輪廻

紫ぐれ 麻衣

第1話~1

自分の過去に記憶の塗り替えが起きていた等疑いもしなかった中学生の頃、友達とUFOの話になり、私は得意げに思い出したことをしゃべった。


「私。。異次元に行った事があるの。。」



まだ、幼稚園に行っていた頃の話。。

私の生家は今で言うJR。当時国鉄だった西宮駅から歩いて大人の足で10分ほどだったか?

でもよく利用したのはそれより近い、阪神電鉄の西宮東口という駅だった。。

梅田から言うと、今津(宝塚線と別れる駅)の次の駅で

小さな駅であるものの駅向こうには小さな商店街があった。

私はその商店街の中の文房具屋さんで売っている消しゴムがお気に入りで、まだ小学校にもあがっていないけれど、甘い香りのする消しゴムが欲しくてたまらなかった。一人で大きな踏切を超えて、ブラブラ歩き、消しゴムを買うでもなく、その文房具屋で見本になっている消しゴムの匂いを嗅ぐためその日も出かけた。ふと、一度だけ母と近道だからと大きな踏切ではなく、今津との間のガードをくぐって帰ってきたことがあるのを思い出した。母はその道は人気が無いから一人で歩いてはダメと言っていた事も思い出したが、小さな冒険家気取りの私は無性にいつもと違うガードをくぐって帰りたくなったのだ。。


商店街からそれると急に人気が無くなる。ガードは5段くらい下に下がり大人では天井に頭が付いてしまう程低く。向こう側では5段ほほどあがって地上と言う作りで

こちらからは向こう側が全く見えない。。


私は一人でそのガードをくぐった。。(否一人だったと思い込んでいた。。)


向こう側の地上に出た途端、自分が宙に浮いているような気になった。

足元には白い靄のようなものがまとわり付いていて、地面が無い。。後ろを振り返ると、元来たガードは消えており、怖くなって私は泣き出した。。

すると白髪の老母が現れ、私の手を引いて歩くでもなく連れて行かれた。。気づくと元来た商店街側のガードを出たところで、ちょっと先には商店街を歩く人影が見えた。。私は一目散に走り、その商店街に紛れて踏切の方から帰った。


当時、私は幼稚園の友達なんかに異次元ではなく、「四次元へ行った。」と話していた。おそらく、ウルトラマン辺りのお話の中で四次元という言葉を知っていたからかもしれない。いつの間にか、そこから自力で帰ってきたという武勇伝にして泣いていた事は内緒にして得意げに話した。。母は私がその話をすると怒りだした。その話は人に言ってはダメだと言っていた。。


そう、あの日、銭湯通いだった我が家には「ほくさんバスオール」というカプセルのお風呂が土間に出来て、そこがお風呂だったが、あの異次元から帰った時、母は私のパンツまで着かえさせ、嫌がる私を風呂に入れた。そしてこの事は誰にも言ってはいけない。と言っていた。

けれど、私は言いたくて溜らず、少しお話を変えた私の武勇伝を友に語るのだった。

それは幼稚園の時も、小学校の時も、中学の時も、そして大人になった私であっても。。確かコルドンブルーの楽屋でUFOを信じるか?信じないか?等の話になると必ず、私は異次元へ行った時の事を口にしていた。。しかし、この話、歳を重ねるごとに話題に出る事も減っていったような気がする。。

そして記憶の塗り替えだった事に気づく事も無く。。その塗り替えは50歳過ぎるまで続いていたのだ。

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