歓喜の輪に入れない者

99パーセントの仲間に入れない者

ひとりだけ別室に呼ばれる者

真っ暗で寒いところから、光を見ている者

今度こそ、と思っても外れる者


あなたは静けさを手にした、

この世でもっとも幸せな者だ。


その悲しみは、あなたに福音をもたらす。


あなたは痛みと、寒さと、暗さを身をもって知っている。


なんて素晴らしい。


嘘じゃない。


だってほら、あなたには、全部が見えるでしょう?


最後尾にいるからこそ、

全員が見渡せるのよ。


上から下を眺めたいとあなたは言った。

這い上がっていって、光を浴びたいと、

がむしゃらに働いた。

だけど、あなたは最後尾にいる。


この冷たい暗闇に、

光を当て、

ここを温めるのが、

あなたの生涯の仕事なのだから。


上の方の、

光の渦にいたら、

こんな冷たさわからないんだよ。


あなたは偽善者にならずに済むのだ。

口先だけの冷たい者に

永遠にならないでいられる。


良かったね。


あなたは、世界でもっとも幸せな者だ。








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る