人形に生まれて
「あ、似合うじゃん! すごい可愛い!!」
それに対して璃音は、恥ずかしそうに、ただでさえ小さな体をさらに小さくしていた。
「ジロジロ見んじゃないわよ!。見世物じゃないっての!」
とは言うが、彼女は本来、持ち主が着せ替えを楽しんだりする為の人形の筈である。まったく説得力がなかった。
しかも、麗亜が璃音の為にと買った他の衣装もちらちらと見ているのだから、傍から見ればそれこそただの<ツンデレ>にしか思えない。
他の衣装の中には、アニメのキャラクターが着ていそうな感じのものもあった。実は、それも璃音が見ていたものだった。麗亜が声を掛けた時に見ていたワンピースの前に見ていたものだ。
「ぜんぶ璃音のだから好きに着たらいいよ」
そう言いながら、麗亜は、小さなハンガーに掛かったそれらの衣装を、ベッドの脇に付けたタオル掛けに掛けていった。璃音でも十分に届く高さだった。
「は! どうせ他に使う当てもないでしょうから使ってあげるわよ。感謝しなさい!」
吐き捨てるように言う璃音に、麗亜はくすくすと微笑みながら「ありがとう」と応えていた。
それから毎日、璃音は自ら衣装を着替えていた。恥ずかしいのか、なるべく麗亜が見ていない時を狙って着替えているようだった。
たまたま着替えている時に部屋に入ってしまった時には、
「ノックくらいしなさいよこのバカ!!」
と怒鳴られた。と言っても、ここは本来、麗亜の部屋であって、そこに居座ってるのは彼女の方なのだけれど。
それでも麗亜は「ごめんね」と詫びた。その時の璃音の様子が、着替えを見られたのが恥ずかしいというよりは、人形である自分の体を見られるのが恥ずかしいという風に見えたからだった。
麗亜は思った。
『自分が人形だっていうことがコンプレックスなのかな』
と。
だからそのことについてはなるべく触れないように気を付けた。璃音を人形として扱うのではなく、普通の一人の人間として扱うように心掛けた。
そこまで気遣ってもらっても、璃音の横柄な態度は大きくは変わらない。だけど当の麗亜がもう気にしていなかった。
『この子はこうなんだ』っていうのを受け入れているようだった。
『自分が人形として生まれてしまったことを辛いと感じているのなら、この程度の態度に出てしまうのも別に不思議なことじゃないかな』
と思っていたのだった。
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