さすがは化け化けだな
「百鬼夜行花札だからな」
と倫太郎が言うので、
「百鬼夜行って見たら死ぬんでしたっけ?」
と確認してみた。
「花札やってて死なないんですかね?」
「今のところ死んでないから大丈夫だろう。
ちなみに百鬼夜行を見たら、親類縁者までみな死ぬという説もある」
「そうなんですか? 大変ですね。
親戚まで皆殺しとかって。
すごい人数ですよね。
みんなで手分けするんですかね?」
「……お前、なに妖怪サイドに立って物言ってんだ」
さすがは化け化けだな、と言われてしまう。
そのとき、冨樫が一枚の札を手に呟いた。
「あの、花札やって、花札が満足したら、ほんとうに高尾さんたち、札から解放されるんですかね?」
「そう信じてやってはいるんだが……」
と呟く倫太郎を見ながら、冨樫が言う。
「……他の妖怪も解放されませんかね?」
全員が沈黙した。
そのとき、外が白白と明るくなってきた。
あーーーーーー
と何処からか声がした。
満足したあとに発せられるような感じの声だ。
花札が震え、札からあやかしたちが立ちのぼり始める。
「あっ、壱花札がっ」
と壱花は、倫太郎の前にある、例の謎の壱花札を見た。
壱花札からは、マヌケた顔の謎の生き物が浮かび上がっている。
ちょっと離れた点々お目目で壱花を見た。
「猫ちゃんっ」
「猫じゃねえだろっ」
と言いながら、立ち上がった倫太郎が片手で壱花の両目を塞いだ。
「目を閉じてろ、ジジイどもっ」
と今起きてこなくてもいいのに目を覚ました老人たちに倫太郎が命じる。
さすがは会長たち、普段はぼんやりしているように見えても、怪しい気配には敏感なようで、空気が鳴動する気配にサッと目を覚ましたようだった。
倫太郎の手の向こうで、白い光が広がっていくのを壱花は感じていた。
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