2.アスパラガス : 変わらぬ

 山寄りに位置していた『自遊』より徒歩十分。

 住宅や店が乱立している区画に入り、人通りも増え始めた。


「…昔と違ってこの姿でも迫害されぬのだな」


 視線を集めているのは変わらないがと、ひびなは目を細めて密かに威嚇しながら歩みを続けた。


「ひびなさんのその姿は…美人なやまんばですから、皆さんの視線を集めるんですよ。惚れ惚れする、と言った方が適切でしょうか」

「…美人、と、今では形容されるのか」


 隣で歩く舞子の発言に、時間、時代の違いを知り、感慨深くなる。


 紅の癖のある長髪。切れ目。漆黒の瞳。男にも負けないくらいの長身の女の姿。


(昔は化け物と呼ばれていたがな。鬼でも、この姿でも)



「しかし。変わらぬ」


 すんと、軽く空気を吸う。

 要らぬ物質は増えたやも知れぬが。


「そうですか」

「ああ」


 久々の人里は、当たり前だが、人が多く在る。

 だからこその、雑多な匂い。



「元の姿に戻ったとて、あまり変化はないのだろうな」

「そうですね」


 相も変わらない気の抜ける笑顔に、入れていた力を解き、舞子の隣で歩みを進めた。













アスパラガス:花言葉 変わらない



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