春愁

ひろり

 女の子は「わぁっ」と声を上げた。


 トンネルを抜けると車窓に広がる春の日差しと、むせかえるような満開の桜。


「さくらよ…キレイねぇ」


 母親は優しく語りかける。


「しぁくぅら!」


 女の子はバンザイして母親に笑顔を見せている。


 母親は女の子を抱き寄せ、その胸にしっかりと抱きしめた。


「本当に…キレイねぇ…」


 つぶやく声が振るえている。


 小さな手が母親の頬を伝う涙をぬぐった。

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