「交響曲 第4番」 シベリウス

<タイトル>


交響曲 第4番 イ短調 作品63


<作曲者>


ジャン・シベリウス


<おすすめCD>


ロリン・マゼール(指揮)

ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団


https://open.spotify.com/intl-ja/album/03YzoqlmNhMSkqQjOAapwB?si=BeR385MnTq-_HARhtVk0Jw


ヘルベルト・ブロムシュテット(指揮)

フィンランド放送交響楽団


https://www.youtube.com/watch?v=HjeF99_ocfM&t=1122s


<解説>


 シベリウスはフィンランドの国民的作曲家ですが、このエッセイで紹介させてもらうのは初めてとなります。


 交響曲第4番は1911年に完成されましたが、この年にはマーラーが亡くなっているので、個人的には複雑な気持ちがあります。


 その3年ほど前から、シベリウスは体調が悪化し、のどに腫瘍しゅようがあると診断を受けています。


 はじめにヘルシンキ、次はベルリンまでおもむき、それを摘出てきしゅつすることに成功はしたものの、シベリウスの心には死への恐怖が芽生めばえ、その中でこの作品は作られました。


 作曲者自身がみずから「心理的交響曲」と呼んだように、この曲にはシベリウスの精神的な苦悩・懊悩おうのう吐露とろが見受けられます。


 音楽はまるでうめごえのように始まり、すぐに現れるチェロのモノローグは、まるでシベリウスが苦しみを吐き出しているかのようです。


 しかしながら、ときおり顔を出す美しいメロディがそれらとのコントラストを成すのか、天国的な甘美かんびさを持っています。


 その晦渋かいじゅうさゆえ、初演当初は問題作としてあつかわれましたが、イギリスの音楽研究家であるセシル・グレイによれば、「無駄な音符が一つたりとも存在しない」とのことです。


 わたしの場合、精神的に落ちているときこの曲を聴くと、不思議なことに気分が楽になってくるのです。


 心理学では効果が認めれているそうですが、落ちこんでいるときに暗い音楽をかけると、むしろ精神状態が回復する場合があるということです。


 伝家の宝刀のひとつとして、大切に取っている一曲ですね。


 マーラーはかつて、後輩作曲家のシベリウスとの対談の中で、「交響曲は世界のようでなければならないのだ」と語っていますが、シンフォニストとしての先輩の言葉に、本人は実際、どう思っていたのか――そこが気になりますね。


 「こいつ、うぜぇ……」とかだったら嫌ですが(汗)


 おすすめは、故ロリン・マゼールのあぶらが乗っていたときに、ウィーン・フィルと録音した全集からのものです。


 過不足かぶそくがなく、しかしまされていて、シベリウスの交響曲入門としてはかっこうのセットだと思います。


 廉価れんかボックスが出ているので、この際、シベリウスの交響曲全7曲をまとめて聴いてみるのも、アリかもしれません。


 映像で見たいという方にはブロムシュテットさんのライブをおすすめしておきます。


 巨匠の棒が冴えわたった名演となっております。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る