第49話 王国

リーンワース王国王城


「北の帝国から問い合わせが来ました」


 王城の一室で将軍はリーンワース王にそう報告した。

ガイアベザル帝国からの問い合わせは以下の内容だった。


『貴国に親善航行・・・・中の陸上戦艦ニムルドが行方不明になっている。

ニムルドには第五皇子アギト殿下が座乗されているのだが、何か情報を掴んでいないか?』


「親善航行だと? 領土侵犯を良くもまあぬけぬけと言ったものだ」


 リーンワース王が呆れる。


「しかし、まさか第五皇子が乗艦していたとは……、これでは北の帝国も引くに引けないでしょうな」


 将軍の懸念にリーンワース王も頷く。


「で、手筈通り回答したのであろうな?」


「はっ。『そのような艦は来ておらぬ』と回答しておきました」


「して、北の帝国の反応は?」


 リーンワース王が興味津々という面持ちで問う。


「そのまま引き下がったとのことです」


 リーンワース王は思案する。

引き下がったということは、今のところ一方的に戦端を開くつもりはないということか。

こちらとしては調査協力程度のことは要求されると思っていたのだが。

これは王国こちらにニムルドを破壊出来る戦力があると見ての躊躇か。

いや、まだ皇帝に報告が行っていないと見るべきだな。

あの皇帝ならバカ息子が王国で死んだとなれば口実が出来たと喜んで攻めて来るはずだ。


「となると、次の動きは皇帝決済後だな。

東と西、中央回廊の砦に通達だ。

北の帝国の動きに注視せよ!」


 リーンワース王は北の帝国の動きをほぼ正確に把握していた。

そして北の帝国が動き出すことを懸念して警戒を命令した。


「国境の見張りを厳とせよ。それとクランドなる男を見つけ出し協力を要請するのだ!

北の帝国がニムルドの調査協力を要請して来たのならば、協力をするふりをして時間を稼ぐのだ」


 リーンワース王はミンストル子爵からクランドの情報を得ていた。

彼がガイア帝国の末裔であれば、ニムルドを破壊出来る兵器を持っている可能性がある。

リーンワース王国はクランドの取り込みに舵を切ることになった。

だが、その行方は全く掴むことが出来ていなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る