生い立ち
自分が帰ってきたときに見せた
『この子は、私を必要としてるんだ』
それは、麗亜の父親の考え方だった。彼は、自分の娘として生まれてきた麗亜を、そういう形で受け入れた。自分の実の子だからというのではなく、『自分を必要としているから』という理由で。
ちなみに、麗亜の母親は日系アメリカ人であり、祖父母は、第二次大戦前にアメリカに移住していろいろと苦労はあったもののアメリカ人として社会に溶け込み生きてきた。そうして生まれたのが麗亜の母、シオリ・ローガン・アサガミ・冴島だった。ミドルネームはそれぞれ、シオリの母方の姓、父方の姓なので長くなってしまっている。
また、シオリは、自分のルーツである日本の文化、特にアニメや漫画の文化に憧れてたびたび日本を訪れ、そこで麗亜の父、
麗亜が、家に一人きりにさせられることがなかったのは、シオリの考え方でもある。アメリカでは、幼い子供だけで留守番させるだけでも虐待として逮捕されることがあるというのもあるからだ。それが、父親である功臣の考えとも一致し、両親はどこに出掛けるにも麗亜を連れていった。
その一方で、両親で考えが一致しなかった部分もある。アメリカでは赤ん坊の頃から子供には個室が与えられ、一人で寝るのも珍しくない。そうやって自立心を養うという発想らしいが、功臣はそれに対しては懐疑的だった。そのようにして自立心を養われて自我を確立させている筈のアメリカの犯罪発生率の高さに疑問を抱いていたからだった。
それは自立を促しているのではなく、ただ承認欲求を拗らせ行き過ぎた個人主義を生む原因になっているのではないかと彼は考えた。だから麗亜に個室を与え一人で寝かせようと提案するシオリに対し、日本の住宅事情を逆手にとって、『今の僕の財力では個室を与えられるような住宅を確保するのは無理』という形で、親子三人が並んで寝る、いわゆる<川の字>というあり方を認めさせた。
そして、夜泣きをすれば自分が飛び起きて麗亜を膝に抱きあやした。そのやり方を『甘やかしてるのでは?』と心配したシオリも、今の麗亜の姿を見てそれが間違いではなかったと認めてくれている。
そんな両親の下で育ったからこそ、麗亜は璃音をすんなりと受け入れたということだった。
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