占い師or預言者

誠 育

第1話突然の解雇

   占い師or預言者


「部長、申し訳ありませんでした」

「うん、いいよ。そういう時もあるさ、今日はもう家に帰って、ゆっくり休みなさい」

 その言葉に甘えて、家に帰り苦いビールを浴びるように飲んだ。

 大学卒業後、日本を支えるのは鉄鋼だと思い、丸の内の鉄鋼メーカーに入社した。配属されたのは営業だった。営業という仕事が自分に向いてるかどうかは分からなかったが、精いっぱいするだけとこの十数年頑張って来たが、少し慣れて来たせいか雑になってしまったのかもしれない。

 次の月曜日に出社すると、すぐに部長に呼び止められた。

「柴田君、ちょっと応接室まで来てくれないか?」

 何か嫌なものを感じたが、素直に部長の後に続いた。

 部長からの話を待つ事に我慢できず、応接室に入るや否やこちらから、部長に聞いていた。

「野村部長、何かありましたか?」

「うん、実は君が帰った後、常務から呼ばれて話をしたんだけどね」

(ゴクリ!)

 思わず息を飲んだ。

「君が、お怒らせてしまったというお得意様から、大層お怒りの電話があったそうなんだ。それで、前担当の課長がお伺いして取りなそうとしたらしんだが、それでもお怒りは収まらず、取引停止の話まで出てしまったらしいんだ。それでも何とかそれだけはと取り成して、漸く取引停止は免れたという話だ」

「それは良かった」

 心からそう思っていた。そして、次の言葉を待っていた。

「取引停止は何とか免れたが、先方から担当者を変えてくれという話になってね」

 担当者を変えるという事は、屹度左遷だろう。何処に飛ばされるんだろう?そんな思いが頭を駆け巡っていた。

「課長の報告の後、臨時の取締役会が開かれて、君への処分が決まったんだ。」

 その言葉を聞いて、やっぱり左遷か?と思っていた。

「そこで、決まった事なんだが、私も呼ばれて意見を聞かれたんだ。勿論、市川君は優秀で必要な人材ですと言ったよ」

「あっ、ありがとうございます」

「ただ、今迄の君の勤務態度や、実績を考えてね、残念だが辞めて頂くことになったんだよ」

「くっ首ですか?」

「残念だが」

 その言葉を聞いて、自分の人生設計が脆くも崩れていくのを感じていた。


数日の間、ショックから立ち直れず、魂の抜け殻同然の生活をしていた。しかし、遊んでいるわけにもいかず、次を探そうと幾つもの会社の面接を受けていた。

 入社の面接時に、どうして前の会社を辞めたのかを訊かれるたびに、上手く誤魔化そうとすればするほど、ボロが出て入社にこぎ次げることが出来なかった。


 新聞を読む時は、経済中心から、今迄読んだ事も無かった、人材募集の欄が中心になっていた。

 何かないかなと、何度も何度も見返していたが、これはというものは中々見つから無かった。


 そんなある日、何だあこれは?というものの募集記事があった。そこには、

(占い師募集、一日研修、翌日から収入可能)

(翌日から収入可能)の文字にへええっと思いながら、営業職は?と他の場所に目を移していた。

 新聞の端から端まで読んではいたが、就職先が見つからない日が続いていた。

 そんなある日、また占い師募集の記事が目に入った。

(懇切丁寧指導、翌日から高収入可能)

 翌日から高収入可能に惹かれ、決まる迄の間やってみるかと、話を訊いてみることにした。








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