第4話


 次の日の朝。

 私が朝の開店準備のために店の外を掃除していると、馬車がやってきた。

 ……領主様の馬車だ。

 

 バルーズ公爵。それが私たちの領内をまとめている領主様だ。

 先日、新しい領主様に引き継がれたとかで、何でも私たちとそう変わらない年齢の公爵様だったはずだ。


 その公爵様は女嫌いという話でまだ婚約者もいない。そういうこともあって、姉さんたちはその隣を狙っているというわけだ。

 でも、公爵様はいないみたい。たぶん、騎士がポーションの回収だけに来たのだろう。


「ラフィーナの薬屋はここで間違いないか?」


 馬車から降りてきた騎士がそう問いかけてきた。

 私たちの薬屋はラフィーナの薬屋だ。祖父母が店を建てたときにその名前にしたんだ。


「はい。こちらで間違いありません。……もしかして、ポーションの納品に関してでしょうか?」

「ああ。急で申し訳ないが、ポーションの納品をお願いしていた。早速回収していきたいんだが」

「分かりました。こちらです」


 私は騎士を隣接した建物へと案内する。

 そこは倉庫として使っている場所だ。

 私たちの作製したポーションが三区画になって別れていた。

 箱にはそれぞれ作製した名前が書かれていた。


 ララ、リフィア、ルーネ。その三人分のポーションを確認して騎士たちが馬車へと運び込んでいく。


「感謝する。今後もまた依頼をするかもしれないが、その時は頼む」

「承知しました。お怪我のないよう、お気をつけください」

「ああ、ありがとう」


 騎士がにこりと微笑み、それから馬車とともに去っていった。

 私は再び庭の掃除を始めていく。

 ……あー、またすぐに依頼こないかなぁ?

 

 依頼が来たらまたたくさんポーション作れるんだけどなぁ。

 そんなことを思いながら開店準備をしていると、ララとリフィアが起きてきた。


「ルーネ、ポーションの納品は終わったの?」

「はい、終わりましたよ」


 私がそう言うと、二人は笑顔を浮かべる。


「今回の出来はかなりのものだったわ! もしかしたら公爵様が褒めてくれるかもしれないわね!」

「ララ、何を言っているの? 言っておくけど、あたしのほうが出来が良かったと思うけど?」


 ララとリフィアが睨みあって自分のポーションの自慢をしている。

 私はそんな二人を横目にしながら、店にポーションを並べていく。


 二人とも野心が凄いなぁ、と思った。私は別に貴族お抱えの薬師なんて興味なかった。

 だって、そうなると色々大変だろうしね。


 私はそこでふと思った。

 ……でも、ララとリフィアが一緒に貴族に気に入られたらどうなるんだろう?

 その時は、私がこの家を一人で継ぐことになるんだよね?


 その光景を想像し、私は思わず笑みを浮かべてしまった。

 だって、そうなったら自由にポーション作りができる!

 何より、裏の畑で薬草の製作だって自由にできる!

 

 ……二人のこと、公爵様も気に入ってくれないかな?

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