ある吟遊詩人の歌

朽木桜斎

砂糖の城

 むかしむかしある国に、砂糖の大好きな王様がいました。


 王様はあんまり砂糖が好きなので、とうとう砂糖でお城を作ってしまいました。


 そうしてできたお城を、王様はいつもペロペロとなめながら、幸せに暮らしていたのです。


 ところが困ったのは国の民たちです。


 王様が国のお金をぜんぶ砂糖に変えてしまったものですから、彼らはろくに食べるものがありません。


 なのでそのへんになっている木の実や、あるいは草などをむしって空腹をしのいでいたのです。


 ときどきおなかがすくあまり、お城の塀や柱を盗む者が現れるのですが、王様からたちどころに捕らえられ、砂糖の漬物にされてしまいました。


 こんな生活がずっと続くものですから、この国はどんどん疲弊していったのです。


 するとあるとき、おそろしいことが起こりました。


 食べ物を奪われた獣や鳥や虫たちが怒り狂って、お城を襲いはじめたのです。


 砂糖のお城は獣にかじられ、鳥につつかれ、虫になめられ、ついにはひとかけらも残さずなくなってしまいました。


 お城を失った王様は、草ひとつ生えていない地面に転がり落ちました。


 そして待ちかまえていた国の民たちに、袋叩きにされましたとさ。


 おしまい。

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