音声ログ3 TV局スタッフ

2話連続投稿の2話目です。ご注意ください。



ようこそエージェント。


このデータは、第645惑星での戦いに派遣された、スターTV局スタッフの音声ログになります。再生しますか?


はい


それでは再生を開始します。



『もう最悪よ!本当に最前線に行くの!?』


『ヘレナ不味いって、音声は入ってるんだから!』


『知ったこっちゃないわよ!あのバカプロデューサーめ!死んだら化けて出てやるんだから!』


『まさか本当に企画を通しちゃうとはねえ…』


『ああ私の馬鹿!視聴率100%の番組だからって、あの時頷くんじゃなかった!あんたもそうでしょマック?』


『いんや、スタッフは皆、特務に会えるならって志願した人ばかりだよ?』


『あんたTV局のスタッフなのに、本物の特務が実在するって思ってたの!?』


『いやあ、絶対いるね。今回の撮影で、特務の活躍している所を撮って、プロパガンダでも誇張でもない、本物の特務がいるって皆に知らしめないと』


『ああ…!あのプロデューサー!そう思っているリポーターを探しなさいよ!』



『地表に降りる前の、最後のミーティングを行います。現在645惑星は、我が軍が有利ですが、戦場では何が起きるか分かりません。決して我々の傍を離れない様にして下さい。予定の方になりますが、この後すぐに基地に揚陸艇で降下し、現地の特務大尉と合流。一時間ほどの取材の後、明朝に基地を特務大尉と発ち、前線での撮影を行ってもらう事になります。くどいようですが、絶対に私達から離れないでください。特務に付いて行こうなどと思わない様にして下さい。何か質問はありますか?どうぞ』


『初めに、取材へのご協力ありがとうございます中尉。それでなのですが…特務についてくなとは…そのう…戦地での皆さんもそうですが、特務の特集でもありまして…』


『仰りたいことはよく分かります。最初に申しておきますと、特務大尉が実在しないから困る、といった理由ではありません。我々が特務大尉の移動に付いていけないのです。訓練をしていない貴方方では、なおのことでしょう』


『はあ…ついていけない…』


『はい。物理的に不可能です』


『はあ…。ええっと、それと特務大尉は、我々の取材を許可してくれたとの事ですが、どのような理由からなのでしょうか?』


『あー…。それはなんと言うか…。特務大尉に取材の事をお伺いしたところ、まあ何とかなるだろうから、いいんじゃないかと言っておられてですね。それもあって軍も許可したというか…。まあ、そう言う事です』


『はあ…』


『他に質問は…無いようですね。ではこれから揚陸艇に向かいましょう』



『よしみんな気合入れろ!生放送だからしくじるなよ!』


『3,2,1』


『皆様こんにちわ。スターTVのヘレナです。我々は現在、揚陸艇に乗って第645惑星の地表に降り立ち、あの特務大尉と面談する事になっています。ご覧頂けるでしょうか?どんどんと地表に近づいています。あの基地で、特務大尉が我々を待っていてくれているのです』


『中尉変です!基地から航空機が多数!戦車もです!こりゃあ全力出撃だ!』


『なんだと!?』


『大変です!我々が降り立つ基地から、戦闘機や戦車が次々と出発しています!一体何が起こっているのでしょう!?』


『中尉!基地司令からです!』


『繋いでくれ!』


『すまん中尉。面談の準備がパアだ。タコ共が包囲していた市街地から出て来て、現在は平野の防衛線で戦闘中だ』


『はっ。今後の我々はどうなります?』


『それなんだが、特務が第三偵察小隊の観測所なら大丈夫だろうと言っていた。向こうにも連絡は入れてるし、そこならちゃんと撮れるだろう』


『分かりました。では我々は第三偵察小隊の観測所へ向かいます』


『うむ。取材班の方々、申し訳ない。特務は真っ先に飛び出してしまってね。まあ、戦場でも目立つから、誰が特務かと思う事はないはずだ。それでは私はこれで失礼する』


『大変です!我々はこのまま戦地に向かうようです!現地では一体何が待ち受けているのでしょうか!?』



『戦況は!?』


『ついに現場に到着しました!今どうなっているのでしょうか!?』


『中尉と取材班ですね!?特務が中央でタコをズタボロにしてます!あ、今敵の多脚戦車に飛び移りました!』


『ああ!?マック!あそこ撮って!中央の多脚戦車!人が!上に乗ってる!』


『夢みたいだ…』


『皆様ご覧になっているでしょうか!?こちらからでは詳細は見えませんが、特務大尉と思わしき人物が、敵の多脚戦車の上に乗っています!ああ!?今戦車が火を噴きました!』


『近くにいる味方の砲兵連隊による射撃が開始されます!音と振動に注意してください!』


『え!?でもあそこに特務が1人で!?』


『いつもの事です!気にしないで!それより始まりましたよ!』


『きゃああああ!』


『やべええ!』


『くそ!?耳が!』


『見、見てください!前線の一部には何も有りません!全て吹き飛びま!?え!?誰か走って!?信じられません!特務大尉はそのまま周囲のタコを倒しています!』


『リポーターさん。なんでも、特務は砲撃の着弾点が分かるみたいですよ』


『なによそれ!?』


『HQへ。こちら第三偵察小隊。特務の姿を確認した。いや、まて!特務が停止のハンドシグナルをしている!そちらで確認できるか!?』


『こちらHQ。こっちでも確認した。そちらで原因を確認できるか?』


『少しま、いやいた!"カブトムシ"だ!タコ共こんな所に持って来てたのか!HQ!市街地からカブトムシが出て来た!』


『皆様ご覧ください!まるで戦艦の様な戦車が、街から家屋を踏み潰して出てきました!あんなのどうするのよ!?』


『こちらHQ、了解。特務からカブトムシが出てきたら貰うと言われている。まあ見物といこう』


『ははは第三偵察隊了解。取材班の方々!絶好のシャッターチャンスですよ!』


『ああ!?マック撮ってる!?あれの足元!嘘でしょ足から登ってるわ!?』


『これだよ!やっぱり特務は居たんだ!』


『中に入っちゃった!?どうするの!?あ!?タコを攻撃し始めた!?』


『前も奪ってましたからね。気に入ったのかな?』


『すごい!どんどんタコが引き始めた!やっちゃえ特務!こほん、失礼しました』



『取材班の方々、特務が部隊再編の間、少しだけこちらに来てくれるそうです。ああ、言っている間に。あのヘリです』


『え!?プロデューサー!?どうしたらいいの!?』


『え!?いやどうしろって言われても!?』


『え!?そのまま落ちてきた!?』


『申し訳ない。一時間の約束だったのに、ほんの少しだけしか時間が取れそうにない。何か聞きたいことは?』


『と、特務大尉お疲れ様です!えーっと、その、えと、男の子のなりたいランキングの一位、特務大尉と、女の子の一位、特務のお嫁さん、おめでとうございます!』


『ありがとう。いや、だが男の子達には悪いが、大きくなる頃には平和になって、特務大尉という存在は必要なくなる。女の子達もだな。その頃には、俺は特務大尉では無いだろう。いい人を見つけるといい。特務大尉は期間限定なんだ。悪いな子供達よ』


『特務!部隊の再編が終わりました!』


『わかった今行く。それでは』


『は、はい!ありがとうございました!』


『そうとも、俺が子供達の未来を守って見せる。兵士になる必要なく、普通の男を愛していい未来を』


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る